砂の城 3


カカシが長い間想いを寄せていた幼なじみのさくらと結婚したのは、二人がまだ学生のときだった。
成績優秀で明るい性格のさくらは誰からも好かれ、ライバルは多い。
付き合いだした当初は、いつ彼女が心変わりをするかと、気が気ではなかった。
だから、彼女の妊娠が分かったときに、カカシは天の助けだと感じた。

早々に籍を入れ、二人は共に暮らし始める。
カカシは大学教授の助手の仕事に就き、さくらは主婦業に専念。
順風満帆な人生だと、カカシはあの瞬間まで信じて疑わなかった。

 

 

「どうだ?」
明るい調子で電話に出たさくらに、カカシは一言だけ声を発する。
毎日の習慣となっている妻へのラブコールだが、この日は仕事が忙しく、いつもより電話を掛ける時間が遅れていた。
「うん、順調よ。早くあなたとの子供の顔が見たいわ」
返答を聞き相好を崩したカカシだったが、続く彼女の言葉に表情は凍り付いた。
「夫は私達のことに全然気づいていないから、大丈夫」

さくらはカカシからの電話を、誰かと勘違いをしていた。
衝撃のあまり何も考えられず、家にとって返したカカシはそれからのことをよく覚えていない。
我に返ったときには、玄関に血まみれの妻が横たわっている。
真っ赤になった自分の両手と包丁を見るまで、カカシは誰がこの状況を作り出したのかも分からなかった。

 

 

 

「お前の母親はひどい奴だった。俺を愛していると言いながら、他の男の子供を孕んでいたんだ。死んだのも当然の報いだろ」

カカシに組み敷かれたサクラは泣き叫んで抵抗したが、大人の腕力にはまるで敵わない。
服を引き裂かれ、体の隅々まで嬲られる。
時間が経つにつれ声の力を弱まらせたサクラは、最後には泣くことも出来なくなった。
腫れた瞼で自分を見上げるサクラの姿にも、カカシに罪悪感は全くない。
逆に、体を揺すられたサクラが苦痛のうめき声をあげれば、さらにひどいことをしたくなる。
これは復讐なのだから当然だ。

偶然助かった憎い不義の子供を育てたのは、警察に怪しまれないため。
そして、もう一度人生をやり直すためだ。
他の人間に奪われないよう、行動をしっかりと監視すれば同じ轍は踏まない。
さくらと幸せな家庭を築く夢は、その娘を使って実現させればいい。

 

死んだ母の罪は、その子供へと引き継がれる。
自分を裏切った償いは一生掛けてしてもらうつもりだった。

 

 

 

「サクラ、この頃付き合い悪いわよー」
昼休みになり、いつものように机を合わせたいのは不満げに訴える。
「門限が5時なんだもの。出かけるときは、決まった時間に連絡入れないと駄目だし」
「えー、今までそんなに厳しくなかったじゃないの」
「大人になったからでしょ」
いのが何を言っても、サクラは取り付く島もない。
取り出した菓子パンを食べ始めたサクラに、いのはちらりと周りを窺ってから訊ねる。
「それに、どうしてお付き合いを断ったのよ。彼、女子の間で人気ナンバーワンよ。手紙もらったときサクラも嬉しそうにしてたじゃない」
「・・・うん。でも、何だかそういう気にならなくて」

頭に血が上れば、何をするか分からない人だ。
自分以外の人間に被害が及ばないよう、サクラはなるべく親しい友人を作らないようにしている。
だけれど、何も知らないいのは急に素っ気なくなったサクラの態度が不思議でならない。

 

「そういえば、お弁当作るのやめたのね」
「一人分、作るの面倒だし。あの人は他の子達からいくらでも貰えるからいいのよ」
サクラの使った“あの人”という表現に、いのは首を傾げる。
「お父さんでしょ?」
「知らない男の人」


あとがき??
何だかんだ言いつつ、藤原作品をパロっているあたり、まだ好きなんだな。
カカサクでやろうと思ったのがそもそもの間違い、か。(汗)


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