きみとぼく 4


うちは夫妻と春野夫妻は学生時代からの付き合いで、互いの家に男の子と女の子が生まれたら、結婚させようと約束したのだ。
そして現在うちは家には二人の男子がおり、春野家には女子が一人いる。
まだ正式にサクラがどちらと結婚するかは決まっておらず、子供達にその意思がなければ両親も強制はしない。
約束がなくともサクラは昔からサスケに片思いをしているのだが、イタチの方は意外とサクラを気に入っている様子だった。

 

 

「春野くん、嬉しいよ。君も僕と同じ考えを持つ人だったなんて・・・・」
「はあ」
休み時間、上級生に捕まり空いた教室に連れ込まれたサクラは、うんざりとした口調で答える。
イタチがやってきてからというもの、見知らぬ男子生徒に呼び止められることが多くなった。
保健室で寝泊まりをしていたために難を逃れたが、深夜に部屋まで忍んでくるような輩まで出没する始末だ。
イタチが「婚約者」と言ったことを、とっさにサクラ達の国では男同士の結婚も認められていると説明したのが悪かった。

「女なんか、汚らわしいだけだ。そうだろ」
「・・・そうですね」
熱弁をふるう上級生に対し、サクラは適当に相槌を打つ。
男だと勘違いしているような生徒に好かれても、嬉しくともなんともなかった。
いっそ性別をはっきりさせれば騒ぎも収まるだろうが、そうなると学園にいることが出来なくなるのだから困ってしまう。

 

「今夜、僕の部屋に遊びにおいでよ。君ならいつでも大歓迎だから・・・・」
意味ありげな視線と共に手を握られ、サクラは鳥肌が立った。
「あ、あ、あの、僕には好きな人がいるので、その」
「一度や二度の浮気くらい、平気さ」
さらに身を乗り出してきた上級生にサクラは心の中で絶叫する。
思い切り噛み付いて逃げるしかない。
顔を近づけてきた上級生を睨んだサクラだったが、目的が達せられる前に教室の扉が開かれた。

「サクラーーー!!」
「・・・・カカシ先生」
思わぬ人物の登場にサクラは驚きの声をあげ、上級生は彼女の肩に手を置いたまま固まっている。
「何でここに?」
「サクラの服に発信機付けてるもん。ピンチのときは保健室に警報が鳴るの」
「・・・そうですか」
つかつかと歩み寄り、サクラの体を奪い取るとカカシは上級生を厳しい表情で見やった。
「俺の女に手を出したら、殺すからな」

とりあえずカカシに抱かれて大人しくしていたサクラだが、心の中では怒りが渦巻いている。
助けてもらったことを感謝しても、服に無断で機械を付けられていたとは聞き捨てならない。
それに、カカシの女になった覚えもなかった。

 

 

 

「早く帰ってくれ!」
「心配して様子を見に来たというのに、つれないな、弟よ」
サクラの部屋で勝手にくつろぐイタチは、目くじらを立てるサスケにも動じず周りを観察している。
几帳面なサクラらしく、室内はこれ以上ないほど片付いており、用心のためにぬいぐるみや小物の類は隠してあった。
窓際には昔の写真がいくつか飾られていたが、そこには幼い頃のサクラがサスケやナルト、イタチと共に写っている。
少年二人と遊ぶサクラは男の子のような服を着ていたため、部屋に置いても支障はないと判断したようだ。

「大体、都会で働いているはずの兄さんが何で教育実習なんか」
「だから、可愛い弟とナルトくんの暮らしぶりを見に来たんだ。サクラまでいるとは、予想外だったが・・・」
そのとき、扉が開かれ皆が一斉の扉の方へと顔を向ける。
「あれ、イタチさん、みんなも」
日ごろサスケやナルトの集合場所となっているために、入ってきたサクラはさして驚かず皆の顔を見回す。
「サクラちゃんどこに行っていたの?探していたんだけれど」
「ちょっと、上級生に襲われて・・・・」
「何!!?」
「あ、ああ、違うの。カカシ先生が助けてくれて、平気だったのよ。お礼に茶でもご馳走しろってうるさいから連れてきたけど」

サクラの後ろから顔を出したカカシは、部屋の中のイタチと目が合うなり急に表情が険しくなった。
居住まいを正したイタチも、ゆっくりとした動作で頭を下げる。
「お久しぶりです、カカシさん」
「えっ、知り合い!?」
「昔、同じ研究所にいたことがあるんだよ。大学を飛び級で卒業した天才少年としてイタチが来たんだけれど、一緒にいたのは2ヶ月ちょっとの間だったっけな」
カカシが何故か苦虫をつぶしたような顔で言うと、イタチはぽんと両手を叩いてみせる。

「ああ、思い出しました。確かカカシさんは出資をしてくれている会社社長の愛人とねんごろになって、研究所を首に・・・」
大きく咳払いをしたカカシがイタチの声を掻き消す。
しかし、負けじと音量を上げたイタチは話を最後まで続けた。
「そのあと社長令嬢との火遊びも発覚、のみならず20人近くいた若い女学生はほとんどカカシさんのお手つきでしたし、やりたい放題でしたよね」
「・・・・・・・へえ」
華やかなカカシの過去が語られたあと、地獄の底から響いてきたような低い声を耳にして、その場にいた全員がびくりとなる。
目を細めたサクラは、視線だけで刺し殺せるような鋭い眼差しでカカシを見つめていた。
サクラから発せられる殺気のせいで、室温が10度近く下がったようようだ。

 

 

「あの、サクラ・・・・」
「近寄らないで、不潔よ!!このケダモノ!!女の敵!!!」
「サクラーー、昔の話だって。今はサクラ一筋だよ。愛してる」
「誰が信じますか、変態!!痴漢!!性犯罪者!!あっち行って!!」
周りの物を手当たりしだいに投げるサクラは、金切り声をあげてカカシを部屋から追い出そうとしている。
潔癖症のサクラにすれば、過去の出来事とはいえカカシの行為は言語道断だ。
そのように女癖の悪い男は、見るのも嫌だった。
修羅場となっている二人を傍観しつつ、ナルト達はポットに用意した茶を紙コップに入れてすすっている。

「で、イタチさんはその研究所でどんな感じだったの?」
「カカシさんがいなくなって寂しい思いをしている女性達を随分と慰めてあげたな。懐かしい・・・・」
「・・・・」
研究内容を聞きたかっただけであって女性遍歴は別にどうでも良かったナルトは、なんとも言えずに黙り込む。
一体、何を研究する場所だったのか、それが妙に気にかかるナルトとサスケだった。


あとがき??
イタチ兄、研究所にいた頃は10代前半だったのに・・・やるなぁ。
続きがあったら、学園祭当日の話ですよ。
もっとカカサクを書きたい・・・。


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