夢から醒めた夢 T


ここは神護の森。
木の種類や、地形からそう判断した。
迷い犬や猫を捜しに、よく7班で来る場所だ。

じゃあ、この手は?
私の首を絞めているこの手は誰の手?

地面に転がった石が背中に当たって痛い。
太陽はほぼ真上。
逆光で相手の顔がよく見えない。
意識は半ばとんでしまっている。
相手は大人だ。
大きな手は私の力ではびくともしない。

完全に意識が途絶えると思ったその時、頬に冷たい感覚。
ぱたぱたと、水滴が落ちてくる。

これは涙?
どうして泣いているの?

聴こえてきた謝罪の声。
それでようやく相手の名が知れた。

 

「サクラが遅刻なんて珍しいよね」
カカシが隣に歩くサクラに声をかける。
「ごめんなさい。二度寝しちゃって。最初起きたら5時だったから、もう少し眠れると思ったのが間違いだったわ。それより先生が時間どおりにくる方が珍しいんじゃないの」
サクラはばつが悪そうな顔でカカシを見上げる。
「昨夜急な任務が入ってね。実は寝てないんだ」
「ええ!大丈夫なの」
「上忍は一日二日寝なくても大丈夫なんだよ」
気づかうサクラに、カカシは笑顔で答える。
その割にはいっつも寝坊してくるじゃないのよ、という内なるサクラの言葉を彼女はなんとかのみこんだ。
もうなにを言ってもカカシの遅刻癖がなおらないことをサクラも承知している。
それならば言わぬが花というやつだ。

ナルトとサスケは相変わらずギャ−ギャ−と言い争いをしながら前方を歩いている。
それを目で確認しながら、サクラは口を開いた。

「先生さ、私のこと殺したいとか思った事ある?」
「――――・・・・」

唐突な質問に、カカシは暫しあっけにとられる。
サクラはカカシの表情を観察するようにじっと見上げている。
「なんでそんなこと言うの」
「今日、夢に見たのよ」

サクラはみた夢の内容を大まかに説明した。
「ふーん。それが俺だったんだ」
「そうなの。あんまりリアルだったから、目が覚めても暫くこれが現実って思えなくて。しかも、今日の任務を聞いてまた驚いちゃった」
今、7班は向かっている先は神護の森。
いつもの迷い犬捜しだ。
よくある任務とはいえ、今朝見た夢が夢なだけに、サクラはなにか奇異なものを感じていた。

「でも、そんなことあるわけないものね」
そういって、サクラは笑顔でカカシの腕にしがみついた。
サクラにとってカカシは先生であり、上司。
カカシに守られることはあっても、彼が自分を傷つけようとするなど到底考えられない。
だからサクラは無言のカカシにたいして不信がることはなかった。

「それで」
「え?」
「夢の中でサクラはどうなったの。俺に殺されちゃったの」
「ああ。それが」

「サクラちゃーん」
サクラがカカシの言葉に返答しようとした時、ナルトがサクラに呼ぶ声が聞こえた。
「なによ」
サクラはカカシの腕をパッと離し、ナルト達のところへと駆けて行く。
傍まで来たサクラに気づかれないよう、ナルトがカカシにあっかんべーをしている。
サクラに特に用事があったわけではなく、彼女がカカシと仲良さそうに腕を組んでいたのが気に入らなかっただけのようだ。
ナルトの姿にカカシは思わず苦笑する。

カカシがサクラの質問に即答できなかった理由も、サクラがカカシに触れたとき彼が見せた暗い表情も、サクラには全く与り知らぬことだった。

 

明け方にみた夢は現実になると言ったのは誰?


あとがき?
長くなりそうだから切る。
というか、書きたいところはすでに書いた。(笑)どうするよ、つづきー。
神護の森は、言わずと知れた、SO2から〜。


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