血途 0.9
「あんた、馬鹿でしょう!」
サスケとサクラの後ろ姿を黙って見守るナルトに、いのは大きな声で言う。
サクラはナルトのことが好きだ。
サスケに対するものとは違うかもしれないが、大切に思っているのは確かだった。
ナルトが真剣に想いを告げれば、サクラも考え始めることだろう。
いのにしてみれば、サスケとナルト、どちらも悪い相手ではない。
むしろ、長い間陰ながらサクラを支えてきたナルトの方が、楽しく付き合うことが出来そうに思えた。「わざわざ私やシカマルに頼んで、サスケくんとサクラの仲を取り持つようなことして。何でなのよ」
「二人には面倒かけちゃったね。今度、何かおごるから」
「答えになっていないわよ」
腕を組みながら怒声を発するいのに、ナルトは困り顔で首を傾ける。
「俺、サスケのこと嫌いじゃないし、サスケのことを好きなサクラちゃんも可愛くて好きなんだもん。しょうがないじゃん」
「・・・・本当にいいの?あの二人がくっついちゃっても。今ならまだつけ込む隙はあるわよ」
「幸せならいいんだよ」
「・・・・」
不満げな表情で口をつぐんだいのに、ナルトは優しく笑いかける。
「それに、これ以上一緒にいたら、手が放せなくなりそうだったから・・・・」
サクラはこの世界に一人しかいない。
サスケとナルト、両方で手を引っ張れば、サクラは悩み苦しむことになるだろう。
彼女がナルトの存在の大きさに気付く前に、先に手を放したのは彼なりの愛情だった。
サクラが笑顔でいること。
ただそれだけが、彼の望みなのだから。「私は・・・・、ナルトといてもサクラは幸せになれたと思うわよ」
いのはナルトを上目遣いに見つめながら呟く。
自分を思ってのその言葉に、ナルトは少しだけ悲しげに笑った。
「有難う」
「観覧車よ、観覧車!あれに乗るのよ!!」
「・・・一度言えば分かる」
サスケは仏頂面で言ったが、サクラはまだ信じられずに自分の頬をつねってみる。
痛かった。
現実なのだと分かったが、サクラにはサスケの突然の心変わりの理由は分からない。
サスケとしても、仲良く談笑するナルトとサクラが恋人同士そのものに見えて、焦ったからだとは言えなかった。
観覧車の前では長い列が出来ていたが、案の定、そこにいるのは若い男女ばかりだ。
何となく落ち着かない様子で周りを見たサクラは、ふと、サスケの手元を見やる。
「そうだ、これ、サスケくんに買ったの。良かったら使って!」
サクラは慌ただしく鞄から取り出した袋をサスケに差し出す。
中から出てきた手袋とそれを眺めるサスケの顔を、サクラは期待に胸を高鳴らせて見つめた。
何しろ、サクラが一目で吸い寄せられるように購入した物なのだ。
ナルトも、嬉しくないはずがないと、言ってくれていた。「・・・・必要ないな」
予想に反し、開口一番の否定の言葉に、サクラは目を見開く。
大きなショックを受けたが、この場で泣き出すわけにもいかなかった。
自分達と同じように並ぶ大勢のカップルの目があるのだ。
「あ、そ、そうよね。サスケくん、こんな手袋なんてしないわよね。ナルトにでもあげるから・・・」
涙を押し殺して笑うサクラは、手袋に向かって手を伸ばしたが、その腕をサスケに掴まれる。
「そういう意味じゃない」他の恋人達がしているように、サクラと指を絡めて手を繋いだサスケは照れのためか顔が赤い。
「これなら十分あったかいだろ」
「・・・・・・うん」
呆気にとられるサクラは、かなりの間をあけてから返事をする。
気が動転して、目が回りそうだ。
「で、で、でも、サスケくん有名人だし、ほら、みんな見てるよ。明日から噂になっちゃうかも・・・私達のこと」
「お前は嫌なのか?」
「嫌じゃない・・・です」
「それなら構わないだろう。噂は本当だって言えば」
手袋をポケットに突っ込むと、サスケは進んだ列の動きに合わせてサクラの手を引っ張る。
「もう、ナルトに頼るなよ。俺が聞いてやるから」
サクラは夢を見ているような眼差しでゆっくりと頷いた。
目の前のサスケは自分の願望が作り出した幻かとも思ったが、掌のぬくもりは確かに伝わってくる。
サクラの瞳からふいにこぼれた涙に、サスケはギョッとして振り返った。「な、何だよ」
「・・・嬉しい」
小さく囁いたあとは言葉にならない。
仕方なく、サスケが彼女の肩を抱いても、まだ涙は止まらなかった。
周りの視線が自分達に集中しているのを感じ、このうえなく恥ずかしい状況だったが、何故か嫌な気持ちはしない。
晴れてサスケの恋人という立場に落ち着き、サクラに嫉妬の目が向けられるのはこの翌朝のことだった。
あとがき??
シカマルが、ナルトのことをサスケのお友達と言っていた意味を分かって頂けたなら幸いです。
カカシ先生以上に、ナルトを格好良く書くことに命をかけている気がする。(カカサクサイトなのに・・・)
うちの駄文でナルト好きになったと言われると、本当―――に嬉しいのです。
でも、このシリーズにナルトはもう出てこない。か、可哀相なので。カカシファミリーシリーズには小桜ちゃんがいるから良いけれど。
しかし、やることやってから初めて手を繋ぐとは、普通逆じゃないだろうか。
それまで、サクラは外をを歩くとき3歩後ろからサスケにくっついて歩いていたようです。
な、何時代だ。
彼らの年齢はたぶん、16か17です。うちは夫妻なれそめ話はこれにて終了。
血途12は、サスケを守護する天狗さんとサクラの話。どシリアス。サチくんが生まれる前・・・だろうか。
何ヶ月もかかって全く完成できないので、変更の可能性大。