囚われの身の上
任務報告の帰り、通行門に向かうカカシの前にいのと名乗る少女が現れた。
「サクラに何をしたのよ!」
憎しみのこもった目でカカシを睨みつける。
自分にそんな視線を向けるなんて、なんて恐れ知らずの下忍だろう。
殺しちゃうぞ。
あながち冗談と思えないことを考えながら、カカシは薄い笑みを浮かべる。「何で俺が君にそんなこと言われなきゃならないわけ」
「サクラの友達だからよ。心配して当然でしょ」
「へー」
カカシはニヤニヤ笑いのまま、いのを見つめる。
自分の言葉を全く真剣に聞いていないその態度に癇癪を起こしたいのは、カカシに喚き散らした。
「ちょっと、あんた人の話聞いてるの!」
「聞いてるけどー、ちょっと遅かったね」
カカシは口元に手を当てて含み笑いをもらす。
「サクラはもう俺の女なんだよ」
その言葉に含まれている意味に気付いたのだろう。
大きく目を見開いたいのに、カカシは心底可笑しそうに笑った。
声を失ったいのは震えながらカカシを睨んでいる。「いの!?」
険悪な空気が流れる中、背後からかけられた声にいのが驚いて振り返る。
そこには、なかなか出てこないカカシを迎えに来たのであろう、サクラの姿があった。
「何でいのがカカシ先生といるの」
サクラは訝しげにカカシといのを交互に見る。カカシはサクラに歩み寄ると、先ほどからいのに見せていたものとは違う、暖かい笑みを向けた。
「なーに心配してるの。待っててくれたんだろ。行こう」
カカシはまるでいのを眼中に入れずに、サクラを引っ張って歩き出す。
サクラは何か言いたげな視線をいのに向けたが、すぐにカカシの歩幅に合わせて歩き始めた。
残されたいのは二人に声をかけることができず、その場に長い間立ち尽くしていた。
「カカシ先生ってば」
「もー、まだその話?本当にいのって子とは偶然あそこで会っただけなんだって」
サクラはカカシの家についた後も、まだ不信な顔をしている。
いのが背を向ける場所から現れたサクラには、いのとカカシが談笑していたように見えたらしい。
「そんなことよりさ、サクラ今日は泊まっていくんだろ」
表情を曇らせると、サクラはカカシから視線をそらした。
「駄目。最近友達のところに泊まるって言い訳ばかりしてるから、お母さんも変に思ってるし」
「・・・・ふーん」
前回も同じような言い訳で断られたカカシの表情は剣呑なものを含んでいた。近頃サクラの様子が頓におかしい。
カカシの身辺の事を詳しく訊いたり、今までにカカシが担当していた生徒は何人いるのか訊いたり、今日もいのとカカシがどんな会話をしていたのかしつこく訊こうとする。
質問だらけだ。
カカシにはその理由が全く分からない。
サクラにかけた暗示が解けているようにも見えないから、更に不信感がつのる。「別にいいけど。泊まらなくてもできるしね」
カカシがサクラに触れようとすると、サクラはその手を激しく拒絶した。
「嫌!」
その乱暴な声音に、カカシは驚いて手を引く。
「・・・もう帰る」
小さく呟くと、サクラは荷物を片手にソファから立ち上がろうと腰を浮かす。
だが、それを阻むように伸ばされたカカシの手によって、その場に押し倒された。「このまま帰すと思ってるの」
カカシはわざと冷淡な声を出す。
「サクラは悪い生徒だね」
カカシの言葉に、サクラの顔が悲しげに歪んだ。「もうカカシ先生とこういうことするの嫌なの!」
叫ぶようにして言うと、サクラはカカシの手から逃れようと懸命になる。
クナイに伸びるサクラの手を易々と止めながら、カカシは思案顔でサクラを見下ろした。
最初にサクラを抱いたときですらここまでの抵抗はなかった。
ならば、ここ最近のサクラの変化は一体何なのか。
疑問に思いながらも、カカシはサクラを掴む手の力を少しも緩めなかった。
「サークラ。もう目は覚めてるんだろう。ここんところ様子がおかしい理由教えてよ」
サクラは肩を振るわせると、静かに泣き始めた。
寝室に響く泣き声に、カカシは頭をかきながら嘆息する。
ベッドサイドには脱ぎ散らかした二人の衣服が散らばっていた。
いや、サクラの服は裂けてもう着られないのだから、服ではなくただの布きれと化している。カカシが自らの頬に触れると、そこからは血が流れ出していた。
他にも、サクラに噛みつかれたあとや引っかき傷が、カカシの身体のそこかしこに残っている。
サクラの必死の抵抗の表れだったが、カカシにしてみれば猫に噛まれた程度にしか感じない。
逆に催淫剤のよう効果すら与えた。
今までで一番乱暴に扱ったからサクラは暫らくの間は動けないはずだ。
「サクラの家には任務が長引いて今夜は帰れないってちゃんと連絡入れといたから。だから泣いてないでわけ話してよ」
カカシは泣き続けるサクラの肩をつかみ、無理に振り向かせる。
「サクラ!」
そしてもう一度強く名前を呼ぶ。
サクラはゆっくりと半身を起こすと、瞳に涙を浮かべたまま大きな声を張り上げた。「カカシ先生が好きなの!!」
「・・・・」
数秒後、首を傾けたカカシは間の抜けた声を出す。
「エ??」
突然の告白にカカシはただ唖然とするのみだ。
サクラは泣きながら言葉を続けた。
「カカシ先生が好きだから、先生が生徒として私を可愛がってくれるのが嫌だったの。中忍試験に受かって進級して、カカシ先生の生徒じゃなくなったらちゃんと告白しようと思ってたのよ」あまりに予想外な展開に、さすがの上忍も開いた口がふさがらなかった。
交友関係を訊いたのも、受け持ちの生徒を訊いたのも、いのとの仲を疑ったのも、嫉妬が原因。
これではわざわざ暗示をかけてまでサクラを手に入れた意味がない。
いや、暗示が逆効果になってサクラを苦しめてしまっていた。
大体サクラが自分を振り向いてくれたときのことなど想像もしていなかったカカシは、どういう反応をすればいいのか分からない。「えーと・・・」
自分に恨みがましい視線を向けるサクラに、赤くした頬をかきながらカカシは困惑気味に返事をかえした。
「俺もずっとサクラが好きでした」
あとがき??
結局最後はラブラブです。
あーもー耐えられないー!ラブラブー!!もう二人とも好きにしてくれ。
カカシ先生結構鈍いっすね。
多くの事を望まないで生きてきた彼は、人に好かれるということに慣れていないのかもしれない。毎度のことながら、大事な部分を省いて申し訳ない。(−_−;)
書かないではなく、書けないのですよ。うーん。
きっとこれから書く話も全部こんな感じ。期待しないように。