禁じられた遊び B


ピンクの髪の少女はナルトの想い人だ。
言葉を交わしたことはないけれど、友達と戯れる彼女をずっと遠くから見ていた。
向こうは自分を知らなくても、ナルトはサクラという名前も知っている。
ナルトの秘密の場所。
池の畔にいたのは、そのサクラだった。
ナルトには、声を聞いただけですぐに分かる。

思いがけない人物がいたことで、ナルトは緊張して様子を窺う。
彼女は一人ではない。
ナルトのいる場所からはサクラのピンクの髪しか見えないが、池の水面には彼女以外の人影が映っている。
何か動物の面をつけた、大人。

目を凝らして眺めているうちにサクラの笑い声が、急に途切れた。
同時に、サクラの姿も木陰に隠れて見えなくなる。

ナルトは音を立てないよう、注意して二人に接近した。
どうしてか、胸騒ぎがする。
鼓動が早まり、苦しげな呼吸をしながらもナルトは果敢にもその場所へ近づいた。

 

そして目にした、悪夢のような光景。

 

面をずらしたその男は、腕の中のサクラの唇を吸っていた。
挨拶に交わす口づけとは違う。
噛み付くような、荒々しい行為。
そして男に組み敷かれ、身体を嬲られながらも、サクラは笑っている。

友達といるときとは全く違う。
幼い少女らしからぬ、婀娜な笑み。

あんなサクラは知らない。

 

見る間にサクラの肌が晒されて、ナルトは足が震えて立っていられなくなる。
目の前で行われていることの意味が分からない。
ただ怖かった。

サクラが食べられてしまう。
白い髪の、悪魔のような眼をした男に。

 

後退ったナルトの足下で、小枝がミシリと音を立てる。
男がこちらを振り返ったのを合図に、ナルトはその場から逃げ出した。
全速力で駆ける。
突き出した木の枝がナルトの手足を傷つけても、それでも止まらない。
早く、一刻も早く安全な場所に行かなければ。
そして、助けを呼ばなければならない。

サクラが殺されてしまう前に。

 

 

「お前がよりにもよって火影さまに言いつけるとは思わなかったよ」

ナルトの顔を見詰め、カカシは淡々と語る。
不穏な空気の中、ナルトは臆することなくカカシと対峙している。
カカシを人気のないこの場所に呼び出したのはナルトだ。
このもやもやした気持ちを抱えたまま一緒に任務を続けるなど、ナルトには出来ない。

あれからカカシは前線送りになり、ナルトとサクラは記憶を消された。
幼子に手を出したことが問題だったのではない。
暗部に所属する人間が面を外し、一般市民に素顔を晒した咎だ。
カカシがその罪を洗い流すのに要した時間が、そのままナルトがカカシに再会するまでの時間。

「お前のせいで、サクラともう一度会えるようになるのに5年もかかっちゃったよ」
恨みがましいことを口にしながらも、カカシは薄い笑みを浮かべている。
ナルトの神経を逆撫でするように。

 

「サクラは俺のことすっかり忘れてるしさ。あいつ好きな男の話を俺の前でするんだよ。ファーストキスはサスケの奴とするんだって」
一旦言葉を切り、カカシはくすりと笑う。
「おかしなことを言うよなぁ。キスどころか、サクラは俺と散々・・・」
「カカシ先生!」
それ以上聞くことは耐えられないというように、ナルトはカカシの言葉を遮る。

「何で今頃になって俺達の前に姿を現したんだよ」
「何でって・・・」
首を傾げたカカシは、とぼけたように言う。
「俺の恋人を取り戻すためだよ」
あっさりとした返事に、ナルトはカカシを睨み付ける。
「そんなのは俺が許さない!サクラちゃんは俺が守る。サクラちゃんはあんたのことなんて絶対に思い出したりしない」
「お前は思い出したのに?」

言葉に詰まるナルトに、カカシは軽やかな笑い声をたてる。
表情を険しくするナルトとは対照的にカカシは穏やかな顔でナルトを見詰めた。
「いいよ。時間はたっぷりあるし、お前にチャンスをやる。サクラが昔のことを思い出さないうちは、俺も彼女に手を出したりしないよ」
不敵な笑みと共にカカシは堂々と宣言する。
自らの勝算を見越しての、余裕の発言だった。

 

 

「ナルトさ、カカシ先生と何かあった?」
「・・・何で?」
質問したのに逆に訊ねられ、サクラは困ったように眉をひそめる。
「最近、やらないじゃない。「先生大好きv」って言って飛びつくやつ」
「ああ」
納得すると、ナルトはサクラから目線を逸らした。
「子供っぽいかと思って」
「・・・ふーん」

頷いたものの、サクラはナルトの顔を見てはまだ訝しげな表情をしていた。
カカシに対しての態度だけでなく、ナルトの雰囲気はそれまでと変化したような気がする。
だが、それが具体的にどんな感じなのかは、サクラには上手く言い表すことができない。

 

「それより、サクラちゃんはカカシ先生のこと、どう思う」
「何、藪から棒に?」
サクラは驚いたようだが、別段不審に思った様子はなかった。
「そうね、遅刻ばっかりでだらしない先生だなーって思う。あの覆面だって怪しいし、変人っぽい」
その返答に思わず表情を和らげたナルトだったが、サクラは続けて口を開いた。
「でもね、先生の笑顔を見ると何だか懐かしい感じがして安心するの。あの瞳をもっと身近で見たことがあったような・・・」
ナルトの顔を覗き込み、サクラは苦笑する。
「変よね」

ナルトは一瞬何か言いたげな顔をしたが、ただ俯いて口をつぐんだ。
「ナルト?」
その顔の陰りに、サクラは不安げに呼びかける。
だが、ナルトは答えることなく地表を見詰め続けていた。


あとがき??
和姦だというのに、この犯罪加減は一体・・・。

これはナルト視点ですけど、カカシ視点のカカサクもあります。
しかし、いろいろと問題有りなので載せていいものか。隠しか?
内容的には何故かほのぼのなんだけど。
それを読むと、カカシ先生が5年前のナルトの密告をさして怒っている様子でない理由がはっきりします。
カカシ先生、どう見てもナルトをからかって遊んでいますので。
気が向いたら書きます。


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