トレーニング 2
「こら、サクラ。起きろっての!」
ぺしぺしと頬を叩くが、サクラはまるで無反応だ。
カカシがいくら呼び掛けても、うんともすんとも言わない。
「・・・まだ1時間も経ってないないってのに」
不満げに呟くカカシだが、肝心のサクラが失神してしまってはしょうがない。
サクラには毎日監視付きで体力トレーニングをさせているのだが、あまり成果はないようだ。片手で頬杖をついたカカシは、ベッドの上に投げ出されているサクラの腕を掴む。
「この細さだもんなぁ」
白い腕はカカシが少し力を入れれば、簡単に折れてしまうだろう。
同じ年頃のくの一と比べてみても、サクラは随分と華奢な手足をしている。
頼りなげな体躯は、彼女の存在そのものを象徴しているようで、カカシは不安になった。「中忍試験が始まる前に、もうちょっと何とかしとかないと・・・」
汗ばんだ額に唇を落とすと、サクラは小さく身じろぎした。
無意識に自分の方へと体を寄せてきたサクラに、カカシは口元を緩める。
「また明日な」
掛け布団をかぶり、カカシはサクラの背中に腕を回す。
時刻は丁度、深夜の2時。
明日の任務の集合時間を考えると、4時間は眠れそうだった。
「あれ、カカシさん。また会いましたね」
軽快なその声に振り返ると、イルカといのが買い物袋を片手に立っていた。
最近、この二人と縁があるのかなぁと思いつつ、カカシは「こんにちは」と挨拶をする。「デートですか?」
冗談のつもりで言ったカカシだったが、根が真面目なイルカは驚くほど素直な反応を返してくる。
「ち、ち、違いますよ!!花屋で買い物をしたら、いのが付いてきただけで」
「そうでしたっけ?」
そらとぼけるいのに、イルカの顔は真っ赤になった。
「カ、カカシさんはここで何を?」
「あれ、買おうと思いまして」
カカシは道端で店を出している屋台を指差す。鰻の幟を出したその屋台からは、炭火で鰻を焼く香ばしい匂いがしてくる。
天然の鰻に拘っている店で、味は良いがかなり高価だと評判の屋台だ。
給料日前、懐の寂しいイルカは少しだけ羨望の混じる目でカカシを見る。「今夜は鰻ですか。豪勢ですねぇ」
「値段はピンからキリまで揃ってますけどね。精の付くものを食べさせれば、サクラもちょっとは変わるかと思って」
「え!?」
驚きの声と共に、イルカは目を見開く。
「う、鰻を買うって、サクラの食べる分なんですか」
「はい」
上擦った声に、カカシはにっこりと笑って答えた。
言葉の通り、カカシはイルカ達に別れを告げると、真っ直ぐに屋台へと向かう。
「カカシさん、ナルトのところにも野菜持ってちょくちょく行ってるんだ。本当にいい人だよな。同じ教師として、尊敬するよ!」
「・・・・・」
きらきらと瞳を輝かせるイルカを、いのは妙に冷めた目で見詰める。
ナルトとサクラでは、下心があるという点でかなり意味合いが違うのではないかと思ったいのだったが、やはり黙っていた。「私、イルカ先生のそういう純粋なところ、好きです・・・」
あとがき??
カカシ先生とサクラは恋人ではなく、ただ仲の良い教師と生徒なのですが、そこんところ微妙ですね。
そのうち交際が始まりますが、もうちょっと先の話。