トレーニング 1


木ノ葉隠れの里に新たにオープンしたショッピングセンター、『セルバンテス』。
豊富な品揃えに加え、『激安!!』の宣伝文句につられた人々が、連日、多数押し掛けている。

その日、イルカは体力トレーニングのための器具を購入するため、初めて『セルバンテス』を訪れた。
いろいろな商品以外にも、休憩所や子供の遊び場があり、さらには温泉まで完備されている。
アカデミーが丸ごと入りそうな敷地の広さと、一日いても飽きない店の造りに、イルカは我知らず感嘆の声を漏らした。
「これは、凄いなぁ・・・・」
センター内の地図を見たまま、イルカはその場で立ちつくす。
目的の物が売っている場所は何とか確認したが、通路を埋め尽くす人の波を見ただけで、どうにも気圧されてしまう。

 

「イルカ先生―!」

腕組みをしたイルカが悩んでいると、明るい呼び掛けと一緒に、背中に抱きついてきた者がいた。
声と気配で何となく察したが、イルカは後ろを振り向きながら、確認するように訊ねる。
「いのか?」
「久しぶりねー」
イルカの胴に手を回したいのは、にこにこ顔でイルカを見上げていた。

 

 

「まさか、お前がダンベル買いに来てるとはなぁ」
「ダイエットのためよ。うち、通販で買ったものとかも、いろいろ揃ってるの。今度先生、見に来たら?」

丁度、同じ売り場に用のあったイルカといのは肩を並べて歩いていた。
いの何度もこの店を訪れているらしく、地図を見ずとも、すいすいと迷路のような道を進んでいく。
『セルバンテス』初心者のイルカにとって、非常に有り難い案内人だった。

そして10分ほどでたどり着いた、ウエイトトレーニングの器具売り場。
偶然にも、イルカはここで再び知る辺の顔を見ることになった。

 

 

 

「あれ、珍しい組み合わせですね」
しゃがみ込み、下の棚の器材を物色していたカカシは、見知った顔に軽く目を見張る。
「いや、たまたま入口で会ったんですよ。カカシさんこそ、ディスカウントショップにいるなんて、意外です」
「本当ねー」
イルカの言葉に、隣にいるいのも賛同した。
上忍が桁外れの給料をもらっていることもあるが、どこか浮世離れしたこの上忍が普通に買い物をしている図が不思議に見える。

「やだなぁ。俺だって買い物するときは安い方がいいですよぉ」
カカシは片手を頭の後ろにやり、照れ笑いをした。
足下にある買い物カゴには、買う予定とおぼしきトレーニング器具が入っている。
だけれど、それらはカカシが使うにしては、随分と軽量サイズに見えた。

 

「これ、カカシさんのですか?」
「いや、サクラのです」
立ち上がったカカシは、小さく伸びをして答える。
「サクラ、持久力がないもんでいっつも俺より先に寝ちゃうんですよ。だから、もう少し体力つけてもらおうと思って」
「はぁ」
「肉がついたら嫌だって言うんですけど、もう強制的ですね」
ハハハッと笑うと、カカシは床に置いていた買い物カゴを手に取った。

「じゃあ、お先に失礼します」
「はい。お気を付けて」
軽やかな足取りで立ち去るカカシを、イルカは会釈をして見送った。

 

「夜中まで生徒の修行に付き合ってるなんて、カカシさん、生徒思いの先生だなぁ。見習わなきゃ」
「・・・・」
絶対違う、と思ったいのだったが、さすがに口にするのは憚られる。
だから、イルカに対する主観を述べるだけで、細かい訂正をするのは止めておいた。

「私、イルカ先生のそういう純粋なところ、好きです・・・」


あとがき??
セルバンテスはドン・キホーテの作者ですね。
いや、うちの近所にディスカウントショップ『ドン・キホーテ』が出来たもので。
別に暗くないが、下なネタの気がするのでこの部屋に置きます。
カカシ先生による夜中の特訓のせいで、サクラはかなりの床上手。
底なし体力のカカシ先生に連日付き合ってたら、サクラ、倒れちゃうかもね。
嫌な。
イルカ&いののコンビも、なかなかいいな。ボケ&つっこみ??

いとこがダンベル買いに『ドン・キホーテ』に行ったと聞いただけで、こんな話作っちゃったよ。
暫くカカサク書かない予定だったのに。
まゆさんの素敵
SSを見た影響か。
妙な続きまで書いた。冒頭から、アレなんですが・・・。トレーニングの成果は。


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