転校生(エピローグ)


無事、二人の体が元に戻った翌日。
サクラは休日を利用してカカシの家に細々とした荷物を取りに行く。
衣類等はすぐに持って帰ったが、一週間以上生活していたせいで、いろいろと物が増えていた。

 

 

「サクラ、何か今までと違ったこととか、ない?」
「えー、別に順調よ。手足は普通に動くし」
床にまとめてある本や雑誌を詰め込んでいたサクラは、後ろに立つカカシを仰ぎ見た。
「そういえば、女の子が妙に可愛く見えるかなぁ。先生の体にいたせいで、男の人の視点になっちゃう」
「それはまずいね」
「あとね、ここに来る途中で赤毛の二枚目に話しかけられた。私のこと知っている感じだったから話を合わせておいたけど、先生の知り合い?」
「あー、それは気にしない、気にしない。今度見かけたら逃げていいよ。あいつ連続婦女暴行犯だから」
「・・・・そんな風には見えなかったわよ」
サクラは全く信じていないようで、忙しく手を動かしている。
そうしてボストンバッグのチャックを閉め、立ち上がろうとしたサクラは背中にくっついてきたカカシに顔をしかめた。

「・・・何やってるのよ」
「せっかく戻れたんだし、記念にもう一度お互いの体できちんと親睦を深めようと思って」
「冗談じゃないわよ。もう帰る!」
「一回やったら、何度やっても同じだって。減るもんじゃないし」
「減るの!!」
サクラは右手でカカシの体を押しのけようとしたが、逆に手首を掴まれて体の向きを変えさせられた。
床に倒れ込み、万歳をしたような状態のサクラは笑顔のカカシをあきれ果てた表情で見つめる。

 

「先生さー、外にどれくらい女の人がいるの」
「え」
「歩いていると、いろんな美人に声を掛けられたの。今度、いつ来るのかって」
「ハハハ・・・・」
苦笑したカカシはサクラの頬、唇、首筋へとキスをしていく。
くすぐったそうに眉を寄せたサクラだったが力の差は歴然で、無意味な抵抗はしなかった。

「先生、美人の彼女沢山いるじゃない。そっちとこういうことすればいいんじゃないの」
「あー、でもさ、俺もサクラの体にいた影響か、サクラのことが一番可愛く見えるんだよねぇ」
「んっ・・・」
上着を脱がされ、胸元を軽く吸われたサクラは小さく声をもらす。
下着の隙間から進入してくる指に思わず足を閉じかけたが、カカシの体が邪魔でそれは出来なかった。

「・・・・先生、他の女の人と全部手を切ってくれる」
「えー?」
「出来ないなら、今すぐこの手を離してくれないと舌噛んで死にます」
「・・・」
手を止めたカカシは、自分を見据えるサクラと視線を合わせる。
サクラは口元を綻ばせるが目はけして笑っていない。
彼女の肌は柔らかで暖かいのに、抜き身の刃に触れているような感覚だった。
こんな顔で凄まれたら、新米上忍が参ってしまうのも分かるような気がする。

 

「私、女たらしって大嫌いなの」
「だから先生も嫌い」というサクラの言葉は、唇で塞がれた。
舌を絡ませられ、口からは飲み下せない唾液が端から伝っていく。
息苦しさを感じて顔を背けようとしても、顎を掴まれていては意味がない。
涙目になったサクラが必死にカカシを叩くと、ようやく苦しみから解放された。

「先生っ・・・」
荒い呼吸のサクラに睨まれ、カカシは笑顔で応える。
「大丈夫。屍姦する趣味はないよ」

 

 

 

沢山の魅力的な美女複数と、ただの下忍でやせぎすの少女一人。
当然、サクラは前者を選ぶと思っていた。
だからカカシが本当に全ての女性と別れたと言っても、到底信じられない。
いや、認めたくなかった。

 

 

「サクラーvこんばんはーー」
深夜、蒲団に入ったばかりだったサクラは、その声に目を開けた。
窓を叩く音は空耳ではない。
体を起こし、サクラはげんなりとした表情で窓の鍵を開ける。
「・・・先生、また来たの」
正式にお付き合いをするようになってからというもの、カカシは毎夜のようにサクラの家を訪れていた。
もちろん、やることをやるために。

「お母さんが変に思っているのよ。私が急にベッドのシーツを自分で洗うようになったから」
「ふーん。じゃあ、サクラがうちに住めばいいんじゃないの」
「嫌!」
サクラは強く言い返す。
別々に暮らしている今でさえこうも頻繁なことなのだ。
いつでも身近にいるようになったら、どうなるか分からない。

 

「先生、滅多に顔を合わせない人を含めたら、何人くらいの女の人と親しくしていたのよ。実際の話」
「よく分からない。数えたことないし」
「・・・・・」
「サクラが別れろって言ったから、ちゃんとみんなにさよなら言ってきたよ。安心してv」
あっけらかんと答えるカカシに、人格が入れ替わった際に声をかけてきた女性は氷山の一角に過ぎなかったのだとサクラは悟る。
そして、そうした彼女達の分の負担が全て自分に回ってきたのだ。
全員とは言わない。
半分の女と手を切れと言えば良かったのだと分かっても、もう遅かった。
嬉々とした顔で自分を抱きしめているカカシに、サクラは引きつった声で訊ねる。

「先生、前言撤回してもいい?」


あとがき??
先生、元気ですね。
(感想、終わり)

あんまりカカサクっぽくなかったので、最後で爆発しました。
何でタイトルが『転校生』なのかは、尾美としのりと小林聡美で検索してください。昔の映画作品が見つかります。
これ、サスケとサクラバージョンもあるのですよ。もちろん、カカサクと違って健全な内容で!
書くかは未定です。


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