忍びのオンナ 6
久しぶりに見る実家は随分と建て増しをされ、サクラは最初自分の家だと気付かずに通り過ぎてしまったほどだ。
「な、な、何これーー!!?」
豪奢な作りの門の前に立ち、サクラは悲鳴じみた声をあげる。
玄関のチャイムを鳴らすと、両親がにこにこ顔で飛び出してきた。
「ちょっとお父さん、富くじでも当たったの!!」
「何言ってるんだよ。お前のおかげだよ」
「私――?」
「そうそう。サクラが任務に行ってからずっと、お城の方からいろいろな品が送られてくるようになってね。いつの間にか家が御殿みたいになっちゃったのよ」父親に続いて、母親も興奮の面持ちで語り出す。
内装のすっかり変わった部屋に、サクラはびっくりのし通しだった。「若様ったら、いつの間に・・・・」
サクラは喜びというより、驚きの方が大きい。
ただ、自分の両親のことをちゃんと考えてくれていたことだけは、嬉しいと思った。
「サクラ、おかえりなさいーー」
サクラが帰郷してすぐに家にやってきたのは、幼なじみのいのだ。
どこからかサクラがいることを聞きつけた彼女は、大急ぎで駆けつけたらしい。
「ただいま」
自分に飛び付いてきたいのを、サクラはぎゅうっと抱きしめる。
変わらない幼馴染の姿に、何となくほっとした。
居間に通されたいのは、サクラの城での生活を根ほり葉ほり聞きまくった。
毎日どんなことをするか、城はどんな様子なのか、若様の人柄はどうなのか、etc.
サクラは自分の見たままを話し、いのは羨ましそうに彼女を見つめた。「いいなぁ。そんなに優遇されてるんだ。若様がいい人で、良かったねー」
「ん、そうねぇ・・・」
思わず目線をそらして答えたサクラの真意には、いのはもちろん気付かない。
若様はいい人はいい人だが、大変面倒がかかる人でもあるのだ。
共に忍者学校では優秀だったいのとサクラ。
イルカがサクラを選んだ理由が、いのより5mmほど胸囲が小さかったからだと知っても、彼女は同じ事を言っていたかどうか。
「あ、そうそう。同期のみんなにもサクラのこと知らせておいたから。明日はサクラの凱旋パーティーよ」
「えー」
「もちろん、サスケくんにも声をかけたからね!」
「・・・よく彼が承知したわね」
「だって、強制参加だもの」
怪訝な表情のサクラに、いのはからからと笑う。
サスケは忍者学校で一番人気だった男子で、二人の憧れの人だった。
クールな彼がそうした集まりに参加するとは、どうもサクラには信じられない。「サスケくん、ますますいい男になったわよー、ほら!」
いのは隠し撮りした写真の一枚をサクラに自慢げに見せる。
確かに、僅か一年の間に彼はますます男振りが上がり、一層女性を引き付ける容姿になった。
だけれど、不思議なことにどんなに写真を眺めても、サクラの胸に以前のようなときめきはない。
ただ、懐かしく思う気持ちがあるだけだ。「有難う」
「もういいの?」
「うん」
いのに写真を返すと、サクラは壁にかかっている時計を見上げた。
「どうかした」
「うん、そろそろ若様の昼食の時間だなぁって思って。あの人好き嫌い多いから、献立考えるのも大変なのよ」言いながら、サクラは思わず笑ってしまった。
せっかく里に帰ってきたというのに、先ほどからずっとカカシのことばかり考えている。
朝はきちんと起きれているだろうか、ご飯は残さず食べているだろうか、また仕事をさぼっていないだろうか。
城で過ごすうちに、カカシを中心に物事を考えるようになってしまった。
ここに帰るまで随分とカカシにごねられたが、寂しいのは彼の方だけでなかったのだと、サクラは城を離れて初めて気付いた気がした。
「そういえば、帰ってくる前に、手紙で体調崩したってあったけど、もう大丈夫なの?」
「ああ、うん。ちょっとだるいだけだったし、ただの風邪だったのかも」
「でもちゃんと診てもらった方がいいわよ。幸い、うちにはツナデ様っていう名医がいるんだし」
「うーん・・・・」
「ほら。明日のパーティーで倒れたら大変だし、ただの風邪なら風邪で理由が分かれば安心でしょ」立ち上がったいのは尻込みするサクラの腕を引く。
今まで病気知らずで、元気の塊のようなサクラなだけに、手紙を貰った当初から気になっていたのだ。
いのが帰ったあとはのんびりと昼寝でもしようと思っていたサクラだったが、自分の身を案じていることが分かるだけに、どうにも拒めそうになかった。
「おめでただね」
ツナデの第一声に、サクラの目は点になった。
「・・・・は??」
「子供が出来たんだよ。はい、万歳―」
「ば、万歳―」
万歳をするツナデに釣られてつい両手を上げてしまったサクラは、はたと気付く。「そ、それどころじゃないじゃないですか!!」
「それどころじゃないねぇ」
「あの、私、まだ13なんですけど」
「13歳でも12歳でも、やることやって生理がきてたら普通はできるもんなんだよ」ツナデが頭の後ろで手を組んで後方へ体重をかけると、医務室の椅子はぎしぎしと軋んだ音をたてた。
「で、どうすんの」
「・・・・どうしましょう」
未だショックの抜けきらないサクラは、呆然とした表情で応える。
「始末するんだったら、早い方がいいよ。あんたのためにも、子供のためにも」くのいちの専門医は、抑揚の無い声で言う。
子供について決めるのはあくまで本人で、その父親や関係を持った経緯についてはあまり感心はないようだった。
あとがき??
13歳で母親ってどうなのよ、と思いましたが、『カルバニア物語』主人公の一人、タニアの母は13歳で結婚して14歳で子供を生んでるから大丈夫かなぁと。
私が書くカカシ先生って、99%が情けない系なのですが、筆者がこういう男の人が好みというわけではないです。
別に身分違いの恋とかがテーマではないので、ほのぼののまま終わると思います。うん。
・・・・本当か!!?
っていうか、こんな話だったんだなぁ。行き当たりばったりで書いているもので、全体像がちっとも見えてこない。
伏線なんて皆無だし。どっかで物語が破綻していそうです。