風邪にはルル3錠


カカシが風邪で寝込んで5日になる。
一人暮らしで病になったときの辛さを、同じ境遇であるナルトとサスケはよく知っていた。
何より、担当である上忍がいつまでも休んでいれば、下忍達も任務が滞ってしまう。
そうしたわけで、様子を見に行こうというナルトの誘いを、サスケは渋々了承したのだった。

 

 

「サクラは?」
「電話したけど、昨日からどこか友達の家に泊りがけで遊びに行っているんだって」
半分ずつ金を出し合い、購入した花を持って二人はカカシの家へと向かう。
まだ独り身のカカシは上忍専用の宿舎で生活をしていた。
階段を上り彼の家のすぐ手前まで来たとき、チャイムを鳴らす前に唐突に扉が開かれる。
驚いて目を丸くしたナルトとサスケだが、中から出てきたのは当然住人であるカカシだ。
さして表情を変えず二人を見下ろしているところをみると、いち早く気配を察して出てきたのだろう。

「せ、先生、大丈夫なの?」
「ああ、明日から通常通り任務に就く予定だよ。それ、俺に?」
「あっ、うん」
花束を差し出すと、カカシはにっこりと笑って目の前にいる二人の頭を撫でる。
「有り難うな」
思ったより顔色の良いカカシを見てホッとしたナルトだったが、サスケの表情は険しい。
扉の隙間から覗く、ある物を凝視していたからだ。

「・・・・ナルト、帰るぞ」
「えっ、おい、サスケ!」
強引に自分の手を引いて歩き出したサスケに、ナルトは大きな声で呼びかけた。
だが、彼は足を止めることなく、まっすぐ階段に向かっている。
振り返るとカカシが笑顔で手を振っているのが見え、久しぶりに顔を合わせたのだからナルトとしてはもう少し話をしたかった。

 

「なんだよー、せっかく来たのに!」
「先客だ」
「えっ?」
「玄関に女の靴が見えた」
「・・・・・ああ」
ようやく合点のいったナルトの腕を放すと、サスケはしかめ面のまま前方を見据える。
結婚はまだでも、カカシの年齢なら恋人の一人や二人、いてもおかしくない。
おそらくカカシの看病のために訪れた女性があの家にいたのだ。

「なんだー、それならどんな人か見たかったのに。先生って面食いなのかな」
「・・・・」
頭の後ろで手を組み、脳天気に話すナルトを横目で見たサスケは小さく舌打ちをしている。
先ほどから、サスケの言動が妙に刺々しかった。
「何だよ、さっきから眉間に皺寄せて・・・・」
カカシの家につくまでは、機嫌がいいとはいえないが、普通だったはずだ。
思案するナルトは頭に浮かんだ一つの仮説に、小さく手を打ち鳴らす。

「分かった!お前、カカシ先生のこと好きだったから、彼女がいてショックだったんだろー、図星だーー」
「この、ウスラトンカチ!!!」
からかい混じりの声に即座に反応したサスケは、怒りに顔を赤くしてナルトを殴り倒した。
認めたくないが、ナルトの言葉は半分は当たっている。
だが、ショックだったのはカカシに恋人がいたからではなく、その相手が彼のよく知る人物だったからだ。

 

 

「ナルト達、帰ったの?」
扉の閉まる音を確認して布団から顔を出したサクラは、戻ってきたカカシを上目遣いに見やる。
彼は家にたった一つしかない花瓶に花を生けていた。
「ん、これを持ってきてくれたよ。二人一緒なんて、少しは仲良くなったのかねぇー?」
「それなら、嬉しいけど」
思わず二人が笑顔で肩を組む姿を想像し、サクラはくすくすと笑い声をたてた。
仲良くして欲しいが、なんとなく似合わない。
「さ、邪魔者は帰ったし、続きをしようか」
「えっ、ちょっと待ってよ、せんせ・・・・」
何か言いかけたものの、頬に手を添えたカカシに口を塞がれ、言葉を呑み込んでしまう。
準備万端で看病に来たというのに、昨日からベッドに拘束されているのは病人のカカシではなくサクラの方だ。
トイレと風呂に行った以外は、全くこの場所から動いていなかった。

「ねー、先生、明日から仕事でしょう。無理したらまた倒れちゃうんじゃないの?」
胸元にあるカカシの頭に手を置いたサクラは、呆れ声で問いかける。
「ずっと寝込んでいたから、サクラ欠乏症だったんだもん」

 

 

 

翌朝、カカシは前日の言葉の通りすっかり元気になった姿で集合場所へとやってきた。
奇跡的に1時間という軽い遅刻ですんだのだが、下忍の数が一人足りない。
7班の中で一番時間に正確なはずのサクラだ。

「先生、サクラちゃんが来ないってばよー」
「ああ、いいの。お母さんから電話があって、風邪をひいたんだって」
「ええ、本当!!」
「熱が39度出たって話だよ。任務は無理だから休むってさ」
「大丈夫かなぁ・・・・」
俯いたナルトは心配そうに呟いたが、傍らにいるサスケはカカシの顔を鋭く睨んでいる。
サクラの風邪が誰にうつされたのかは明白だ。
だが、自分達の前ではただの教師と生徒であるかのように振舞っているのが、どうしても気に食わない。

「おいサスケ、今日、帰りにサクラちゃんの家に寄ってみるか」
「ぜってー、いかねー!!」
能天気なナルトが今日だけは羨ましく思えたサスケだった。


あとがき??
拍手のおまけ
SS用に書いていたのですが、ヤバイ気がしたので、こっちに回す。
・・・・ラブラブなカカサクって、久しぶりに書いたような。(注:ここはカカサクサイトです)
いろんな意味でダウンしました。坊ちゃん、可哀相に・・・。ごめんよ!!(涙)


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