touch
「サクラ、暑いんだけど・・・」
「クーラー、強める?」
「いや、そういうことじゃなくてだな」
口籠もるイルカに構わず、サクラはイルカの背にべったりとくっついている。
床に新聞紙をひいて足の爪を切っていたイルカだが、のしかかるサクラの重みにどうも集中できない。
首に巻き付いている華奢な腕と頬にかかる彼女の髪、甘い香り。
それら全てがイルカの気を散らす要因だ。「あー、もう止め止め!」
イルカが爪切りを片手に立ち上がると、サクラはそのままころりと床に転がった。
「何で急に不機嫌なのー」
ふてくされるサクラを、イルカはじろりと睨め付ける。
「お前な、そんな下着みたいな恰好でふらふらと出歩くんじゃない」
「・・・キャミソールなんだけど」
「何でもいい!とにかく、何か上に羽織れ」イルカは新聞紙をまとめてごみ箱へと持っていくと、代わりに上着を持ってリビングに戻ってくる。
「ほら」
ばさりと頭からかぶせられ、サクラは頬を膨らませる。
「・・・暑い」
「暑くても、いいんだよ。それ着ないと家から追い出すからな」
強い口調で言われ、サクラは渋々それを身につけ始めた。サクラの身体には随分大きめなブルーのシャツ。
ぶつぶつと不平を口にしていたサクラは、袖口に手を通すなり、すぐに笑顔になる。
「イルカ先生の匂いがする〜」
嬉しそうに顔を綻ばせるサクラに、イルカは小さくため息をついた。
「サクラ、何でこのところうちに入り浸ってるんだ」
テーブルで向かい合わせに座りながら、イルカはさりげなく訊ねる。
イルカの視線の先、サクラは冷凍庫から出したアイスと必死に格闘している。
必要以上に固いそれはサクラのスプーンをなかなか受け入れてくれない。「んー。両親は父方の実家に帰ってるし、一人で部屋にいるとカカシ先生が来るから」
「カカシさん!?」
素っ頓狂な声をあげるイルカに、サクラはぱちくりと目を瞬かせる。
「うん、よく来るよ。夜とか」
「よ、よ、夜!!」
「そう。両親がいなくなってからは昼夜問わずって感じだけど」
サクラは目線をアイスへと戻すとスプーンでカップをカツカツと叩く。
「カカシ先生に身体触られるのはあんまり嬉しくないんだ。痛いし。そのたびにイルカ先生のこと思い出して、先生とならもっと楽しいんだろうなぁと思っちゃう」
呟いたあとに、ようやくアイスの破片がサクラのスプーンの上にのった。
すぐさま口に含むと、サクラはにっこりと微笑む。
「美味しいv」そのときになって、サクラはイルカの表情が固まっていることに気付いた。
「イルカ先生?」
「え、あ、ああ」
何やら慌てているイルカに、サクラは訝しげな顔つきになる。
「何?」
「え、えーと、サクラ、アイス俺の分もいるか?」
「一度に二つも食べられないわよ。明日また来るから、とっておいて」
サクラは呆れたように言うと、再び手元のアイスを削り取る作業に没頭し始めた。
夕方になるとサクラはいつものように荷物をまとめて玄関に向かう。
「ご両親はいつ戻ってくるんだ」
「一週間後くらい、かな」
サクラは壁にかかっていたカレンダーを見ながら答える。
「あ、これ返さないと」
借りたシャツを脱ごうとしたサクラを、イルカが制した。
「家に着くまで着てなさい。それと、今度から外出するときは胸元の隠れる服を着ること!袖無しも駄目だぞ」
「えーー」
「約束しないとここから出さないからな」イルカは精一杯厳しい声を出したのだが、何故かサクラは瞳を輝かせた。
「本当!?」
「え・・・」
意外な反応にたじろぐイルカを押しのけ、サクラは履きかけた靴を再び脱ぎ始める。
「じゃあ、今日はイルカ先生のところにお泊まりね!!嬉しい」
サクラは喜々とした顔で言うと鞄を片手に廊下を歩き出した。
「・・・あの、そういう意味じゃなかったんだけど」
イルカの呟きは全く無視され、サクラが家に帰ったのはそれから一週間後のことだった。
あとがき??
夏の暑さが私を狂わす。
全ては、全ては夏の日差しのせい。
そういうことに・・・。前半のサクイルらぶらぶ振りが書いていて最高に楽しかったです。
イルカ先生は特別好きってわけではないのですが、たぶん、サクイルが書きたかったんです。カカ→サク→イル。
両思いにしてやろうか、と思って書いていたのだけど、イルカ先生が抵抗したのでやめました。シャイな人だな。
曖昧なところは曖昧なままで。結局どうなんだろう。カカシ先生。っていうか、イルカ先生とサクラは。あれ??
この二人だったら、女の子攻めの大人向け駄文が書けそうな気がするよ。(誰が読むのか・・・)
でも、続きは書きたい感じ。