Mission:Impossible
「あー、カカシ先生、またそんなことして!安静にしてないと駄目じゃない」
フルーツを持って病室を訪れたサクラは、ベッドで腹筋運動をするカカシを見て目くじらを立てる。
うちは家の血脈ではないカカシが写輪眼を使用するのは、体に多大な負担を掛けるのだ。
医療術を学ぶようになったサクラはその危険を十分に知っているだけに、よけいに心配になってしまう。
「ほら、ちゃんと横になって・・・」
フルーツの籠をサイドテーブルに置いたサクラはカカシの肩を押さえようとしたが、逆に手首を掴まれる。
「サクラ、今日も海に行ったの?」
「え、ええ」
真剣な表情で問われたサクラは、すぐ間近にあるカカシの瞳を見つめ返した。
「誰かに何かされなかった!?」
「誰かって・・・・・プライベートビーチなんだから、ツキ親子と私達しかいないわよ」
「だから心配なんじゃないかーー!」首を傾げるサクラは、カカシが頭を抱えて叫んだ意味をまるで分かっていない。
ヒカルはまだ子供だから除外するとして、ナルトもリーもサクラに恋する少年達だ。
さらにミチルは初対面の時からサクラに目を付けていた。
お腹を出した衣装のサクラがうろつくだけではらはらして目が離せなかったというのに、南の島で海でビキニでバカンスとなると、心も体も開放的になり何があってもおかしくない状況だ。
「あー、心配だ、心配だーー!」
「・・・・変な先生。心配してるのはこっちよ」
呆れて呟いたサクラは、籠に入っていた桃を病室の隅にある流しの水で洗い、カカシが食べやすいように剥き始める。
見たところカカシは元気そうで、二週間もしないで退院できるかもしれなかった。
「本当に何か変わったことはないの?困ったこととか」
「別にないわよ。今日はいつもビーチで泳いでバーベキューをして・・・・、あっ」
突然大きな声を出したサクラは、顔を真っ赤にして俯いた。
口に運んでいた桃の切れ端を器に落としたカカシは、尋常ではないサクラの様子に、慌てて身を乗り出す。
「何!!何かあったの!」
「な、な、何でもないです」
「何でもないって感じじゃないでしょう!やっぱりビーチで何かあったんだな。誰かに悪戯されたなら先生が殺しに行くから、早く言って」
「ち、違います、そんなんじゃ・・・」
顔を耳まで赤くするサクラは言葉が続かず、ベッドの傍らに置かれたパイプ椅子から立ち上がった。
「今日はもう帰ります。また明日来るから」
「えっ、ちょっとサクラ!」
追いすがろうとしたカカシだが、足腰にまだ力が入らず、床に這い蹲るのが精一杯だ。
その間にサクラは駆け足で扉の向こうに消えてしまい、カカシの中に悶々としたわだかまりだけが残ってしまった。「サクラァァーーー!」
それから暫くシクシクと泣いていたカカシだったが、助けは意外に早くやって来た。
扉が開き、顔を上げると金髪の少年が驚いた表情でカカシを見つめている。
「・・・・何やってんの、カカシ先生」
「起こして頂戴」
ナルトの話によると、その事件は誰のせいでもなかったらしい。
しいて言うならば、海の波が犯人だろうか。
「サクラちゃんのビキニの上が外れて、海に流されちゃったんだよねー。サクラちゃん慌てちゃって危うく溺れるところだったんだよ」
「・・・・・・・」
ナルトから事情を聞き終えたカカシは、俯いたまま黙り込んでいる。
心なし、顔が青ざめているようだ。
「カカシ先生?」
「・・・・見たのか」
「えっ?」
「水着を無くしたあとのサクラの体」
「ああ、もうばっちり。一番近くにいたから溺れかけたサクラちゃんに抱きつかれたりしたし。震えちゃって可愛かったよー。サクラちゃんの体柔らかくて・・・」
「このラッキースケベーーー!!!!」
ナルトの言葉を遮って絶叫したカカシはそのままベッドに泣き伏した。
一緒に海に行っていたならば、ナルトの幸運は絶対に彼のものだったはずだ。「俺だってまだ見てないのに!お前、そういうアクシデントはちゃんとデジカメで撮ってこいって!!」
「海の中なんだから無理だっての」
フルーツの籠から出したバナナを勝手に食べていたナルトは、思い出したようにポケットからある物を取り出した。
「カカシ先生にはちゃんとお土産持ってきたからさ。泣きやんでよ」
「何だよ!もうフルーツの盛り合わせならサクラが持ってきたからいらないっての」
「先生が喜ぶものだよ、ほら」
ナルトへと目を向けたカカシは、その手にある物を見るなり瞳から涙が引いていった。
ごくりと唾を飲み込み、震える指先でそれを摘み上げる。
「こ、これは・・・・」
「海に流されたサクラちゃんのビキニ」
それは確かにナルトが浜辺で撮った写真でサクラが身につけていたのと同じデザインと色の水着だ。
騒動が収まってサクラがタオルを体に巻き付けたあとに発見したのか、それともサクラが騒いでいる途中で見つけて隠したのか、またはサクラの水着の紐を緩めた犯人がナルトだったのか。
いろいろな可能性が頭を駆けめぐったが、にっこりと微笑むナルトから水着を受け取ってしまえばカカシも共犯だろうか。
天使のような笑顔の裏側を、初めて垣間見た気がしたカカシだった。
あとがき??
あれ、スレナル?うちのナルトはみんなこんな感じですよ。
映画のカカシ先生は格好良かったのに、台無しにしてすみません・・・・。(^_^;)
バカンスナルサクのラブラブ話を読みたいというリクもあったので、検討中。
スランプ中なため、新作を書くのに凄く時間がかかったというか、力を使ったんですが、そのわりに妙なSSになってしまった感じが・・・。
でも完成できて良かったです。