サクラ1/2 A


「ナルトさん、これ、次の任務に必要な資料。コピー用意してきました!」
「ああ・・・・・」
受け取った資料をパラパラとめくり確認したナルトは、部下のくノ一を見上げてにっこりと微笑む。
「有難う」
「いいえ」
頬を赤らめた彼女からナルトはすぐに視線をそらした。
ナルトよりいくらか年下の彼女は日ごろから仕事をてきぱきとこなし、よく仕えてくれている。
青味がかった金髪に緑の瞳が印象的な、すらりとした体つきの美少女だ。
同僚の男達にデートに誘われ、彼女が断っているところをナルトは何度も見かけている。
その訳も十分すぎるほどナルトは承知していた。

「お前さー、不感症?」
「何が」
「あの子の気持ち、分かってやれよなー。その資料だって昨日寝ずに準備していたんだぞ。どっか、食事でも連れて行ってやれよ」
「・・・・・」
ナルトの隣の席に座り、不満をぶつける同僚は彼女に言い寄ってふられた男の一人だ。
ナルトとて、彼女のことは可愛いと思うし、好きだと思う。
あれほど素直に好意を向けられ、悪い気がする男がいるはずがない。
正直、応えてあげたいと心が動くこともある。

「・・・・部下なんだから、当然の仕事だろ」
「冷たい奴」
資料から目を離さず素っ気なく答えたナルトに、同僚はため息混じりに言った。

 

 

 

昨夜、サクラは綱手と共に徹夜で元の体に戻るための方法を探していたらしい。
手伝いたいと申し出たものの、ナルトに難しい漢字の並ぶ古文書を解読することは無理だ。
不安を抱えたまま通常任務に戻ったのだが、夜にはサクラと会う約束をしている。
週末のたびにナルトの家に泊まっていたサクラは、体が変化しても習慣を変えるつもりはないようだ。

「俺にどーしろってんだよ・・・」
サクラとの待ち合わせ場所に急ぐナルトは、昼間の同僚との会話を思い出し、口を尖らせてぼやく。
ナルトの周りにいるくノ一や元依頼人で、彼に好意を寄せて慕ってくれている少女は何人かいる。
明るく朗らかで、どんな人間ともすぐ親しくなれる特技を持つナルトの交友関係は広いのだ。
その中には、ナルトの恋人であるサクラよりも綺麗だと思える外見の少女も確かにいた。
それでもナルトがぎりぎりのところで踏ん張れるのは、ただ一つの理由のためだ。

ふと思考を中断させ、前方を見据えると、待ち合わせ場所に佇むサクラの姿がある。
どんなときも、時間より十分は早くやってくる几帳面さは昔から変わらない。
口元を綻ばせたナルトは、きょろきょろと周りを窺うサクラの元へと一目散に駆け出していく。
サクラを視界の端に認めただけで安心できて、自然と笑顔になってしまう。
他の人間では絶対に感じられない感覚がそこにあった。
たとえサクラが男の姿なっても、同じように思えたのだから仕方ない。

 

「お待たせーー」
ナルトが走ってくるのを見たサクラは微笑みながら首を横に振った。
「私が早くに来ただけで、遅刻じゃないわよ」
ナルトの傍らに並び、彼の手を握ろうとしたサクラはハッとした様子で距離を取る。
「ごめん・・・」
二人で外を歩くときは手を繋ぐクセがあったのだが、サクラは今、男の姿だ。
このままでナルトとくっつけば往来の人々にあらぬ誤解をされてしまう。
沈んだ顔で俯いたサクラを見て、ナルトはなんとなく悲しい気持ちになってしまった。
サクラが笑うと嬉しくなるが、落ち込んだときなどは、彼まで死にそうになる。

「平気だよ」
両手で、体の脇にあったサクラの掌を握ってみせると、彼女はようやく顔をあげる。
「サクラちゃんが嫌じゃないなら、いつもと一緒で構わないから。変に気を遣わなくていいよ」
「・・・・ナルト」
ナルトの力強い言葉を聞き、サクラは強張っていた顔に柔らかな微笑を浮かべてみせた。
その微笑みを見た瞬間、ナルトの中でいろんな感情がない交ぜになり、サクラと向き合った姿勢で固まってしまう。
可愛い。
午前中に見た、くノ一の微笑みなど全く比べ物にならない。
周りに人目がなかったら、ナルトは確実にサクラを抱き締めてキスをしていたことだろう。
「ナルト?」
「あ、ああ、ごめん。行こうか」

取り繕うように笑ったナルトは、怪訝な表情になったサクラの手を握って歩き出す。
今のサクラはナルトよりやや背が高く、声音も男そのものだ。
それでも、男でも、女でも、サクラならば例外なくナルトは惹かれてしまうらしい。
普段ならば男と手を繋いで歩くなど死んでもご免だが、サクラならばいくらでも歩いていたい。
初めて会ったとき、サクラが本当に男だったとしても、自分は好きになっていたかもしれないさえ思ってしまった。


あとがき??
おかしい・・・・サクラ受けになっている。
書ければ、Bは逆転してナルト受けの予定。
つ、次こそはエロを!そうなったら浦にアップですよ。
今回ナルチョがちょっと他の女の子に目移りしていたりしますが、白のことをサクラより美人と評価していたし、男の子ならそうしたこともあるかと。(笑)
でも、一番好きなのはずっとサクラちゃんなのですよ。


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