逃げた先にあった大きな真実
「木ノ葉隠れの内部にスパイがいるとしか、考えられないんだよ・・・」
執務室の椅子に座り、事情をおおまかに説明した綱手は目の下に大きな隈を作っている。
忍びという仕事をしている以上、死は常に身近に存在するものだ。
だが、ナルトの死を皮切りに、木ノ葉隠れの里の死者が常にないほど増加していた。
他国に雇われて仕事をしていた者から、里で普通に生活する者まで、様々だ。
明らかに他殺と分かるものがあれば事故死と思われるものもある。
今はまだ、その死を臥せられている者もある名前のリストを見つめ、カカシは意識が遠のきそうになった。どの名前も、知っている。
カカシのアドレス帳を、そのまま上から塗りつぶして行っているかのように、順番に彼らに不幸が訪れていた。
「それで、お前に内密に調べてもらいた・・・・・カカシ、どうした?」
書類から目を離し、カカシを見上げた綱手は怪訝そうに問いかける。
彼はまるで綱手の声など聞こえていない様子で、きょろきょろと部屋の中を見回していた。
「サクラはどこですか?火影様のところに行くって言って、外に出たんですけど」
「サクラ?」
傍らに立つシズネが首を振るのを見てから、綱手はカカシへと視線を戻す。
「今日は来ていないぞ」
綱手の返答を聞いたカカシは、退室の挨拶をすることも忘れて、執務室を飛び出していた。
亡霊はずっと待っていたのだ。
復讐に適した人間が誕生する、そのときを。
そして、大切な人間を順番に殺していくといった計画を今まさに実行している。
一刻も早くサクラを見つけなければ、彼女の身が危ない。「サクラ!!」
サクラの行きそうな場所を、カカシはその名前を呼びながら必死に捜し回った。
花屋にも、図書館にも、資料室にも、どこにもサクラはいない。
早く彼女の顔を見て安心しなければ気が狂いそうだ。
サクラの笑顔も、肌の温もりも、喋る声も、今では全てがカカシの生きる糧になっている。
何にも換えがたい大切なもの。
だからこそ、カカシに恨みを持つ亡霊にとっては、最も標的にするべき人間だった。
「サクラ・・・」
サクラを見つけられず家に戻ったカカシは、玄関にあるサクラの靴にほっと息を付く。
だが、それは一瞬のことだ。
部屋には荒らされた形跡があり、カカシが帰るとすぐに出てくるはずのサクラが姿を見せない。
心臓が、キリキリと痛み出す。
頭ではそれ以上踏み込むことを拒否していたが、足は血の匂いのする方へと向かって動き出していた。相手に対して相当抵抗したのだろうか。
倒れた本棚の脇で、サクラは座り込んでいる。
瞳孔の開いた瞳は虚空を見つめ、サクラの心臓があった場所は大きな穴が空いていた。
すでに息がなく、何をしても手遅れだということは一目で分かる。
血だまりの中に座る少女はサクラではなく、彼女によく似た等身大の人形のようだった。
あとがき??
すみません。