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鬼魔 3


「ええーーー!!!サクラが九尾を攫って里から逃げ出したーー!?」
カカシが素っ頓な声をあげると、手前にいる上忍がしっかりと頷く。
可愛い恋人に会うため、せっせと仕事に励んで帰ってみれば、深夜だというのに妙に里が騒がしい。
しかも、サクラとは行き違いだ。
「あれまあ。せっかく今夜は思う存分イチャイチャできると思ったのにぃー」
まるで緊張感のないその声に、彼と親しい上忍はため息をつく。
「お前、サクラが心配じゃないのか」
「そりゃ心配だよ、うん。嫁さんにしようと思った女の子だし」
場違いなほど明るく微笑んでみせるカカシに、上忍仲間は二の句が継げなくなった。

その、カカシの嫁(予定)のサクラは里の守り神たる九尾の妖狐を連れ出し、逃走したのだ。
ろくに歩くことも出来ない少年を連れているのだから、すぐに捕まるに決まっている。
そうなれば、サクラは刑に処されて殺されるはずだった。
いや、見つけ次第殺害してもいいと命令が下されているのだから、無事に戻ってくるかも疑問だ。

 

「どっちにしろ、サクラは死ぬぞ・・・・」
「そうなれば、俺も後を追って死ぬだけでしょう。でもサクラは意外と根性あるし、何とかなると思うんだよねぇ」
話す合間に、カカシは口寄せの術で忍犬達を呼び出した。
彼らは探索のエキスパートだ。
火影の放った追っ手よりも先に、サクラ達を見つけられる可能性は高い。
「サクラもナルトも俺が無事に連れ戻すから、火影様に命令を撤回するように言っておいてよ」
「ナルト?」
「ああ、九尾の妖狐を飼っている子供の名前みたいよ。サクラが電話で新しい友達が出来たって言っていたんだ。まさか、そんなとんでもないものと仲良くなっていたとはねぇ・・・」
「ちょ、ちょっと待て。本当に大丈夫なのか!?」
踵を返そうとしたカカシの腕を、上忍仲間が掴んで問い質した。

何しろ、ナルトの中にある九尾の妖狐は何がきっかけで暴走するか分からないのだ。
サクラは排除し、ナルトは傷を付けても良いから息のある状態で捕獲するよう、命じられている。
無事に連れ戻すなどと、簡単に言える根拠がない。
「大丈夫だよ。ナルト、随分とサクラに懐いているみたいだし、サクラだって俺が言えば聞くから」
「でも、あれは化け物・・・・」
「人間だよ」
何かを言いかけた上忍仲間を遮り、カカシは正面から彼の顔を見据える。
「俺はさ、元々あの子を地下に閉じこめておくなんて提案は最初から反対していたんだ。もしかしたら、12年も見て見ぬふりをしていた罰が当たったのかもしれない」

 

 

 

 

隙を見て鍵を奪取し、夜の闇に紛れてナルトを牢から連れ出したサクラは早くも窮地に立たされていた。
何しろ、ナルトは外の空気を吸うのは赤子のとき以来だ。
折られた足で満足に立つことも出来ず、ただただ呆然と回りを見回している。
必然的にナルトを背負って逃走することとなったが、小柄とはいえ彼はサクラと同じ年齢だ。
彼を連れて里を守るように生い茂る森を走るのは、体力のないサクラには非常に困難だった。

「どうしよう・・・まだ、いくらも離れていないのに」
途中でへばったサクラはナルトを傍らに座らせ、小川の水で口をすすぐ。
サクラの真似をして水に手を入れたナルトは、その冷たさに驚いてすぐに腕を引っ込めた。
そうした仕草に顔を綻ばせながらも、サクラの胸は今にも不安で押しつぶされそうになっている。
火影にナルトの待遇改善を進言しようとしたが、たかが下忍の言うことと、全く取り次いでもらえなかった。
結局、ナルトの安住の地は木ノ葉隠れの里のどこにもない。
ここにいるかぎりナルトは虐げられ続けるのだと思った瞬間に、サクラは彼を逃がすことを決意していた。

今思うと、カカシが帰ってきてから相談すれば良かったのだ。
頭に血が上りやすく、思いこんだらすぐに実行してしまうのはサクラの悪い癖だった。
彼の顔を思い出すと涙が滲みそうになり、サクラは唇を噛みしめてナルトの髪を触る。
「私が絶対に守ってあげるからね」
川の水に揺らめく満月を眺めていたナルトは、振り向いて柔らかく微笑んだ。
自分の身に何が起きているのかは分からないが、サクラがいればナルトは満足だった。
そのサクラの顔が、ナルトの目の前で、ふいに歪んだ。

 

 

「ようやく見つけた」
「これで手柄は俺達のものだ!」
複数の男の声がしたが、ナルトにはどれも遠くで喋っているように感じられる。
サクラの様子がおかしい。
腹からそれまで無かったものが突き出し、体はゆっくり前方へと倒れ込んだ。
彼女が背後から長刀で刺されて昏倒したのだということは、ナルトには分からない。
サクラに駆け寄ろうとしたが、腕を掴んだ男に上から体を押さえ込まれ、全く身動きが出来なくなった。

「早く縛るんだ!暴れるようなら、耳か鼻をそいで大人しくさせろ」
「この女は、どうしやす?」
「殺せ。こいつの首も持っていけば、褒賞金の額は倍増だ」
返答を聞き、仲間の上忍は彼女の頭を掴んで首筋にクナイを押し当てる。
意識のないサクラは抵抗することもなく、磨かれたクナイには彼女の首から流れた血が幾筋も伝っていった。
闇の中で嗅いだ覚えのある血臭がサクラの方から強くしている。
生暖かいあれが流れ出ると、急に動かなくなることをナルトは何度も見ていて知っていた。
心臓が高鳴り、誰かが自分を呼ぶ声を耳の奥で聞く。

 

手足を拘束しているものとは別の枷が、外れたような音がした。


あとがき??
早く終わらせないと書けなくなるので、急ぎ足でした。
ここで終わってもいいような気がします。続きは、いつか書けたら。
ナルト好き好きオーラが出すぎて、ごめんなさいという気持ち・・・・。


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