リアル


人気の無い路地に連れ込まれたとたん、頬を叩かれた。
「あなたのせいよ」と彼女が叫ぶ。
繰り返し繰り返し。

サクラにはどうして自分がカカシの彼女に非難の言葉をぶつけられなければならないのか全く分からない。
そして殺意のこもる憎しみの瞳で睨まれたこともない。
だから彼女が怖くてしかたがなかった。
逃げたくても足がすくんで逃げられない。
彼女はサクラに罵詈雑言を浴びせ続けているが、サクラの頭の中は混乱していて、彼女の言葉を半分も理解できなかった。

彼女は狂ってしまった。

眩暈を起こしかけたサクラが意識を何とか保っていられたのは、懐から小刀を取り出す彼女が視界に入ったからだった。
このままでは殺されるという死の恐怖。
「あなたさえいなければ」
刃を鞘からだす前に、サクラは彼女に体当たりして退路をつくる。
サクラは足をもつれさせながらも必死に路地裏の細い道を走った。
何とか大通りに出るための小道にたどり着いた時、気の緩みが出たのか水道管のパイプに足をとられ転倒する。
すぐ傍に刃物を手に悪魔のように笑う彼女が迫っている。

サクラは自分の置かれている状況が未だに信じられなかった。
しかし、転んだ拍子に血が出た膝の痛みが、これは夢ではないのだと知らせる。
サクラは彼女が小刀を振りかざした瞬間、思わず目を閉じた。

 

だが、いつまでたっても彼女の小刀がサクラを傷つけることはなかった。
どれくらい時が経ったのか。
ゆっくりと目を開けるとそこには彼女の姿はなく、サクラが所属する7班の教師が立っていた。
その表情はいつものゆとりのある笑顔はなく、全くの無表情でサクラは最初別人なのかと思ってしまった。
「カ・・・カシ先生・・・」
サクラは少しかすれた声をなんとか絞りだす。

「大丈夫か」
今のサクラにはカカシがそれこそ救いの神様のように見えた。
膝はすりむいているが捻挫はしていないようで、たいした怪我ではない。
サクラが頷くと、カカシは「ちょっとここで待ってろ」と言って姿を消した。
何とか危機は回避できたのだと分かっても、サクラは身体が震えてすぐには動けなかった。

「ここからならお前の家よりうちの方が近いな。寄ってけ。手当てしてやるから」
暫くして戻ってきたカカシがそう言ってまだ座り込んだままのサクラに手を差し伸べる。

『必要以上にカカシに近づくな』

サスケの言葉がちらりと頭をよぎったが、恐怖が去ったことへの安堵感からサクラは素直カカシの手を取った。
ただ、カカシの服の袖口についた小さな血のシミだけが気になった。

 

「先生、あの人はどうなったの?」
手を繋いで歩きながら、サクラが恐る恐る訊ねる。
「あのまま自宅に帰した。もうサクラの前には現れないから大丈夫だよ」
「本当?」
サクラは前半の自宅に帰ったという言葉に対して疑問符を投げたのだが、カカシは後半の部分について言っているのだと受け止めたようだ。
「俺がよく言っておいたから。ほら、先生を信じろって」
カカシに笑顔でそう言われると、もうサクラは何も言えなくなる。
子供にとって教師は正義の存在であり、彼らの言葉は絶対だ。
巷には聖職者の犯罪などごろごろしているが、子供にはそれはなかなか信じられない。

カカシは自分を傷つようとした相手を心配している様子のサクラに暖かい視線を向ける。
そんなサクラが好きだから。
こんなことが二度と起こらないようにするには、どうしたら良いのか分かっている。

繋いだ手はもう離さない。

 

「どうしてあの女の人あんなことしたの?」
「俺が一番好きなのが彼女じゃないってことに気づいちゃったからかな」
怪我の治療が終わるとサクラはさっそく質問するが、カカシの答えと彼女が自分を殺そうとした理由とがサクラの頭の中で一致しない。
「全然分からない。もっと分かりやすく説明してよ」
カカシは頬を膨らませながら文句を言うサクラに逆に問い返す。

「サクラが好きで好きでしょうがない大好物の食べ物が目の前にあったとする。周りの人からは食べちゃ駄目と言われているけど、辺りに人気はない。どうする?」
「・・・食べちゃうかも」
例え話の意味するものも考えずサクラは答える。
「だろ。だから俺も我慢するのやめたんだ」
そう言って笑うカカシの笑顔を、サクラは何故か先ほどの彼女より怖いと思った。
本能で危険を察知していたのかもしれない。
でもそれはすでに手遅れだった。

「俺にとっての好物がサクラだったってだけの話」
サクラは自分に向かって伸ばされるカカシの手をぼんやりと眺めた。
何をしているのかよく分からなかったから。

 

その日を境にサクラは今までのカカシの彼女達に代わり、彼の家に通うはめになる。
毎日毎日。
表面上はそれまでと全く変わらなく見えるよう装う。
二人の関係は誰にも知られることはない。
それでも、じわじわと侵蝕していく。
心にも身体にも・・・。

 

「先生、この頃サクラちゃん元気ないと思わない?」
「そお?」
ナルトの話に全く興味がないらしく、カカシは上の空の返事を返す。
「任務が終わるといつもすぐにどこかに消えちゃうしさ」
秘密の特訓でもしてるのかなぁとナルトはまだぶつぶつ言っている。

「そういえばさ、最近先生の家行っても女の人いないね。またふられたの」
ナルトがカカシに無邪気に訊いてくる。
「あ〜。本物が手に入ったから、もう偽者はいらないんだ」
「本物??」
「そう。外側は手に入れたから、あとは中身なんだけど、これがなかなか難しいんだよねぇ」
理解不能なカカシの答えにナルトの顔には思い切り?マークが浮かんでいる。
そんなナルトの顔を見てカカシはクククッと含み笑いをした。

「先生、ナルト、のんびりしてると日が暮れちゃうわよー!」
先を行くサクラとサスケからだいぶ離れて歩いていたナルト達はサクラに発破をかけられる。
「すぐ追いつくってばよー」

 

それは傍目にはいつもと何ら変わることのない日常風景。


あとがき??
本文全然終わってないのに、あとがきから書いてたり。
というか、ラストから書き始める小説ってどうなのかしら。

彼女は死にました。サクラに手を出して無事なわけありません。
上忍のカカシ先生は殺人許可証を持っていることにしてください。(「パタリロ」のバンコランのように)
大事な部分がすっぽりぬけてるので、分からない人がいたらどうしよう。オロオロ。
しかし、文才が・・・。裏書ける人って本当尊敬するです。
誰か書いてくれないかなぁ。(他力本願)
間がぬけてるせいで妙に短い話になってしまった。

一言で言うと救いのない話。
先生はサクラちゃんを離してくれそうにないので、サクラちゃんが先生のこと憎んだままなら一生不幸。
なんか昔のドラマ「高校教師」にこんな関係の人達出てきたよねぇ。
あれで京本政樹のイメージ悪くなった。(もともと良くなかったが)
サクラちゃんを救ってくれる赤井英和みたいな人は現れるのか。・・・イルカ先生!?ピッタリすぎる。
いーなー、イルサク〜。(妄想妄想)

続きが読みたいなぁと言う人が何人かいればいつか書くかもしれない。
でも、きっとどん底な話。


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