空
「誰にやられたんだ」
口に出したあとに、アスマはその質問が愚問だったことに気付く。
“写輪眼のカカシ”の顔を腫れるほど殴れる相手など、限られている。
「・・・サクラ」
案の定、カカシは暗い声でその名前を口にする。
腫れている方の頬に手を当て、アスマの顔を覗き込むようにして見る。
「これ、目立つ?」
「おお」
遠慮なく頷くアスマに、カカシは嘆息する。「で、何をやらかして怒られたんだ」
アスマはウェイターに自分の分の酒を注文すると早々に訊ねる。
行き着けの飲み屋は馴染みの客でごった返しており、二人の会話に注目する者はいない。
「昨日サクラがうちに泊まりに来たんだけど」
「ふん」
「中に出したら猛烈に怒られた」
「・・・・」
アスマはカカシの顔をまじまじと見た。「それはお前が悪いだろう」
「大丈夫だよ。サクラ、まだ初潮きてないから。ただ、あの感触が気持ち悪くて嫌なんだって」
「・・・・へぇ」
熱弁するカカシに、アスマは生返事をする。
それがきていないならきていないで、倫理的な問題が生じるような気がした。
「俺だって今まで相手にはずっと口取りしてもらってたんだけど、サクラ嫌がるし。それに、サクラには全部受け入れてもらいたいと思うしさ・・・」
続くのろけ話に、アスマはすっかり閉口した。
このエリート上忍がどれほど自分の教え子に参っているのかありありと分かる。
「まぁ、サクラに生理がきたらやめるんだろ」
「んーん、そうしたらよけいにやめない。子供が出来るまで続ける」
驚くアスマに、カカシはニカッと笑う。「お前が子供好きとは知らなかったな・・・」
「嫌いだよ、子供なんて。まして、自分の血を半分ひく俺に似た子供なんて考えただけでゾッとする」
言葉の通り、カカシは眉間に皺を寄せる。
「でも、妊娠したら生真面目なサクラは子供のためにも俺に責任とって欲しいって望むだろ。そうしたらサクラの一生は俺のもんだ」
晴れやかに笑うカカシに、アスマは呆れ返った。
「・・・・最低だな」
「どうとでも言って」
あっさりと受け流すカカシに、アスマは心からサクラに同情した。
それから、カカシは7班の活動以外での所用で国外に赴き、帰ってきたのは1ヶ月後だった。
上への報告を終えたカカシは自宅に戻る間ももどかしく、恋人の待つ場所へと直行する。「カカシ先生」
その日に帰ると報告しておいたからか、サクラは深夜にも限らず窓を開けて待っていた。
「サクラ」
カカシは部屋に入るなり、サクラを抱きすくめる。
その腕の強さに軽く身じろぎをしたサクラだが、素直にカカシの背に手を回してきた。「せ、先生」
サクラの頬に手を添え、口づけをしようとしたカカシを彼女が制する。
「何?」
訝しげなカカシに、サクラは何故か頬を染める。
「あ、あのね・・・」
言い難いことなのか、サクラはらしくなくもじもじと身を縮ませる。
「生理がきたの」
「え?」
「先生が里を離れてすぐ。だから、今までみたいには・・・」
言いよどむサクラに、カカシは微笑する。
「それは、おめでとう」
どうしてか嬉しげなカカシの真意には、サクラはまだ気付かなかった。
あとがき??
うーん。最悪。計画妊娠って、男にも当てはまるのか。
『空』は“そら”ではなく、“うつほ”って読んでね。
夏の祭典で久々に男性向けサークルの列に並んだら、こんなのが出来てしまったよ。
構想&執筆時間30分。恐るべし。
このまま続くと18禁になりそうだから、切っとく。