恋に落ちる


 恋に落ちるという言葉がある。

落ちる
1.高いところから低い所へ移動する。
2.もとあったものがなくなる。
3.程度が低くなる。
4.社会的地位や所属が上位から下位に映る。
etc.

あまり良い意味はないようだ。
やはり恋をするということ堕落することなのだろうか。
視界に愛しい少女入れて、ぼんやりと思う。
いつも携帯している愛読書は今も開かれているが、あまり内容は頭に入っていない。

 

「先生!ボーっとしてるなら、ちょっとは手伝ってよ!!」
作業の手を止めたサクラが、顔をカカシの方へ向けて文句の声を張り上げた。

今回の任務はとある屋敷の営繕作業。
早い話が壁のペンキ塗り。
簡単そうだが、依頼人の屋敷の広さが半端じゃない。
その上、かなりの炎天下。
暑さが疲れを増徴させているようだ。

サクラの発言に、少し遠くの壁を塗っていたでナルトが「そうだ、そうだ」と同意している声が聞こえる。
サスケは何も発言する様子はなく、一刻も早くこの任務を終わらせようと黙々と手を動かしている。

「今、重要な考え事をしてるんだよ」
カカシは一人木陰に座り込み、片手に愛読書を持ちながらサクラに軽く手を振って答える。
とてもそうは見えないわ、とぶつぶつ言いながらサクラは再びペンキのはけを手に再び壁に向かった。
カカシは、ボーっとしてたなんて、自分のこと見てくれてたんだなぁとにやけている。
傍から見ると、とてつもなく不気味だ。

 

サクラを手に入れたいのはやまやまなんだけど。
俺と付き合い始めえると、大抵の女は狂う。
最初はどうしてなのか理解できなかったが、最近ようやく分かってきた。
どうやら自分は独占欲が人一倍強いらしいということに。
相手の全てを手に入れないと気がすまない。
心も体も、その思想さえも。
そうでないと安心できないのだ。

狂っているのは彼女達ではなく、自分の方なのかもしれない。

だからサクラ。
君には振り向いて欲しいような、そうでないような不思議な気持ちだ。
サクラがサスケを好きだと言っているうちは我慢できる。
でも、もしサクラが俺を好きだと言ってくれたら?

サクラが狂うのは見たくないんだ。
でも、サクラに惹かれる気持ちをどうすることもできない。
気持ちは半々。

 

「ナルト、脚立ちゃんと押えておいてよ」
「うん」
ナルトとサクラの会話が耳に届き、カカシは思考を中断させた。
見ると、サクラが屋根の一番高い部分にペンキを塗ろうとしている。
ただでさえ足場の悪い高い屋根に、更に脚立を置いてようやく届く場所。
「俺がやろうか」
「大丈夫よ」
サクラの足は見るからに震えているのだが、普段の任務でサスケやナルトに後れを取っているだけに、意地になっているようだ。

カカシが危なっかしいなと思って見ていると、予想通り、サクラがバランスを崩す。
ナルトは脚立を押さえているため、動けない。
サスケははるか階下で、まだ事態に気づいていない。

愛読書を放り出してカカシは跳躍した。
落下するサクラを楽々キャッチし、そのまま彼女を抱いて地面に降り立つ。
「大丈夫か」
見るとカカシの腕の中でサクラが珍しく頬を赤らめている。
「先生、有難う」

 

「・・・危ないな。落ちないでくれよ」
「次は気をつけます」

戒めのよう呟かれたカカシの言葉の意図は、もちろんサクラには伝わらなかった。


あとがき??
これ書き始めたの8月(だから設定は夏)で、完成が翌年の1月。・・・五ヶ月―!
こんなアホな文章に!
途中でかなり飽きてたらしい。
他にも書きかけがごろごろ転がってて(10個以上)ヤバイわ。


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