血途 0.75
(証言その1)「え、サクラ?ナルトと付き合ってるんでしょう」
(証言その2)「夕飯の相談とか、していたわよ」
(証言その3)「いつも一緒に歩いているし」
(証言その4)「サクラ、ナルトの話ばっかりしているよね」
「これがアンケートの結果!どう思う!?」
「・・・・・お前ら、暇なのか」
仕事を終えた帰り道、シカマルの次にサスケを強襲したのはいのだった。
必要以上に人と係わることを避けるサスケにしてみれば、邪魔な存在だ。
適当にあしらって通り過ぎようとしたサスケに、いのはなおもしがみついている。「一度はずみでお泊まりしたからって、サクラが自分のものになったなんて勘違いしないでよねー。あの子、ナルトのことも好きなんだから」
「・・・・」
歩く速度がゆるやかになるサスケに、いのはさらに追い討ちを掛けた。
「サクラ、鈍いから自分で分かっていないけど、ナルトには誰よりも気を許しているのよ。これが恋愛に発展しないはずないわ。サスケくん、ピンチよ、ピンチ」
「・・・・」
段々と猫背になるサスケはついに立ち止まる。
それはいのが体重ごとサスケを押し止めていることが原因ではなかった。
「サクラを見ていて、気付かなかった?」
ナルトの名前を繰り返すサクラ。
サクラが酔っぱらって倒れたあの夜も、どのような夢を見ているのか、ナルトの名前をしきりに呼んでいた。
そして、目覚めて最初に口から出た名前もナルトだ。
サクラは自分のことが好きという認識が常にあるため、彼はそれまで全く懸念していなかった。
サクラの話にナルトがよく登場するのは、他に共通の話題がないせいだとばかり思っていたが、実は違うのかもしれない。
初めて危機感を抱いたサスケに、いのはにやにやとした笑いを浮かべる。「サクラねー、今日はナルトと町でお買い物するって言っていたわよ。ラブラブよねー」
「・・・・どうすればいいんだ」
「もっとちゃんとサクラの言うことを聞いてあげればいいのよ。今日だって、サクラはサスケくんを最初に誘ったんでしょう」
「たいした用事もないのに、女と手を繋いで町をうろつくなんて出来ない」
「はい、それが駄目!!」
いのはびしりとサスケに指を突きつける。「サスケくんってば、いつも自分の我が儘ばかり通して、折れたことないでしょう。“恋”のうちは一方通行でも良いけど“恋愛”は相手に対する思いやりで成立するのよ。どんなに好きでも、ずっと冷たくされていたら気持ちは離れていくんだからね」
「・・・・」
「シカマルの場合はねー、外では面倒くさがりでぐうたらしているけど、二人きりのときは・・・」
「いや、その話は別にいい」
のろけ話を途中で止められたいのはふてくされたが、確かにそれは余談だった。
サスケがいのに恋愛に関するレクチャーを受けていた頃、サクラはある百貨店の前の道をナルトと歩いていた。
にこにこ顔のサクラが持つ袋の中身は、男物の手袋だ。
日頃手袋をせずに、ポケットへ手を入れて歩くサスケへのプレゼントだった。
いろいろと物色しながら立ち寄った店で、その手袋を見付けたサクラは一目で色とデザインを気に入ったのだ。「サスケくん、喜んでくれるかなぁ」
「サクラちゃんからのプレゼントなんだから、嬉しくないはずないよ」
「そう?」
ナルトの言葉に気を良くしたサクラは、さらに顔を綻ばせる。
「次はナルトのも買ってあげるからね」
「俺は、いいよ」
「何でよ・・・・あ、もしかして、ナルトの彼女が気を悪くする?」
心配そうにナルトの顔色を窺うサクラに、彼は思わず苦笑した。「そんなのいないもん」
「そーいえば、あんたってば、浮いた話聞かないわね。誰かいい人いないの?理想が高いんじゃないの?」
「そうかもね。俺の理想の女の子って、ずっとサクラちゃんだもの」
「・・・・・」
見上げると、ナルトは珍しく真顔だった。
視線を前方へと戻したサクラは眉を寄せながら言う。
「もう少し目標低くした方がいいわよ。私みたいに才色兼備ないい女、この世に二人といないもの」軽い冗談のつもりだったのだが、笑い声をあげたナルトにサクラは片手を上げて彼の胸を叩く。
「何よ、笑うところじゃないわよ」
「いやー、サクラちゃんって、本当に可愛いなぁと思って」
「・・・馬鹿にしてるでしょう」
頬を膨らませ顔を背けたサクラは、そのとき初めて通りの向こう側に立つ彼らに気付いた。
人混みの中、電信柱の真横に立つ二人はサクラ達のいる方角をじっと見据えている。
「・・・サスケくんと、いの?何してるのかしら、あんなところで」
「サクラちゃんさ、観覧車はサスケと一緒に乗ってきなよ。俺はもう帰るから」
「ええ!?」
肩に手を置かれたサクラは、仰天して振り返る。
今日ナルトと会ったサクラの目的は買い物だけでなく、クリスマスの時期に限定で設置された巨大観覧車に乗ることだ。
当然なことに、サスケには言下に断られた。
カップルだらけのこの期間、仕方なくナルトを連れ出したというのに、突然帰ると言いだした彼にサクラは動揺を隠せない。「な、何でよ!約束したじゃないの」
「サスケがねー、サクラちゃんと乗りたいって。それなら俺の出番はないでしょう」
「・・・・何、馬鹿なことを」
小さくため息を付くサクラは、首を振りながら説明をし出す。
「一度は断られたのよ。それに、硬派なサスケくんが、あんな女子供の喜ぶ乗り物に乗りたいはずないじゃない」
「でも、サクラちゃんは俺よりもサスケと一緒がいいんだよね」
「まぁ・・・・、それは、そうだけど」
口籠もるサクラの頭を、ナルトは優しく撫でる。
「丁度サスケがあそこにいるんだし、もう一度頼んでみたら?それで駄目なら俺が行くよ」
あとがき??
つ、続く!!!?
究ナルさん、その他一名、web拍手にて続きを読みたいとおっしゃる方がいたので、書けるうちに書いておきました。
でも、終われなかった。(涙)