きらきら星 @
サクラは天にも上る心持ちでその道を駆けていた。
彼女がアカデミーにいた頃からずっと片思いをしていた相手、サスケが初めてまともにサクラの誘いに応じたのだ。
来週の日曜に、今一番話題になっている映画を一緒に観に行く。
彼は煩く付きまとうサクラを追い払いたいという気持ちから、承諾しただけかもしれない。
それでも、サクラにとっては十分夢心地な出来事だった。
サクラが向かっているのは、今まで自分にいろいろとアドバイスをしてくれた、元担任の家だ。
「カカシ先生、いるー!?」
ドンドンと扉を叩くと、中の住人はすぐに姿を見せた。
いやに眠そうな様子で目を擦っている。「サクラ、何だよこんな朝早くに・・・」
「もう11時よ!それより聞いて」
「何」
「サスケくんが、私と映画を観に行ってくれるって!!デートよ、デート」
興奮の面持ちで語ったサクラは、目を輝かせて映画のチケットをカカシに見せる。サクラは当然、カカシも自分と同じように喜んでくれるものと思った。
今まで散々心配事を相談し、どんな愚痴でも優しく聞いてくれたカカシなのだ。
だけれど、カカシの反応はサクラが思った以上に薄かった。「それは良かったね」
そっけなく言ったカカシだったが、サクラは寝起きのせいなのだろうと軽く考える。
「お茶くらいなら入れるけど、寄ってく?」
「うん」
扉を大きく開けたカカシに、サクラはいつものように気軽に玄関をくぐる。
自分の目の前を通り過ぎ、靴を脱ぐサクラを見つめたカカシはそのまま扉から顔を出して周囲を見回した。
ちょうど人通りの少ない時間帯なのか、カカシの視界に入る範囲内に人影はない。
「先生?」
サクラの呼びかけが聞こえると、カカシはすぐに玄関の扉を閉めた。
「何やってるのよ。お茶、入れてくれるんでしょ」
「うん。座って待っててよ」
扉に鍵をかけたカカシは、サクラのいる場所までのんびりと歩いてくる。「日本茶、紅茶、コーヒー、どれがいい?」
「紅茶!」
「分かった」
カカシが頷くと、サクラは自分のお気に入りのクッションにあるソファーへと歩き出す。
そして、数メートル先で、何かに気づいたように立ち止まった。「手土産持ってくるの、忘れちゃった!先生に一番に知らせようと思って走ってきたから」
「別にいいよ。サクラがこの前持ってきたクッキーがあるし」
「そう」
サクラがにっこりと微笑むと、カカシもつられて笑顔を浮かべる
その顔に、先ほどまでの眠たげな気配はもうどこにも無かった。
「カカシ先生は、お付き合いしている人とかいないの?」
茶をすすったサクラは、心底不思議そうに訪ねる。
思えば、カカシと二人で会うときはいつもサクラばかりが話していて、カカシはあまり喋らない。
彼のプライベートは相変わらず謎なままだ。
家に招かれても、恋人の匂いのするものは一切なかった。
上手く隠しているのか、本当に相手がいないのか。「もし片思いしてる人がいるんなら、私が相談にのるわよ」
「本当?」
「うん。断然協力しちゃう」
笑いながら訊ねるカカシに、サクラはしっかりと頷く。
カカシのためというより、好奇心からでた発言だった。
カカシが想いよ寄せる女性がいるのなら、一体、どんな人物なのか。
サクラにはまるで想像が出来ない。
「どんな女の人なの?」
テーブルの菓子に手を伸ばしながら訊ねたサクラは、ふいに、視界が歪むのを感じた。
とっさに額に手を置き瞬きを繰り返したが、上手く焦点が合わない。「・・・あれ」
近くにあったティーカップをテーブルに倒したサクラは、そのまま傍らのカカシにもたれ掛かる。
一人では、もうソファーに座っていることも出来ない。
突然の眩暈の理由が分からず、混乱するサクラをカカシは抱え上げた。「せん・・・せい・・?」
「ごめんね、不味いもん飲ませて。2、3時間もすれば意識がはっきりとするから」
朦朧となる意識の中で、サクラはカカシが耳元で囁いた言葉を反芻する。
それでも、まだ状況を把握出来ない。
「サスケとのデートの話なんて、俺の前でするからいけないんだよ」
あとがき??
ええと、@は“暗い部屋”に掲載しますが、Aからは“浦の部屋”に移動です。
紙様からのリクエストが・ サスケに片思い中のサクラ
・ その恋は報われない
・ カカシ先生がサクラを束縛
・ 18禁
・ バッドエンドというものでしたので、この部屋ではちょっと無理と判断。
何気にこの話の元ネタは、2年くらい前に考えた駄文です。(長野の温泉で)
あまりにどす暗く、救いのない内容に書くことを断念したブツ。
それをリクに沿ってちょいと改良。暗さは変わらないけれど。
死人も出ますよ。あの人が・・・・。
もともと大人向け駄文は書くのが超苦手なので、どうなるか分かりません。(無責任)