母をたずねて 2
中忍サクラの請け負った護衛任務。
その依頼人である彼を見たとき、サクラは目と口を大きく開けたまま、暫く息をするのも忘れてしまった。
金髪碧眼、そして長身の絵に描いたような美青年だ。
年は16のサクラよりも四つ、五つ上だろうか。
唖然と自分を見上げるサクラに、青年は微笑を浮かべたまま右手を差し出す。「道中、よろしくお願いします」
「え、あ、ああ、はい。まかせてください」
我に返ったサクラは、慌てて彼の右手を握り返した。
服の袖からのぞく彼の腕は、驚くほど細く、白い。
ひんやりとしたその手もまた血が通っていないかのようで、サクラはもう一度まじまじと彼を見つめる。「シュウといいます。あなたは?」
「サクラ。春野サクラです」
「サクラ・・・さん」
サクラの言うままに繰り返した彼は、彼女ににっこりと笑いかける。
「思った通りの名前だ」初対面だというのに、彼は以前からサクラを知っていたかのような口振りで言う。
少し不思議に思ったサクラだが、彼の笑顔に見取れてしまい、曖昧な返事をするのが精一杯だった。
「じゃあ、菜の国にはお母さんに会いに行くんだ」
「そう」
「それは、楽しみね」
にこにこ顔で自分を見上げてくるサクラに、シュウは同じく笑顔を返す。
短い旅の間に、サクラとシュウはすっかり意気投合していた。
年齢が近いこともあり、話題はつきることがない。
そして一緒に歩き始めて分かったことだが、シュウは片足を少し引きずるようにして歩く。
護衛をつけたのは、夜盗を警戒してのこともあるが、このことが原因のようだ。「この足は生まれつきなんです。昔は一歩も歩けなかったんですけど、何とかこうして不自由なく動けるようになりました」
その間の苦労を微塵も感じさせず、笑顔で語るシュウをサクラは心から尊敬する。
母親が離れて暮らしている理由も気になったが、会ったばかりで家庭の事情に踏み込むことはさすがに出来なかった。
「サクラ」
シュウと共に野営の準備をしていたサクラは、その声に振り返る。
手招きをしているカカシに、サクラは訝しげに駆け寄った。
「何よ、先生」
「あのな、あいつとあんまり仲良くならない方がいいぞ」
「・・・・はぁ?」
シュウをちらりと見ながら、小声で忠告するカカシにサクラは首を傾げる。「何よ、それ」
「ほら、あいつは話しやすそうな外見だし、面食いのお前が懐く気持ちも分かるけど、依頼人だろ。任務が終わればもう会うこともないし、ちゃんと距離を保ってだな・・・・」
珍しく言いにくそうに話すカカシを、サクラはしげしげと見る。
「焼き餅?」
突拍子もないサクラの発言に、カカシはその場でずっこけそうになった。
「いや、そういうことじゃなくて」
「冗談よぉ」
額から汗を出すカカシをサクラは笑い飛ばす。
「大丈夫。これは仕事だもの。ちゃんとわきまえてるわよ」シュウのもとへ戻り、楽しそうに会話を再開したサクラを遠目にカカシは大きく息を吐く。
「どこがだよ」
サクラはもともと人見知りをしない性格だが、シュウのように出会ってすぐうち解けた相手は稀だ。
だからこそ、カカシの不安は大きくなる。「泣き顔はあんまり見たくないんだけどなぁ・・・・」
あとがき??
あの、予想以上に暗いので読まない方がいいと思います。