弱さなんて見せたくないのに涙は出るばかり。

 

 

ナルトが死んだ。
正確には消息不明だが、ナルトと行動を共にしていた木ノ葉隠れの忍びは全て死亡し、現場には彼の額当てだけが残されていた。
九尾の妖狐をその身に宿していたことを考えると、連れ去られたと考えるのが妥当だろう。
敵の目的も素性も分からなければ、捜しようがない。
そして、非情にもナルト以外の忍びを惨殺した手口を考えると、事件から3ヶ月経った今でも彼が五体満足でいる可能性は低かった。
尾獣を奪われた人間はどれほど優れた能力を持っていたとしても、死を免れることは出来ない。

 

「サクラ、風邪をひくよ」
「・・・・うん」
頷きながらも、サクラはナルトの名前が刻まれた墓から離れようとしない。
葬儀から随分と日が経っていたが、サクラは喪服のままだ。
ナルトを本当の弟のように思っていたサクラにすれば、亡骸すら残らない死はまるで現実感がなかった。
雨の中佇むサクラにカカシは後ろから傘を差し出す。
同じ悲しみを共有する者として、せめて彼女が濡れることがないよう、こうして庇うことしか出来ない。

「ナルトは、生きてるよね、先生・・・・。もう少ししたら、ただいまって、何でもない顔をして帰ってくるよね」
「・・・・ああ」
振り向いたサクラは頬を涙で濡らしたままカカシにしがみついた。
嗚咽を漏らすサクラを抱きしめながら、カカシは強く奥歯を噛みしめる。
今まで何度も仲間の死に居合わせたが、手塩に掛けて育てた生徒が先立つのはそれとはまた違う苦しみだ。
一人ならばきっと立っていられない。
可哀相な生徒を救うつもりだったというのに、腕の中にいる暖かな存在に、支えられているのは自分の方なのだと思った。

 

 

「だいぶ、薄くなってきた・・・、かな」
脱衣所で身につけていた物を全て脱いだサクラは、鏡を見ながら自分の体を確認する。
カカシの家に住むようになって半年が過ぎた。
父から不当な暴力を受けることもなく、ここでの生活は天国のようだ。
このままいけば体中にあった痣も消えるのではないかと思ったとき、サクラは鏡に映った人影にギョッとした。
「なっ・・・・」
悲鳴を上げる隙も与えられず、抱き竦められたサクラは目を丸くする。
相手がカカシだというのはすぐに分かったが、思いのほか力が強く体の自由が全くきかない。
緊張したままカカシの次の行動を待つサクラは、やがて肩を震わせるカカシが泣いていることに気づいた。
「どうしたの、カカシ先生?」
「・・・・菜の国で、クウヤが死んだ」

サクラも電話が鳴ったのは知っていたが、それが彼の訃報を伝えるものだったのだろう。
とっさに何と言えばいいか分からなかったサクラは、カカシの背中に手を回す。
子供をあやす母親のように、彼の体をさすったサクラはカカシが小さく呟いたのを聞いた。
「そばにいてくれ、ずっと・・・」
そのまま唇を寄せてきたカカシを、サクラは拒むことなく受け入れる。
世話になっているからということもあるが、泣いているカカシを慰めるためには必要なことだ。
傷だらけの自分の体でよければ、いくらでも投げ出したい気持ちだった。

 

 

あとがき??
不幸は続くよ、どこまでも。

 

 

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