『K』の事情 2
「よぉ」
カカシの声に、サスケは全く振り返ろうとしない。
彼らしいその様に、カカシは苦笑しながら歩み寄る。「いつもここで特訓してるの?」
「・・・ああ」
変に無視して付きまとわれたらことだと思ったのか、サスケは渋々返事を返してきた。
「一人で?」
「さっきまではナルトもいたけどな」
サスケは軽いストレッチを続けながら答える。
早くどこかへ行け、とばかりに刺のある声を出しているのだが、カカシが気にした様子はない。
「お前さぁ・・・・」
と、カカシの言葉はそこで途切れた。
そして、いつまでもたっても喋りだす気配がない。
続く言葉を待っていたサスケは、ようやく怪訝な顔をカカシに向ける。「何だ」
「ああ、すまん。何でもないよ」
カカシはへらへらと笑いながら頭をかいた。
サスケはさらに訝しげな表情をする。カカシはサクラとのことを問いただそうと思ったのだが、今この場で言うのはぶしつけな感じがした。
場所がアカデミーなだけに、居残りの生徒達の声が遠くから聞こえる。
誰かに聞かれていないとも限らない。「ま、頑張れよ」
クルリを後ろを向いたかと思うと、そのまま手を振りながら去っていくカカシを、サスケは最後まで不信な顔で見送った。
「だって、怖いじゃないか」
カカシは一人ぶつぶつと呟きながら街中を歩く。
無理に納得させてあの場をやり過ごしてしまったが、サスケとの会話を中断してした理由は、本当は場所が関係していたのではない。
サスケにサクラとの仲を聞いたところで、もし肯定の返事が返ってきたらと思うと、たまらなく怖かったのだ。
暗部にいたころは「怖い」などと思ってことはなかった。
カカシが怖いと思うのは、サクラに関することだけだ。サクラに嫌われることが怖い。
サクラが離れていってしまうことが怖い。
サクラが笑わなくなってしまうことが怖い。考えが全てサクラ中心になってしまうことに呆れてしまうが、サクラが微笑んでくれたときの幸福感は何にも変えがたいものがある。
これは暗部にいたときには経験できないことだった。こうしてカカシが悶悶と考えごとをして歩いていると、ふと見上げた街頭に知った顔を見つける。
店先の軒下に突っ立っているのは、ナルトだ。
買い物をしているわけではなく、そこにいる。
カカシは首を傾けながら近づいた。
「こんなところで、何してるんだ?」
「待ってるんだよ」ナルトは顎でしゃくって、その場所を示した。
視線の先には、ヒナタが花屋の店員と楽しそうに談笑している。
その手に花があることから、購入した後に話し好きのレジの店員に捕まったらしい。「ああ、そういえば、お前、彼女ができたんだっけな」
「うん」
ナルトは傍らのカカシを見上げて言った。
カカシは舌打ちしたい気持ちを押さえてにっこりと微笑んだ。
「良かったなぁ、幸せで」
そのまま、がしがしと乱暴にナルトの頭をなでる。
悩んでいるときに他人が幸せそうだと、どうにも腹がたつ。
半ば憎しみまじりのカカシの動作に、ナルトは気付いていないようだ。アカデミー時代の同級生であるヒナタは、昔からナルトに想いを寄せていたのだと、カカシはサクラから聞いたことがある。
二人が付き合い始めたのだというのも、サクラの情報。
それが誤報でなかったことを、カカシは今日初めて確認したことになる。
カカシの目で見るかぎり、ヒナタは標準以上の、なかなかの美少女だ。
上手いことやったなぁ、などと思いながら、カカシはナルトに話し掛ける。
「可愛い子だな」
「そうだね」からかうようなニュアンスを含むカカシの声に、ナルトはあっさりと同意する。
のろけとも取れる、当り障りのない、短い会話。
だが、カカシはこのとき何かひっかかりを感じた。
勘が働いた、といった方が良いだろうか。
ナルトの返事には、何の感情もこもっていないような気がしたのだ。
まるで第三者の意見のような。思わずといった風に、カカシは疑問を口にしていた。
「お前、あの子のこと好きなんだよな」
瞬間、ナルトは虚をつかれた、というような顔をしてカカシを振り返った。
驚くナルトを見て、カカシ自身も、馬鹿な質問をした、という自覚はあった。
二人は付き合っているのだ。
ナルトは好きでもない相手と交際できるような、器用な人間ではない。
そして、人に騙されることはあっても、逆に騙すことなど、決してしない性格だ。真顔でカカシの視線を受け止めていたナルトの表情が、ふいに緩む。
「ヒナタはいい奴だよ」
笑いながら言うと、ナルトはカカシのさらなる問いかけを拒むかのように歩き出した。
手を振るナルトに気づき、ヒナタは嬉しそうに微笑む。
ようやく会計を終えたヒナタは、花を片手に、小走りにナルト駆け寄った。
はたから見ると、幸せなカップルそのもの。
だが、カカシは二人の姿に、何か漠然とした不安を感じる。
ナルトの返事は、カカシが予想していた答えではなかった。
あとがき??
えへへ。とっても楽しかったです〜vvやっぱりナルトは書きやすい。
オチはバレバレですね。(笑)
いい人=どうでもいい人、だったり。(ヒナタ、すまん!)サクラ、出てこなかったですねぇ。すみません。次はサクラとカカシ先生ばっかりの予定なんですが。
しかし、困ったことに、書きたかった場面をほぼ書いてしまったので、ここで終わってしまいそう。(あわわ)
結末を考えていないだけなんですけど。(←!?)
何だか、結構、長くなりそうな、予感、が・・・。
続き、どうして欲しいとかあれば、考慮しますよ。今のうち。(笑)