羅生門 −春−
月を、見ていた。
仲秋の名月ではなかったけれど、それはとても見事だった。
綺麗すぎて、怖くなるくらいに。下の階にいる両親は、随分前に眠りについている。
だから、私はかなり声をセーブして呼び掛けた。
「何してるの」
私がいるのは、二階の窓際。
彼がいるのは、階下の路地。
だけれど、私の声はしっかりと聞こえていたようで、彼は玄関の脇にある電灯の下に姿を現した。
私を見上げるその人は、間違いなくサスケくんだ。「何か用?」
いつまで待っても返事のないサスケくんに、私はもう一度声をかける。
彼が私に会いに来るなんて、珍しい。
いや、初めてのことだ。
しかもこんな夜更けに。今夜はたまたま起きていたけれど、そうでなければ、彼は黙って帰ったのだろうか。
それとも、ただの通りかかり?
ぼんやりととした灯りの下では、サスケくんの表情はよく分からない。
「里を、離れることにした」
沈黙を破ったサスケくんの第一声に、私は息を呑む。
「に、任務で?」
「違う」上擦った声で訊ねる私に、サスケくんは即答する。
忍者が隠れ里を離れる。
それは、なかなかあることではない。
何か、特殊な任務を請け負った場合以外。
そして、サスケくんのそれは、命令されたことではないという。すなわち、抜け忍。
「お兄さんが見つかったの?」
とっさに、それしか思い付かなかった。
サスケくんが、里を抜ける理由なんて。
だけれど、サスケくんは首を横に振る。
「一緒に来るか、サクラ」
思いがけない一言に、私は目を大きく見開く。
サスケくんは、ずっと目をそらすことなく私を見ている。「来るか」
どうしてだろう。
私の耳に、それは問いかけではなかった。
強い願いのこもる声音。これは、懇願だ。
あとがき??
どーしろっていうんだ。シクシク。
元は、『マトリックスリローデッド』のあらすじを見て書きたくなったんですが。
どこらへんにそんなのが盛り込まれるのか。
不安。
それぞれ一人称で語られる話。今回サクラで、次はカカシ先生。4まで続く。
設定はサクラ達十代後半。
全部のエピソードを書けそうにないので、所々、抜粋して書きます。(反則)
たぶん悲劇なので、暗い話駄目って人は続き読まない方が良いですよ。