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サクラ先生とカカシくん 4


「カカシくん、起きて!」
「・・・・今日、日曜だよ」
耳元で怒鳴るサクラの声を気にせず、カカシは掛け布団を頭までかぶり寝返りを打つ。
日曜で仕事がないのは確かだが、時間はすでに正午に近い。
カカシが起きるのを待って食事をしようと思ったために、サクラの腹の虫は先ほどから鳴りっぱなしだ。
それに今からではブランチではなくただのランチになってしまう。

「ご飯はとっくに出来てるわよーー!!!起きてーーー!!」
「んー・・・・」
必死になるサクラとまだ半分夢の世界にいるカカシは掛け布団の引っ張り合いをしている。
何をしても起きないカカシに堪忍袋の緒が切れたサクラは、冷ややかな声音で最期の切り札を出した。
「サクモさんのところに、行っちゃおうかな」

効果は覿面だ。
飛び起きたカカシは、ふてくされた表情でサクラを見据える。
「・・・嫌な冗談」
「冗談だって分かっていればいいじゃないの」
苦笑いをするサクラは身を乗り出して彼の唇にキスをする。
任務中は教師と生徒の間柄だが、こうして二人きりでいるときは甘い時を過ごす恋人同士だ。
「おはよう」

 

 

 

虚ろな眼差しで婚姻届を提出にきたサクラの様子を職員が不審に思わなければ、彼女は戸籍上、カカシの母親となっていた。
慌てて役所に駆けつけたカカシが確認するとまだ書類は受理されておらず、間一髪で最悪な事態は免れたのだ。
そうでなければ、今、カカシはこうしてのんびりとサクラの家で寝泊まりなどしていない。

 

 

「ごめんー、ご飯の前にちょっとシャワー浴びてきていいー?」
「早くね」
欠伸をしつつ脱衣所へと向かうカカシにサクラが声をかける。
今からパンをトースターに入れれば、丁度焼き上がるころに出てくるだろうか。
ミルクパンに牛乳を入れようとしていたサクラは、チャイムの音を聞いて紙パックを机の上に置く。
「はーい、どちら様ーー?」
玄関の扉付近に付けられた監視カメラの映像へと目をやり、サクラはその姿勢のまま顔を引きつらせた。
カメラに手を振って佇む男女二人組は、どう見てもサクラの両親だ。
仕事が忙しく滅多に実家に帰っていないため、抜き打ちで様子を見に来たのだろう。

「ど、ど、どうしよう・・・・」
カカシは今シャワー中で、両親はすでに玄関の前で、とにかく生徒に手を出して半同棲生活をしているなど彼らに言えない。
何らかの理由を付けて帰ってもらう以外に、方法はなかった。
「なんだ、いるんじゃないの」
「何で出てこないんだ」
「キャーーー!!」
サクラが玄関に向かう前に扉を開けて入ってきた両親に、彼女は思わず悲鳴をあげる。
「な、な、何で!!」
「あら、合い鍵くらい作ってあるわよー」
うふふっと笑って鍵を見せる母親が何とも憎らしい。

「・・・誰か、来ているのか?」
テーブルにある二人分の料理を見つけたサクラの父が鋭く問いかけた。
「あ、あ、あの」
「お友達?それとも・・・」
「それは、その、えーと」
とたんにしどろもどろになったサクラだったが、タイミングの悪いことに、洗ったばかりの髪をタオルで拭きながらカカシがパンツ一枚を履いた姿でやってくる。
「あれ、どちら様ーー??」
怪訝な顔をしたカカシと両親が見つめ合う中、間に挟まれたサクラはこの場から消えてしまいたい心境だった。

 

 

「そうか、そんな事情でこの子の面倒を見ていたのか」
「サクラも立派な教師になったのねぇ・・・・」
茶をすするサクラの父と母はしみじみと呟いた。
唯一の家族である父の不在中に火事で家を焼け出され、行く当てのないカカシをサクラが僅かな期間引き取った、という設定を二人は何の疑いもなく信じてくれたようだ。
少々胸が痛いが、12の少年を恋人にしている事実がばれるよりはいい。
カカシはサクラの作り話に付き合いながらも、面白くない顔つきをしている。
年上のサクラと付き合っているためか、彼は子供扱いをされることを何より嫌うのだ。

「生徒さんと暮らしているようじゃ、恋人は今のところいないのよね」
母親の思いがけない問いかけに、サクラは危うく茶を吹き出すところだった。
「え、な、何の話よ」
「ジャーーン、これ、あなたのお見合い相手の写真よーー!嬉しいでしょう?」
重そうに持っていた風呂敷鼓をテーブルに置き、写真の山を作ったサクラの母親は満面の笑みを浮かべて訊ねる。
しかし、サクラは唖然としてすぐに答えることが出来なかった。
もちろん彼女は両親に結婚相手を探して欲しいと言った覚えはなく、さらには傍らに座るカカシの視線が突き刺さるように痛い。

 

「ま、ま、ママ、私、お見合いなんて、そんな・・・・」
「あなたの従姉のミーちゃんには先週女の子が産まれたのよー。もー可愛くて、羨ましくて。私達も早く孫が抱きたいって話になったのよね」
「うむ」
浮かれた母の言葉に、父もしっかりと頷いている。
しかし、彼らの望みのために勝手に見合い話を進められてもサクラは困るのだ。
「パパ、ママ、私、今はまだ仕事に集中したいのよ。それに、私・・・・」
「誰か、いい人がいるのか?」
間髪入れずに問われたサクラは、何とも言えずに口をつぐんでしまった。
ずっと一緒にいたいと思える大事な人はいるが、今はまだ紹介出来ず、かといって見合いもしたくはない。
無言のままのサクラに、両親は肯定の意味だと解釈したようだ。

「そうか、それなら私達も無理強いはしたくない。だから、サクラの恋人に是非会わせてくれ」
「ええ!!!?」
「それが良いわ!!どんな人か楽しみねー」
究極にポジティブ思考で行動的なサクラの両親は、彼女の意思など関係なく日時と場所を決めてしまう。
彼ならもう、目の前にいるんです。
そう言えたらどんなに良いか、ひっそりと涙を流すサクラの思いなど父と母が知るはずもなかった。


あとがき??
おかしいな・・・・前に考えたストーリーのまま書いているのに、微妙に長くなっている。


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