forever love
カカシ先生の寝室。
そのベッドの傍らに、イヤリングが落ちていた。
女物の。
それを見た瞬間に、冷水を浴びたように、身体が冷たくなっていった。カカシ先生の家に遊びに来たことは何度もあるけど、女の匂いを感じさせるものを発見したのは、初めてのこと。
拾い上げると、きつい香水が鼻についた。
ひどく気分が悪い。
「カカシ先生――」
トタトタと音を立てて歩くと、私はイヤリングをカカシ先生のもとまで運んだ。
リビングのソファで横になっているカカシ先生に体重ごと圧し掛かる。
「これ、彼女の?」
眠そうにまどろんでいたカカシ先生は、うっすらと目を開けて私の手元を眺める。
「・・・あーー」
なにやら思い出したのか、カカシ先生は納得気味な声を出した。「違うよ。彼女じゃなくて、友達の」
「へー。友達の女の人がカカシ先生のベッドに寝たりするんだ」
私はとげとげしく言い放つ。
だけれど、カカシ先生は歯牙にもかけずに笑い飛ばした。
「大人の付き合いってやつだよ」
「ふーん・・・」
「ほら、重いからどきなさい」
カカシ先生は身体の上に乗っかっている私をどかそうとする。
でも、私は逆にカカシ先生に身体をより密着させた。
そして、カカシ先生の顔を覗き込んで、頬に唇を重ねる。
驚くカカシ先生をよそに、その瞳をじっと見詰めた。
「友達の女の人にベッドを使わせたりしないで」
私はごく真面目な口調で告げる。私のカカシ先生。
誰か、他の女が彼に触れたかと思うと、気が触れそうになる。
今のところ、カカシ先生が何をしようと私が咎める筋合いはない。
私達はただの教師と生徒という関係でしかないから。
ならば、その垣根を越えるまでだ。カカシ先生は私の頭を引き寄せて、額にキスをくれた。
「サクラが代わりになってくれるなら、了解するよ」
今までに聴いたことのない、甘い声で囁かれる。自分から言い出したことなのに。
私の顔は真っ赤に紅潮し。
心拍数は大きく跳ね上がった。
「どうすればいいの」
とりあえずベッドの上で裸になったものの、それから何をしたらいいのかよく分からない。
初めての経験なのだ。
互いの服を脱がし合ったけれど、カカシ先生はまだ私にあまり触れてこなかった。
「そうねぇ・・・」
私のあけすけな物言いに、カカシ先生は口に手を当てて苦笑している。
可愛い笑顔。
これが私のものになるのかと思うと、ゾクゾクして、それだけで身体が火照ってくる。「まず、大人のキスをしようか」
頬に触れる大きな手がとても温かい。
そして、近づいてくるカカシ先生の両目に、つい見入ってしまった。
左右色違いの、綺麗な目。
あまりに凝視していたせいか、カカシ先生が少しだけ顔をしかめる。
「閉じて」
吐息のかかる距離までくると、カカシ先生は苦情めいた口調で言う。
命令に従い、私はすぐに目を閉じた。
それから体中をいろいろと弄られて、気持ちいいんだか悪いんだかよく分からない感覚に意識が朦朧としてしまった。
だけれど、いよいよというときに。
私は急に怖気づく。「・・・絶対無理」
標準が分からないからカカシ先生のが大きいか小さいか意見できないけれど、そんなものが私の中に入るとは到底思えなかった。
「やっぱりやめる」
「大丈夫だよ」
腹ばいになってベッドから抜け出ようとする私の手をカカシ先生が掴む。
それが思った以上に強い力で、私は少しだけ怖くなった。
でも、その顔を窺うとカカシ先生は柔らかな微笑を浮かべている。
「サクラ、愛してるよ」カカシ先生の殺し文句。
こういうときに言うなんて、ずるい。
逆らえないことを知ってるのに。
私はその笑顔にメロメロなんだから。
