ゆうべの秘密 2
「黙ってろって、何をだろう?」
いのの店から出てきたナルトは腕組みをしながら呟いた。
強引に約束させられたが、その意味は全く分かっていないナルトだ。
「これ、どうしようか・・・・」
サクラのための薬を眺めて思案するナルトは、自分の服の裾を引っ張る小さな手に気づく。「ナルト兄ちゃん!」
振り向いた先にいたのは、彼の家の近所に住んでいる子供達だ。
リーダー格の少年は昔の木ノ葉丸に瓜二つの相貌で、よりナルトに懐いている。
「遊んでーー」
「おー、いいぞー。今日は何をするんだ、縄跳びか、鬼ごっこか?」
ナルトは嬉々とした表情で子供達の遊びに加わる。
大人達はナルトの存在を煙たがっているが、子供にそうした事情は分からない。
明るく優しい性格のナルトは子供達の人気者だった。
「お兄ちゃん、大好き」
手繋ぎ鬼をしている最中、傍らにいる少女に告白されたナルトは嬉しそうに微笑んだ。
「うん、俺も大好きだよ」
「じゃあ、大きくなったらお嫁さんにしてくれる?」
「いいよー」
笑顔で答えた直後、ナルトの後頭部に何か硬い物が直撃した。
そのまま倒れたナルトの周りには、驚いた子供達がわらわらと集まってくる。「いってーー!!!誰だ、こんちくしょー!」
「この、浮気者!!」
頭を撫でたナルトが振り向くなり、犯人と思われる人間の怒声が発せられた。
その正体は、肩を怒らせて歩いてくるサクラだ。
「・・・・サクラちゃん?」
「婚約早々、重婚の約束するなんてどういうことよ!」
「へ?」
座り込んだままのナルトは物凄い剣幕のサクラに首を傾げるしかない。
「何なの、これ」
取り敢えず、ナルトは自分に投げつけられた物体を拾って訊ねる。
それは普通道端に転がっているはずのない、鰹節だ。
「結納の品よ」
「結納?」
「結婚するの」
「・・・・・誰が?」
「ナルトと私」
「・・・・・・」
目が点になっているナルトに、話を聞いていた子供の一人が声をかける。
「ナルト兄ちゃん、この人と結婚するの?」
「え、ええええーーーー!!!!」絶叫したナルトはその勢いで立ち上がった。
「ちょ、ちょっと、いつの間にそんな話に」
「今日よ。これが今から役所に提出しに行く婚姻届。あんたの名前書いて判子も押しておいたから。感謝しなさい、感謝」
「あ、有難う」
威圧的に言われたナルトは思わず礼を言ってしまう。
サクラは大きく頷いていたが、鰹節を握り締めるナルトの頭の中はこんがらがったままだった。
「入籍はもうすませたの。披露宴は来月やるから来てね」
「・・・・あんた、やること早いのね」
「こうと決めたらすぐ終わらせないと、気持ちが悪くて嫌なのよ」
開店前のやまなか花店にやってきたサクラは、出来たばかりの招待状をいのに手渡す。
「ナルトの意思の確認はしなくて良かったの?」
「嬉しいに決まってるじゃない。ナルトは私のことが好きなんだから」
「はぁ」
自信満々なサクラに、いのは反論する気も起きない。
だが、この状況を作り出した者として、確認しておかなければならないことが一つある。「ナルトはいいとしても、あんたは?」
「え」
「ナルトのこと好きなの?責任問題は抜きにして、結婚したいと思うの」
思いがけない問い掛けに、サクラは目を瞬かせる。
冷やかしなどではなく、いのの表情は真剣だ。
「・・・えーと、子供達と仲良く遊んでるナルトを見ていたら何だかほのぼのした気持ちになって、彼と結婚した人は絶対幸せになれるだろうなぁと思った。それで、隣りにいるのが自分だったら嬉しいかなって」
考えながらのサクラの返答に、いのはにっこりと笑う。
「そう」
「でもさー、何だか変なのよ」
いのの手伝いをして店先に花を並べながら、サクラは彼女に話しかける。
「昨日、式での手順を決めていて遅くなったからナルトの家に泊まったんだけど、二度目のはずなのにめちゃくちゃ痛かったの。血も沢山出たし」
「ふーん・・・」
「この間とは体の痛い場所が違う気もするし、みんなもこんな感じなの?」
「人によるんじゃない」
踵を返したいのの後ろ姿を見つめ、サクラはまだぶつぶつと繰り返していた。快晴の空の下、商店街の人通りも多くなっている。
稼ぎ時とばかりに袖をまくったいのは、新たな鉢を並べるため店内へと戻っていった。
あとがき??
いのちゃんはわりとナルトのことが好きみたいです。同期の仲間として。
こいつなら、サクラの暴走にも付き合っていけるだろうと踏んだようですね。(笑)
ラジオドラマを聞いていると、どうもサクラが激しい性格のようなので、作中で引きずられています。
少女のナルトへ向ける熱い視線に気づいたサクラは、読唇術で彼らの会話を盗み見ていたようです。結局はラブラブ。
ハッピーエンドということで、お見逃しを・・・。はたけ家にはサクラ似の女の子とカカシ似の男の子、うちは家にはサクラ似の兄弟、うずまき家にはナルト似の男の子、とそれぞれ設定が決まっているのですが、うずまき家の今後を書く予定はありません。
ごめん、ナルトは片思いの話の方が光るキャラクターなのよ。何となく。190000HIT、chika様、有難うございました。