痴人の愛 V


好き。

 

たった二文字。
だけど、大切な言葉。

あの人が私の瞳を見詰めて言ってくれたのなら。
私の心はどれほど癒されることでしょう。

 

それこそ、あなたの前から姿を消してもいいくらいに。

 

 

カカシ先生が私を恋愛の対象として見てくれたことは、ただの一度もなかった。

何年月日がながれようと、カカシ先生と私は教師と生徒。
カカシ先生がそう決めた。
あの人の中では、私は一生13歳の少女のままだ。

何度カカシ先生の家を訪れて、愛の言葉を紡いでも、見向きもしてくれなかった。
子ども扱いされて、笑われるのがオチ。
里ではもうとっくに成人とされる年齢なのに。

何とか振り向かせたくて。
自分の本気を感じて欲しくて。
言ってみた。
ヒステリックに。

「私と一緒になってくれなかったら、死んでやる」

 

カカシ先生は私の言葉を、はなから信じなかった。
当然かもしれない。
昔の私ならそんなことは絶対に言わなかった。
自分の命を使って脅す卑怯者。
カカシ先生が私をこんな風に変えてしまった。

馬鹿にしたように笑うカカシ先生が癇に障ったから。
これみよがしに。

舌をかんでみた。

 

どろりとした血の感覚。
口内一杯に広がり、溢れ出す血液。

屈みこんだ私に、カカシ先生は顔を青くして駆け寄った。
あんなに取り乱した先生を見たのは久しぶりだ。
朦朧とする意識の中で、薄笑いを浮かべる私は、誰の目から見ても恐怖の対象と映った。

 

 

幸か不幸か、傷は私の命を奪うには至らなかった。
狂言だったのだから、当然といえば当然。
死への恐怖がリミッターとなって、あまり力を込められなかった。

カカシ先生は仕方なく、私の意見を承諾してくれた。
私が次にどんな行動を起こすか分からなかったから。
私が昔の生徒だから。

 

「一緒に暮らそう」

傷の診察の後、そう呟いた時のカカシ先生の、これ以上ないくらい、哀れみのこもった瞳。
いつも困ったような顔で、それでも温かな眼差しを向けてくれていたカカシ先生の変貌。

 

私がカカシ先生を手に入れると同時に、その心を手中にする術を永遠に失った瞬間だった。


た、助けて。暗すぎ・・・。
唐突にサクラ一人称。私に文才がなかったからです。すみません。
しかも、最後まで書く時間がなくてこの話、続いてます。
もう一つこれの続きがきて、最後はカカシ先生、かな。
ここまできたら、カカシ版も書かないといけないかなぁと。
でも、その前に『ブルーブラッド』(須賀しのぶ著)を読んで復習しておかないと。(分かる人だけ分かってちょうだい(笑))
カカシ先生がユージィンか・・・・。お、恐ろしい。


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