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隣りの家に住む人 2
「やあ、いらっしゃい。君の方から来てくれるなんて、嬉しいね。ずっと嫌われてると思ってたよ。それとも、何、好きな相手に冷たくしちゃうタイプなのかな」
ぺらぺらと喋り続けるカカシに、サクラは首を振って答える。
後ろから羽交い締めにされ、口を押さえられているために、これしか否定する方法がない。
口を覆われていなくても、たぶん恐怖で声は出せなかっただろう。
血の香りは、室内にいると余計強烈に感じる。小刻みに震えるサクラに、カカシは大袈裟にため息をついた。
「それは残念だ。可愛い子だと思って目を付けてたのに・・・」
楽しげなその声音には、気落ちした気配は微塵も感じられない。
サクラの体から手を離しながら、カカシはサクラの耳を弄るように舐める。「ヒッ・・・」
「騒いだら、殺すよ」
喉元まで出かかったサクラの悲鳴は、カカシの一言で遮られる。
脱出のための扉はすぐ近くにあるが、サクラの体は瘧にかかったように震えて自由に動けずにいた。
「暗くしていてごめんね。今、丁度仕事の真っ最中だったんだ。後始末だけど」
カカシは電気のスイッチを入れると廊下をすたすたと歩く。
明るくなったことで、カーテンが閉められた殺風景な部屋があらわになった。
血の匂いは、カカシが向かった先、風呂場から強く発せられているようだ。「あんまり見ない方がいいと思うよ。死体刻んだ後に、酸をかけて溶かしてるの」
カカシはサクラの方を見ながら、血がべったりと付いたゴム手袋に腕を突っ込む。
部屋に充満する匂いとその言葉を聞いただけで、サクラは胃の中のものを吐き出しそうになる。
換気扇は最大限に動いているが、その役目は果たされていないに等しい。煮物の入った皿が派手な音を立てて割れ、サクラはその場に倒れ込んでいた。
目覚めると、見知ったクリーム色の天井。
サクラは自分の家の居間だと思ったが、それは同じ集合住宅ゆえの錯覚だ。
証拠に、鼻につく匂いが微かに残っている。サクラが半身を起こすと、額に置かれていた濡れタオルが床に落ちた。
見ると、体には薄手の毛布が掛かっている。「あ、目が覚めた。ジュース、飲む?」
傍らのソファに座っていたカカシがサクラに訊ねる。
赤い色の液体は、トマトジュースだ。
死体の始末をしたすぐ後に、そんなものを飲める神経がサクラには信じられない。
「・・・いらない」
「そう」
カカシは苦い表情のサクラに構わずそれを飲み干した。
「・・・・何が目的ですか。私をこの家に入れたのは」
単刀直入に訊くサクラに、カカシはにっこりと微笑む。
「これから先、君に俺の仕事の手伝いをしてもらおうと思って」
「冗談じゃないわよ!!」
サクラは即座に叫んだ。
思わず立ち上がったサクラに、カカシは静かに言う。
「断ると、両親の命、ないよ。それでもいい?」笑いながら言うカカシが、サクラには悪魔に見えた。
サクラは憮然とした表情でもとの場所に座る。「・・・仕事って」
「上からの任務で動くんだけど、まぁ、掃除屋とか、殺し屋って言えばぴんとくるかな」
予想通りの答えに、サクラはもうため息も出ない。
「警察に行っても、無駄だよ。うちのトップはそっちに顔のきく人だから」
「・・・・・」
「君のお母さんには電話しておいたけど、心配してるだろうからそろそろ帰りな」自分が引っ張り込んでおいて、カカシはそっけなく言う。
時計を見ると、サクラがこの家に入ってから1時間ほど経過していた。
オレンジ色だった空は、真っ黒になっている。
「次の仕事、もう今夜に入ってるんだ。ばれないように家から出てきてね」
毛布をたたんで立ち上がったサクラに、カカシは振り返って声をかける。
「・・・・でも」
「君の部屋からね、ベランダ伝うとうちに入ってこれるんだよ」
怯える目で自分を見るサクラに、カカシは朗らかに笑う。
「知ってた?」カカシの言葉はサクラに家を出れるかどうか訊ねているわけではなく、強制であることを示していた。
あとがき??
サクラが10歳だから、カカシは24歳ですね。
年齢を下げた意味は別にないです。カカシ先生が学生に見える年にしたかった。
テーマが殺し屋と少女なので、ロリ嫌いな人はあんまり読まない方がいいですよ。
って、カカサク好きーにそんな人がいるか分かりませんが。(笑)
結構、シリアスな感じだわ。後半、雰囲気変わる予定なんですが。
でも、続きは当分先、かな。まとまらなかったらごっそり削除。
ちなみに、イメージしたのは『レオン』よりも、藤原薫先生『思考少年』の「ホープ(hope)」。
藤原薫先生の作品はとにかく好き好き好きーです。意表をつくラストと、心に染みるストーリに惹かれる。
うちのサイト名も藤原薫作品だし。
先日ヤフーで「禁断恋愛」と入力したところ、藤原薫作品より先に、うちのサイトが出てきた。
おこがましいーーー!!!穴があったら入りたい。