母をたずねて 1


「一度決めたら、もう引き返せませんよ。本当にいいんですね」
「はい」
厳しい声音で問いつめる上忍に、青年は微笑んで答える。
何もかも吹っ切れたような笑顔は晴れやかで、とても今から重用な任務に就くとは思えない。
青年の前に立った火影は、恭しく頭を下げた。
「かたじけない・・・・」
どこか疲れたような老人の顔に、苦渋の色が見え隠れしている。
歴代最強と謳われる火影の白髪頭を、青年は困ったように見つめていた。

「くれぐれも、弟のことだけは」
「ええ、ええ、それは分かっています」
火影の傍らに仕える上忍は力強く言う。
「それと・・・・」
「彼女なら、任務を了承しましたよ」
口を挟んだのは、戸口に立つ覆面の上忍。
振り向いた青年に、彼は淡々と言葉を繋ぐ。
「彼女は俺の部下なんです。明日の任務には俺も同行させて頂きますよ」
「そうですか」
棘のある彼の口調を気にせず、青年は柔らかく微笑む。
「どうぞ、よろしくお願いします」

善良そのものといった青年を、覆面の上忍は苦々しく見据えていた。
彼には、任務内容に口出しする権利はない。
それが火影絡みとなれば、なおさらだ。
だけれど、日頃から部下思いで知られる彼にとって、今回の任務は気乗りするはずがないものだった。

 

 

 

「サクラ、明日から任務で菜の国に行くんだってー?ちょっと遠くない」
「うん。道中の夜盗を警戒して依頼が来たみたいだけど、護衛対象は特殊な役職に就いている人間じゃないみたいだし、任務としては楽なほうよ。何でか知らないけど、カカシ先生も同行するって言ってたし」
「ふーん・・・・」
相槌を打ったいのは、ティーカップを口に運ぶ。
午後の2時から3時まで、いのの花屋では客も混じり毎日小さなお茶会が開かれていたが、今日テーブルにいるのはサクラといのの二人だけだ。
店内にあるTVもつけ、非常にリラックスした空気だった。

二人が見るともなしに眺めている画面に流れているのは、先ほどから同じ映像だ。
年若い大使が、滞在中の国で病に倒れたという内容を番組司会者が繰り返し話している。
何やら優秀な人物らしいが、いのとサクラにはあまり興味のない話題だった。

「そういえば、この大使が療養しているのも菜の国みたいね」
「え、そうなんだ」
「うん。警備の関係で報道には秘密みたいだけど、確かな情報よ」
「へぇー」
茶菓子に手を伸ばしたサクラは上の空で返事をする。
この大使の容態が自分の任務に深く関わっていることを知らず、リモコンを取ったサクラは料理番組にチャンネルを変えた。


あとがき??
序章。何だかもう息切れ気味。
元ネタはパタリロね。ぴんと来た方はお友達になりましょう。
ちょっと前に書いた話なのだけれど、第4章は書かずに放ってあったり・・・。
あんまり救いがなかったから、渋っていたのか。
ちなみに火影は3代目のじっちゃん。サクラは17、8歳かな?


暗い部屋に戻る