sound of silence 2


「扉の鍵は直しました」

礼拝のあと、シスターに呼び止められたサクラは、その一言に心臓がギュウッと萎縮した気がした。
扉と言われて、サクラが思いつくのは一つしかない。
カカシと逢瀬を交わした、外界へと続く扉。
彼らの姿を見咎めたシスターは、サクラの心を見透かしているように忠告をする。

「心を静かになさい。罪深かい魂では神に愛されることはありませんよ」

 

 

罰として、一人祈祷の業を科せられたサクラは、礼拝堂で跪いた。
見上げると、そこには崇拝する神の像。
慈悲深い眼差しを見る者全て、平等に向けている。

父が家に迎え入れえた後妻との折り合いが悪く、サクラがこの修道院に入れられて7年経つ。
いくら祈っても、沈黙を続けても、神の声が聞こえたことはなかった。
カカシの声は、あれほど素直に心の中に入り込んできたというのに。
一週間後に自分が街を去るとき、一緒に行こうと、彼は言った。
でも、扉の鍵は、シスターによって直されてしまった。
カカシはもう、この修道院に足を踏み入れることはできない。

サクラは心の迷いを振り切るようにして、眼前の神の像を強く見詰める。
あれは、弱い自分を試す悪魔の囁きだったのだ。
自分の信じる道は、生きるべき場所はこの修道院の中なのだから。
一週間経って彼がこの街から消えれば、すぐにも忘れることができる。

彼とは、二度と会うことはない。

 

 

 

ストリートオルガンの軽快な音色に、カカシは目を瞑って聞き入った。
広場に集まった子供が、楽しげに駆け回っている音も雑音混じりに聞こえる。
どの街でも見られる、平和な、日常的な風景。
だが、彼女はこうして普通に散歩をすることすらままならない身だ。

カカシはサクラに街の外に出ようと誘った。
ただ驚くばかりで、肯定も否定もしなかった彼女。
次に会うときまでに、心の準備は出来ているだろうか。

誓願をたてて尼僧になったら、もう後戻りはできない。
その前に、サクラを外の世界に連れ出したいとカカシは思った。
組織を抜けて、次の街に向かう支度金は一週間あれば用意できるはずだ。

今後のことをあれこれ模索しながら歩いていたカカシは、人気のない路地に入るなり、ピタリと足を止める。
自分に向けられた鋭い殺気。
振り向くよりも先に、自然に銃へと手が伸びていた。
反応は早くとも、利き腕の怪我は完治にはほど遠い状態だ。
抜き打ちがいつもより数秒遅れたことが、致命的だった。

 

視界が傾ぐと、綺麗に澄み渡った青い空が目に入る。
家々の屋根の隙間。
大空をかける白い鳩との色のコントラストが、何とも絶妙だ。

カカシの体から流れ出る多量の血は、薄汚れた石畳を赤く染め、同時にカカシの意識をも奪っていく。
遠くで女性の悲鳴があがったが、カカシの耳には届かなかった。

 

 

修道院の中と外では、頬にあたる風もきっと違って感じられる。

白い修道服よりも、彼女に似合う可愛い服を買ってあげたい。
青空と太陽の下、笑う彼女はきっと綺麗だ。

今まで見たのは怯えた顔や、当惑した顔ばかり。
もっと、いろいろな場所で。
沢山の彼女の表情を見てみたかった。


あとがき??
平坦。もっと趣のある駄文を書いてみたいですねぇ。(無理)
本当は2で終わりだったんだけれど、ちょっと蛇足を付け足します。
あんまり期待しないで。


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