Private Laughter


「あの・・・、カカシ先生」
「んー、何?」
「歩きにくいから、放してもいい?」
自分の手元を見たサクラは、ひどく言いづらそうに訊ねた。
彼女の掌はカカシがしっかりと握っている。
任務地に向かい、山道を歩いている最中の今は非常に邪魔だ。

「駄目駄目ーー、サクラ、昨日まで風邪で寝込んでただろ。また倒れたら大変だし、そばから離れないように、ね」
「・・・うん」
うまく言いくるめられたサクラだったが、面白くないのは後方にいる二人だ。
手を繋ぎ、サクラに楽しげに話しかけているカカシを睨むように見ている。
今に始まったことではなく、近頃どうもカカシは紅一点のサクラを贔屓に扱っていた。
それが生徒に対する愛情以上のものだというのは、意味もなくサクラに触りたがる彼を見ていれば分かる。

 

「道はこっちじゃないのか?」
山道の端にある標識に目を留めたサスケは、前を歩くカカシへと声をかける。
彼らが向かっているのは、山の中腹にあるキャンプ場だ。
シーズン前のバンガローや自炊場等の掃除が今回の7班の任務。
道標の通りならば、キャンプ場は右に曲がる小道を行くのだがカカシはそのまま歩き続けている。

「おい」
呼び掛けてもまだ、サクラとの会話に夢中になっているカカシにサスケは表情を険しくした。
「馬鹿上忍!」
声と同時にクナイを投げたのは、上忍の実力を分かっていたからだ。
だから、サスケが怒ったのは攻撃を避けられたことが理由ではない。
「男の嫉妬は見苦しいよ、サスケくん」
振り向いて笑った、カカシのその言葉だった。

 

 

 

「あーあ、始まっちゃったーー」
二人の忍術による応酬を見つめ、ナルトはのんびりとした口調で呟く。
「ナルト、止めてよ!」
「無駄だってば。二人とも頭に血が上ってるし、俺、怪我したくないし」
「もう!!」
サクラは諍いの場を白樺の林に移したカカシ達を追って駆け出した。

喧嘩の原因はカカシがサスケの声を無視したという些細なこと。
仲裁者がいれば、すぐに収めることが出来るとサクラは思った。
一人残されたナルトは状況を楽しむように、遠巻きに彼らの様子を眺めている。

 

「やめて!!」
サクラが両手を広げ、カカシを背にかばうように立ちはだかったのはサスケが火遁の術を使おうとした直前だった。
咎めるような眼差しに、怯んだサスケの隙をカカシは見逃さない。
サスケの背後に立ったカカシは、ゲームの終了を示すように、彼の頭に手を置いた。

「先に管理人さんのところに挨拶に行こうと思って真っ直ぐ歩いていたんだ。こっちは俺達が行くから、お前ら先にキャンプ場に向かっておけ」
「はーい」
騒ぎの収拾を察し、いつの間にか近くまで来ていたナルトは、元気良く返事をする。
そして、サスケを手招きしてキャンプ場への道を指差した。
「行くぞ、サスケ」
カカシが再びサクラの手を取ると、彼女はサスケの方を見て申し訳なさそうに頭を下げた。
「ごめんね」

 

 

ナルトと肩を並べながら、振り向いたサクラの顔と謝罪の言葉がサスケの頭の中でリフレインしている。
何故、サクラが謝るのか。
喧嘩をしたのは、カカシとサスケだというのに。

「サスケさー、不思議だと思わなかった?」
歩みを進めながら、ナルトは傍らを見て訊ねる。
「カカシ先生は上忍で、サスケは下忍。常識的に考えて、忍術合戦になれば怪我をするのはサスケの方だ。でも、サクラちゃんはサスケじゃなくてカカシ先生の前に立った」
途切れた言葉の続きは、思案する時間を促すように、十分に間を取ってから発せられる。
「どうしてだろう」
首を傾け、くすりと笑ってみせるナルトはまるでいつもと別人のようだった。

 

 

 

「・・・はぁ・・っ」
草むらの中で横になったサクラは、苦しげな呼吸を繰り返している。
邪魔なナルト達の姿が見えなくなるなり、カカシとサクラはどちらからともなく互いを求め合った。
服を脱ぐことも億劫で、サクラの下着は足首にまとわりついたままだ。
糸を引くほど熱のこもる口づけを終えたサクラは、濡れた口元を拭いながら不安げに訊ねる。

「誰か、来たらどうする」
「こんな山の中に人なんていないよ。サクラが寝付いたせいで、ずっとご無沙汰だったし」
「んっ・・・」
胸元の肌を軽く吸われたサクラは、少しだけ身を固くする。
「な、何でナルト達に黙ってるの?私達のこと」
「サクラの王子様の動揺ぶりを見るのが、面白いから」
楽しげな笑い声を耳にして、サクラはきょとんとした顔つきになった。
「誰?」

サクラの問い掛けを無視したカカシは、再び彼女と唇を合わせる。
以後サクラの口から漏れるのは艶めかしい嬌声だけになり、睦み合いに相応しくない場所であることも、この日の任務のことも、頭から消えてしまった。


あとがき??
カカシ先生はサクラのことなんかちっとも好きじゃなくて飽きたらポイ捨て、もしくはサスケのことが好きで反応を見るためにサクラに手を出しているとかいう設定だったら物凄く素敵だなぁと思いましたが、うちのカカシ先生はサクラのことが大好きというのが大前提なので(師弟愛、男女愛と様々だが)たぶんそういうことはないんだろうと考えている次第です。
カカサクにサスケが絡む話はあらゆる意味で苦手です・・・。サスケが辛い。(涙)
サスケが怒ったのは無視されたからじゃないんですが、そこに気づかないところがサクラらしいというか、天使のようだとか、カカシ先生羨ましいとか。

ナルトの別人ぶりは当サイトをご利用の方はすでにご理解頂いているものとして書いています。
うちの最強キャラですので。ラブリーvな見かけとは裏腹に、7班のリーサル・ウェポンのナルチョ。(^_^:)好き。
今回もナルトのおかげで何とか書き上げることができました。困った時はナルトを登場させると筆が進む。有難う、有難う。

カカサク←サス
サクラはカカシ先生と付き合っているのに、それを知らないでサスケが嫉妬
カカシ先生とサスケが忍術合戦
以上が、桃さんからのリク内容です。クリアしていますでしょうか。


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