予想通り、その行為はかなりの痛みを伴って私を苦しめた。
カカシ先生がいろいろと気を使ってくれてるのは分かるけど、それでも痛いものは痛い。
「・・・せんせぇ」
涙声で、救いを求める。
そうでもしないと、気を失ってしまいそうだ。「サクラ」
名前を呼ぶたびに、カカシ先生は応えてくれる。
そして、愛情のこもったキスを返してくれる。
そうすると、私の心は痛みを越えたとこまでいってしまって、何とか苦痛を緩和することができた。
最後には意識がどこかに飛んでしまったけれど。
目を覚ますと、一瞬自分がどこにいるのか分からなかった。
自分の家の匂いではない枕。
それに、身体が妙にだるくて方々が痛い。「んーー・・・」
唸り声をあげながら、私はベッドサイドにある時計を見ようと手を伸ばした。
でも、代わりにその手を誰かに握られる。
驚いて目を見開くと、同じく寝起きといった感じのカカシ先生と目が会った。
「おはよ」
春の日差しのような笑顔。
私が一番大好きなもの。ようやく、これまでの経緯を思い出した。
「あー、えーと、おはようございます」
何だか照れくさくて、私は顔を逸らす。
そうした心情を汲み取ったのか、カカシ先生はぽんぽんと私の頭を叩いた。
いつもと同じように。
それだけで、気持ちが落ち着いて凄く安心する。「何か飲む?」
「うん」
カカシ先生の問い掛けに、私は即答した。
目覚めた瞬間に感じた喉の渇き。
本当なら自分で取りに行きたいところだけど、何しろ身体がだるい。
カカシ先生はすぐに台所から水を持ってきてくれた。
ようやく半身を起こした私は、水を受け取ると胃に流し込む。
「ねぇ、先生。先生は気持ち良かったの?」
コップから口を離して、私は真顔で尋ねる。
「ん。まぁ、サクラは身体小さいから思った以上に具合良かったよ」
私の馬鹿な質問に、カカシ先生も生真面目に返す。
ベッドサイドに腰掛けたカカシ先生を、私は半眼で睨みつけた。「何か、ずるい。私痛いだけだったのに・・・」
ぶすったれた私に、カカシ先生が笑いながら振り返る。
「しょうがないだろ、サクラは初めてだったんだから。次からはちゃんと良くなるよ」
「でも、ずるい・・・」
ぶつぶつと呟く私を気にした風もなく、カカシ先生は私の手からコップを奪って残った水を全部飲み干してした。
瞬間、私の頭にある妙案が浮かぶ。「カカシ先生、次生まれてくるときは女にしてよ。私、男にするから!これであいこよ」
手を叩いて喜んだ私だけど、カカシ先生は渋い顔になった。
「それは駄目。俺は来世も男がいいから、サクラはまた女の子だよ」
「ええーー!?」
私は不満もあらわに頬を膨らませる。
暫らくの間、私達はそうしたくだらない話題で盛り上がった。
本音を言うと、ちょっと嬉しかったのだ。
来世で出会えたら、という私の仮定を、カカシ先生が否定しなかったこと。
本当に、ずっとずっとカカシ先生の隣りにいられたらいいな、と思う。
そして、カカシ先生もそれを望んでくれるのなら。
私は、これ以上の幸せは想像できないのだった。
あとがき??
えーと、小野塚カホリ先生の漫画を読んで、急に書きたくなりました。
本当はもっとクールな話だったんですけどね。あくまで師弟愛的な二人。
でも、両想い路線に変更してみました。
こういった話はもう書かないですよ。と、思った瞬間に、この話のカカシバージョンを書きたくなったり。
これはサク→カカ気味だけど、そっちはカカ→サク気味。
先生視点なので、ヤバイ度数があがる。15禁くらいか・・・・。
まぁ、書けたら、ということで!では、さようなら、さようなら!!(書き逃げ!)