サクラ1/2 @
サクラはナルトがアカデミーに入学してすぐに一目惚れし、何年もかけて口説き落とした恋人だった。
ナルトが彼女のことを他の誰よりも大切にしているのは周知のことだ。
そのサクラから、ある日突然別れ話を切り出されたナルトはそのまま気を失いそうになる。
職場にかかってきた電話で、しかも第三者を通して言われても、到底信じられることではない。「あんた、誰なんだよ」
「・・・・」
ナルトの疑問に答えることなく、電話は一方的に切られる。
サクラが、もうナルトとは会いたくないと言っていると、電話の相手に伝えられた。
聞いたことのない、若い男の声だ。
その男が新しい恋人で、サクラが彼に電話するよう頼んだのだろうか。
それにしたって、直に会って話さないことには納得できるはずがない。「なんの電話だったんだー??」
上忍専用控え室でくつろぐ同僚が、携帯電話を握り締めたまま立ち尽くすナルトに声を掛けてくる。
彼との会話の合間にかかってきた電話だったのだが、もはやナルトの頭はサクラでいっぱいだ。
「親父が危篤だから、すぐ帰って来いって・・・・・」
「えっ、そりゃ大変だ!!仕事なんていいから早く帰ってやれよ。俺が片付けておくから」
「悪い」
彼に午後行うはずだった任務の詳細が書かれた書類を渡すと、ナルトは荷物を持って部屋から駆け出していった。
心配そうにその後姿を見守る同僚が、ふと我に返ったのは、随分と時間が経ってからだ。
「・・・・あいつ、天涯孤独だったはずじゃあ」
今日、サクラは綱手に頼まれた任務のために里の外に出かけている。
帰る時間は聞いていなかったが、綱手に訊ねればどこに行ったか正確な場所を教えてもらえるはずだ。
一刻も早く、サクラに会って事情を説明してもらわないことには、ナルトは何も手に付かない。
電話を切って暫く経った今も胸が張り裂けそうに痛いのだ。
サクラを失う可能性など、ほんの少しでも考えたくなかった。
「ばーちゃん、いるか!!!!!」
ヤクザの出入りさながらに、ナルトは火影の執務室の扉を乱暴に開け放した。
傍らにシズネが控え、なにやら分厚い書物に目を通していた綱手はナルトを一目見るなり頭を抱える。
「この忙しいときに、やっかいな奴が来た・・・・」
「サクラちゃんはどこ!!!?」
ずかずかと綱手に歩み寄ると、彼女の顔を真正面に見据えて訊ねる。
睨むような眼差しになったのは彼女に対して怒りを感じているせいではなく、精神的に余裕がないためだ。
「サクラなら、もうこの部屋にいるだろう」
「何言って・・・・」眉をひそめたナルトがふと綱手から視線をそらすと、部屋の隅に見慣れぬ男が立っていた。
桃色の髪に緑の瞳、ナルトと同じ年頃のその男は、怯えたようにナルトのことを見つめている。
目鼻立ちの整った顔つきは、男前といっていい。
知らないはずなのに、知っているような、変な感覚だった。
「・・・サクラ・・・・ちゃん?」
自然とナルトの口をついて出た言葉に反応し、彼の瞳に動揺が走る。
確かに、そうだ。
頭はまだ混乱しているが、サクラならばナルトはどんな姿になっても分かる。「さっきの電話、サクラちゃんがかけたものだったの?」
「・・・そう」
「何で、男の姿なんかに変化してるのさ」
「変化の術なんかじゃないんだよ。それは呪いさ」
話しにくそうに俯いたサクラに代わり、綱手がその質問に答える。
その日綱手がサクラに与えた任務は、国境の森のある場所に生えている薬草を摘んでくることだった。
泉の近くに自生するその薬草は特殊なもので、人の手によって栽培することが出来ないものだ。
しかし、その泉にはある恐ろしい呪いがかかっており、けして水に触れてはいけないというのが里で絶対の掟だったらしい。
「でも、近寄ってきた栗鼠に気を取られて・・・・・」
「落っこちたんだってさ、よりにもよってその泉に」
泣きそうな顔で呟くサクラに続いて綱手が補足する。
どういった仕組みなのか、泉から這い出たサクラの体は男性のものに変っていた。
変化の術で元の女の姿に戻ることは出来るがそれは所詮まやかしで、チャクラが足りなくなればまた男になってしまう。
帰って来たサクラに事情を聞いた綱手は、可愛い弟子のためにさっそく対処法を調べ始めたが、なかなか難しい。
昔、その泉で若い男が溺れて死んで以来、水に触れた者は皆男の姿になるという言い伝えは古文書に載っていたが、どうすれば呪いが解けるかまでは書いていなかった。「こんなんじゃ、ナルトと一緒にいることなんて出来ないもの。いつ戻れるか分からないし、男が男と付き合ってるなんて、変よ」
「サクラちゃん・・・・」
サクラが自分に電話をしてきた経緯を知ったナルトは、唇を強く噛み締めたあと、再び強い眼差しで彼女を見つめた。
「方法はきっとあるよ!!俺も一緒にさがす」
「・・・・ナルト」
「俺、こんなことでサクラちゃんを嫌いになったりしないってばよ!ずっとずっと、サクラちゃんのこと好きだったんだから」
サクラに歩み寄ると、彼女の手を握ったナルトは力強い口調で言う。
もちろん、男と交際する趣味はないが相手がサクラならば別だ。
体はともかく、中身は女性。
ナルトの初恋の人であるサクラには違いなかった。
しっかりと頷いてみせるナルトに、瞳を潤ませるサクラは感極まって飛びついてくる。
いつもと違い、硬い体つきだったがその温もりと香りは確実にサクラのものだ。「ナルトくん、偉い!」
「感動したよー」
拍手するシズネと綱手に目をやりながら、ナルトは腕の中にいるサクラの背中に手を添える。
「ばーちゃんってば、さぼってないで早く古文書でも何でも調べてよ」
「はいはい、分かってるよ」
ぐすぐすと鼻水をすするサクラを窺い、やっぱり抱き締めるのは女の子の方がいいなぁと思ったことは絶対に言えないナルトだった。
あとがき??
突然ですが、エロが書きたかったんです、ホモでエロが。
ナルト愛が高まりすぎて、どっか違うところに曲がっていったらしいです。
でも、やってるだけの話は嫌だったので、設定考えたら前置きだけで終わっちゃったよーーーー。(涙)
受け受けしいナルトを書きたかったんですが、基本的に頭が男女カップリング思考なので、相手はいつもどおりサクラちゃん。
しかし、男キャラを女体化している創作はあっても、女キャラを男体化しているのはあまり見ないですね。
タイトルはサクラ二分の一と読んでくださいね。もちろん、元ネタは高橋先生の名作、らんまですよ。
Aを書く前にホモナルへの情熱が薄れたら続きはないです。
エロはなくして普通にホモでラブラブになる可能性も有り。相手はサクラだけど。