彼氏彼女の事情 2


「あれー、サクラちゃんは」
「保健室」
「またー?」
弁当の菓子パンを食べるナルトは、もぐもぐと口を動かしながら眉を寄せる。
「カカシ先生にお弁当届けに行って、一緒に食べるんだって」
「本当、仲良いよね」
箸を口につけたいのは、ナルトの言葉に頷いた。
部活動もしないサクラは、暇さえあれば保健室に入り浸っている。

「両親がいないみたいだし、たった二人きりの兄妹だとしょうがないのかなぁ」
「大丈夫。サクラちゃんは俺が幸せにするから!」
いのの呟きに、ナルトは胸を張って応える。
正確にはサクラの両親は遠方に暮らしているのだが、その事実を二人は知らない。

 

 

 

 

「あっ・・はん・・・・」
必死に唇を噛みしめるサクラだったが、声はどうしても漏れてしまう。
眉を寄せるサクラを見下ろしたカカシは、汗で額に張り付いたサクラの髪を手で払う。
「戸締まりはしっかりしてあるし、校長に内緒で防音完備にしたから、平気だよ」
「ん・・・、でもっ」
苦しげにあえいだサクラは、そのままカカシの背に腕を回した。

束の間の逢瀬を惜しむように睦み合う。
廊下を通る足音や校庭から聞こえる生徒の声は遠くなり、ベッドの軋む音と荒い息づかいだけが二人の世界だ。
4階の廊下の隅にある保健室は、外から覗こうにも死角にある。
昼休みのたびの求めるカカシに難色を示していたサクラも、今では通常あり得ない場所での行為に妙な胸の高まりを覚えていた。

 

 

「夜、すればいいんじゃないの」
「夜は夜。昼は昼―」
備え付けのパイフ椅子に座り、煙草を吸うカカシは横になったままのサクラに笑顔を向ける。
「それに、サクラってはお子さまだから9時にはおねむじゃん。昨日だって、俺が本を読んでる間に寝ちゃったし」
「・・・どうせお子さまよ」
「サクラが卒業するまでは、ここでもお楽しみってことで」
頬を膨らませるサクラの額に、カカシはキスをする。
頭をなでるカカシの手が優しかったから、サクラにはもう口答えは出来ない。

「でも、先生、午後一で人が来たらどうするの」
ベッドから起きあがったサクラは、顔をしかめながら訊ねた。
声が漏れないよう締め切っていたせいで二人の汗の匂いが色濃く残り、ベッドのシーツもしわくちゃで汚れている。
何をしていたか、一目でばれてしまう。
「平気だよ、滅多に人は寄りつかないし」
「・・・・先生が追い出してるの間違いじゃないの」
立ち上がったサクラは、空気の入れ換えのつもりで窓を開ける。

まだ頭をぼんやりとさせていたサクラは、すっかり失念していた。
スカートはかろうじて腰についているが、セーラー服の上部や下着類は足元に脱ぎ散らかしてある。
そうしてサクラは、丁度一階の渡り廊下を歩いていた生徒の一人と目があった。

 

 

「どうした、サスケ」
「・・・・裸の女が保健室で手を振ってる」
「え!!!」
サスケの一言に、廊下を歩いていた彼のクラスメートは一斉に上を向いた。
だが、保健室の窓は閉められてあり、人影ひとつない。
そしてサスケの言葉はあまりに非現実的すぎる。

「寝ぼけてたんじゃないのかー?」
「欲求不満かよ」
サスケの背中を叩くと、男子生徒はどっと沸く。
見間違いなどではない。
だけれど、必死に言い訳をするのも馬鹿らしかったサスケは、それ以上蒸し返すことはしなかった。

 

 

 

「まずかったかなぁ・・・・」
昼休みが終わり、教室へと戻ってきたサクラは机に突っ伏して悶々と考えている。
夫婦であることがばれるのは構わないが、昼休みの情事が知られれば問題になるかもしれない。
転校などと言われたら、カカシと一緒にいる時間が短くなってしまう。

「いのちゃん、いのちゃん」
近くの席の友達と話していたいのを呼び寄せると、サクラは真面目な表情で彼女の顔を覗き込んだ。
「黒髪の超美少年、どこのクラスか知らない?同じ学年だと思うんだけど」
「サスケくんね」
サクラのあやふやな質問に、いのは即答する。
「何、サクラってばサスケくん狙いなの?競争率高いわよ」
「だろうね・・・」
あまりに可愛い顔をしていたから、サクラも思わず手を振ってしまったのだ。
自分があられもない格好をしていることを忘れて。

 

「あ、噂をすれば」
いのが指を指した扉の陰に黒髪の少年を見付けたサクラは、そのまま立ち上がった。
彼目がけて走り出したサクラに、いのは思わず口笛を吹きそうになる。
「サクラってば、意外と大胆なのねー」
サクラのあとを追って廊下に出たいのは、その光景を見るなり笑顔を凍り付かせた。
サスケを呼び止めたサクラが、振り向いた彼に抱きついてキスをしている。

「口止め料」
ごく至近距離で彼の瞳を見つめ、サクラはにっこりと笑った。
突然現れた女子生徒に唇を奪われたサスケは、ただただ唖然としている。
それは廊下を通り過ぎる生徒達にしても同じだ。
「じゃーねー」
動揺する周囲の空気を察することなく、明るく微笑んだサクラは意気揚々と教室に戻っていく。
自分の行動が、別の意味で騒動の種になるとは、思ってもいなかった。


あとがき??
何も考えないで入力しているもので、全体的に何が起きているのかよく分かりません。楽しかったけど。
サスケも出てくるとは思わなかったなぁ。
ナルトやサスケを惑わし(←無意識)、実はカカシ先生一筋のサクラ。
罪な女よ・・・・。


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