羅生門 −畠−
羅生門の鬼。
近頃、この場所で横行する人斬りの犯人を、人々はそう呼び、怯える毎日を送っている。
羅城門は、木ノ葉隠れに住む者が、他国へ赴く際に必ず通る場所だ。
そして、殺害された者は、全て木ノ葉隠れの忍び。
商人や旅の者には、一人の犠牲者も出ていない。
犯人はただの辻斬りではなく、何らかの目的があって木ノ葉隠れの忍びを狙っているのだと分かり、火影様は俺を羅城門へと調査に向かわせた。他にも優秀な忍びがわんさかといるのに、わざわざ俺を選んだのは、他でもない。
犯人が、俺に深い関わりがある人物だからだ。
ナルトも一緒に付いてくると言ったが、何とか押し止めた。
情に流されやすいあいつは、この任務に全く不向きだ。
「夜の闇に紛れての犯行。殺された忍びは、今までで99人。全員首が取られている」
ほの暗い満月の下、俺は渡された報告書を読み上げる。
もちろん、場所は羅城門前。
ギャラリーもとっくに現れている。
気配を消していても、彼が近くにいることは、何となく分かっていた。「それで、俺が100人目なのかな。羅生門の鬼さん」
背後に、いつの間にか現れた、人影。
元生徒である彼は、半年ほど前に、突然失踪した。
同じく、元生徒であるくの一を連れて。彼女が自分の意志で彼に付いていったのか、それとも拉致同然だったのかは、当事者にしか分からない。
どちらにせよ、里を抜けることは重罪だ。
里に害をなす罪人とつるんでいるのなら、なおのこと。
「大蛇丸の下についたって話は、本当なの?」
振り向きながら訊ねたが、彼は無言のままだ。
面やつれした顔は、前よりも少しだけ大人びて見える。
あからさまに警戒している彼は、自分の出方を窺っているようだった。
こちらも、のんびり話しているようで、隙は作っていない。「お前がさ、里抜けしようと大蛇丸と仲良くしようとどうこう言うつもりはないけど、サクラだけは返してくれないか」
彼女の名前を出すと、彼の顔が、僅かに強張ったのが分かった。
「泣いてるんだよ、あの子の親。毎日、毎日、火影様のところに訴えに来てるの。もう見てられなくて」
「サクラは渡さない」続く言葉を遮り、彼は言明する。
クナイをその手に握りながら。
鋭い視線は、俺を射抜くようにして見ていた。「お前に斬られるつもりもない」
言うが早いか、容赦なく俺に向かって術を使ってきた。
手加減無く。
俺の方はといえば、防戦一方。
辛うじて反撃するも、どこか、躊躇している。俺だってナルトのことは言えない。
十分、情に流されている。
実際サスケの顔を見てしまうと、心を鬼にして闘うことは、どうしても出来なかった。今頃になって、教え子と対峙したときの、三代目の気持ちが分かる。
長い時を共に過ごし、その成長を見守ってきた生徒は、自分の子供も同然。
そして、子供を殺せる親なんていやしない。
よほど心を病んでいない限り。
知らぬ間に意識が飛んでいたのか、首筋に当てられた刃の感触で、我に返る。
見上げた先にあったのは、額から血を流しているサスケの顔。
満月の明かりで見るサスケは、ひどく悲しげな目をしている。
困ったな。
多少手加減したとはいえ、彼は自分を倒せるくらい強くなったっていうのに、以前みたいに、頭を撫でてやりたくなってしまう。刃に力が加えられたことを意識しながら、意識は更に深い場所へと沈んでいった。
あとがき??
何かこれ、どうしようもないサスサクなんですよ。本当、どうしようもない。
次の一人称はサスケね。
とりあえず、カカシ先生さようなら。そして、有難う。
羅城門で、羅生門。
戦闘シーン全く無くてすみません。書きたいのはそこじゃかったから。(言い訳)