touch 3
「ハヤテさん、あんまりしつこいエッチすると女の子に嫌われるわよ。体にアト残したりとか」
「サクラさんに嫌われなければいいです」
「はぁ・・・」
にこにこ顔で自分を見詰めるハヤテに、サクラは曖昧な表情をする。「それより、サクラさんの待ち人が現れたようですよ」
その言葉につられて振り返ると、自分達のいる方向を凝視しているイルカがサクラの視界に入る。
「あらー。イルカ先生ってば、待ち合わせ時間よりも30分も早いわよ」
「律儀な人ですからねぇ」
額に手を当てたサクラに、ハヤテはのんびりとした口調で言う。「早く行った方がいいんじゃないですか。私、物凄く睨まれてる気がするんですけど」
「うん。ハヤテさん、有難うね」
「また、いつでもどうぞ」
駆け出したサクラに向かって、ハヤテは笑顔で手を振った。
「イルカ先生、お仕事早く終わったの?」
「今一緒にいたの、ハヤテさんだよな」
飛びついてきたサクラに誤魔化されることなく、イルカは真面目な顔つきで訊ねる。
「え、うん。そうだけど」
「よく会ってるのか」
「よくってほどじゃないけど。今日はこれもらってきたのよ」
サクラは手に持っていた紙袋を掲げて見せた。
「花粉症の薬。ハヤテさんが調合した薬はよく効くのよ。イルカ先生、毎年ひどいでしょ」
にっこりと笑ったサクラは、イルカのために薬をもらってきたのだと強調して言う。ハヤテが病がちな自分のために様々な薬を調合していることも、またそれが効果覿面と評判なこともイルカは知っている。
そしてハヤテの作る薬は非常に高価なことと、本人の気に入ったごく少数の相手にしか配らないこともイルカはよく知っていた。「・・・高かったんじゃないのか」
「ハヤテさん、私からお金取ったことなんて一度もないわよ」
サクラはイルカを安心させるように穏やかに笑う。
だが、その一言がイルカの不安をさらに煽ったといことを知るよしもなかった。
「・・・一度もないってことは、何度も薬を分けてもらってるってことだよな。高価な薬を、ただでなんてあり得るのか?」
イルカがぶつぶつと独り言を繰り返しているのは、湯船の中だ。
イルカの家は半分サクラが下宿している状態で、イルカが一人になれる場所といったら限られている。
そうして、イルカが悶々と悩んでいるのはサクラのことだ。
昼間に目撃した、親しげなハヤテとサクラの姿がイルカの脳裏に焼き付いていた。
サクラを問いつめようとしても、のらりくらりとかわされてしまう。「あんまりしつこく訊いて嫌われたくないしなぁ・・・」
そろそろあがろうかと目線を上げたときに、脱衣所に人影があるのに気付く。
まさかと思う間もなく、風呂場の扉は勢いよく開かれた。
「先生、一緒に入ろう!」
悩みの元凶であるサクラが、満面の笑みと共にタオルを一枚持った姿で立っていた。
「えへへー。イルカ先生の髪、一度洗って見たかったのよね。どっかかゆいところとか、ある?」
「ないないない」
サクラは嬉々とした様子でイルカの髪を泡立てていたが、イルカの方はそれどころではなかった。
サクラの小さな手は行きつけの床屋の無骨な指とは全然違って、妙な心持ちになってくる。
何とか気持ちをしずめようとするイルカの気持ちなど知らず、サクラは「先生、髪の毛の量多いのね」などと楽しそうに笑っている。「それで、どんな頼み事があるんだ」
熱いお湯をかけて洗髪をすませたあと、イルカはサクラの瞳を見詰めて訊ねる。
「分かる?」
「分かる。生徒達が何かおねだりをするときと同じ目だ」
「さすが長いこと教師やってるだけあるわね」
サクラは嬉しそうに笑って言った。「木ノ葉山温泉にイルカ先生と一緒に行きたいなぁって。あそこ杉の木が沢山あるから先生にはきついかと思ったけど、ハヤテさんに薬もらったし平気よね」
「・・・・うーん」
「お願い!」
言葉と同時に抱きつかれ、イルカは悲鳴をあげそうになる。
「分かった、分かったから離れろって!」
「嬉しい!!来週、予約入れておくわね」
サクラがあと3秒ほどイルカに密着したままなら、理性のたがが外れていたかもしれなかった。
風呂からあがり、冷静になったイルカはサクラの体に非常に気になるものを発見した。
首筋に、兎のキャラクターの絆創膏が二つほど貼ってある。
確か、今朝はなかったはずだ。「・・・サクラ、そこ、怪我したのか」
「虫にかまれたのよ。今日の任務、雑草取りだったから」
サクラは少しも動揺した素振りを見せずに答える。
それが本当のことなのか、またはサクラが稀代のペテン師なのか。
長いこと教師をやっているイルカにもなかなか判断つかないことだった。
あとがき??
エロエロなのに、エロシーンはないという。(笑)微妙ですねぇ。
真面目なイルカ先生は風呂場でいちゃつくのに抵抗があるようです。
というか、女性と一緒に風呂というのがもう駄目らしい。
絆創膏でキスマーク隠しってのは、古い手か。
すみません。ハヤサク大好きです。
ネプチューンの番組で、お風呂で娘が父親におねだりとするコーナーがありまして、それをイルサクでやりたかった。それだけ。(笑)
こういう話は何にも考えないですらすら書けるので楽です。楽しかった。