ねらわれた学園 1


私立カリマンタン学園。

全寮制の男子校である。
入学金、年会費、その他諸々費用がやたらとかかり、金持ちの子息が集まる、伝統あるお坊ちゃん学校だ。
しかし、校内の作りはそれらの金を出させて納得と思える作りになっていた。
さまざまな機器を使い、一流の教師による最先端の授業。
校内はプール、テニスコート、野球場、サッカー場、ゴルフ場、はては博物館、美術館と、ありとあらゆる設備が完備されている。
施設を全部周りきるには、一週間以上かかるという敷地面積だ。
校内の足として、生徒、教師専用のモノレールまで開通している。

 

「すげーー、すげーーー!!」

目を大きく見開き、ナルトは窓から見えるモノレールを穴が開くほど見詰めている。
同じ言葉ばかり繰り返すナルトを、サクラは後ろから叩いた。
「・・・みっともない」
サクラに引きずられるようにして歩きながらも、ナルトの「すげー」は止まらない。
これだけの設備を前にして、当然といえば、当然だ。
サクラにしても同じ気持ちなのだが、ナルトがあまりに田舎者然としているために、驚くタイミングを逸してしまった。
木ノ葉の里では、忍びとして忍術に頼っているため、こうした機械の技術が他の里に比べ遅れている部分があることは否めない。
サスケが黙っているのは、ナルト同様驚いているからなのか、たんに無感動なだけなのか。

「つきましたよ。この教室です」

三人を先導するようにして歩いていた担任の教師が、ある扉の前で立ち止まる。
見ると、『1年1組』と書かれたプレート。
短い期間ながらも、ここがナルト達7班の下忍三人の学び舎となる教室だ。
サクラは緊張ぎみに唾を飲み込んだ。

 

 

「カカシ先生―」
「いるー?」
懐かしい声に、カカシは座っていた椅子を回転させ、扉の方へ振り向いた。
「おー、ようやく来たか」
カカシは嬉しそうに顔を綻ばせる。
その笑顔に、ナルト達一同にも、ホッとしたような表情が浮かんだ。

「で、どうだった、今日一日」
「どうもこうもないってばよ」
ナルトはぼやくように言い、ずかずかと部屋に足を踏み入れる。
その後にサスケが続き、一番後尾にいたサクラは『保健室』と標示された扉を静かに閉めた。

「授業が難しすぎるってばよ。あんなのできるわけないって」
「あんたが忘れてるだけよ。あの数式はたしかアカデミーでも習ったでしょ」
「・・・そうだっけ」
部屋に入るなり、ナルトとサクラはわいわいと言い合いを始める。
無関心に窓の外を見詰めるサスケと、彼らの様子を温かく見守るカカシ。
全く、普段の任務時と変わらない光景だ。

ただ違うのは、彼らの扮装と、その状況。

 

「・・・でも」
サクラとの応酬にピリオドをうったナルトは、向かいにいるカカシをしげしげと見る。
カカシが椅子に座っているため、立っているナルトとそう変わらない目線。
「先生が額当てしてないと、変な感じ」
カカシはおかしそうに笑った。
「お前らだって、してないだろ」
「うん。でも、何だかなぁ・・・」
ナルトは腕を組みながら、首をかしげる。

ナルトの言いたいことは、サクラにも分かった。
今日のカカシのいでたちは、白いシャツにベージュのチノパン。
その上に、白衣を羽織っている。
常備していた額当ては顔になく、代わりに薄いフレームの丸めがね。
濃い色付きレンズのために、その眼の色ははっきりと見えない。
普段の忍装束を見慣れているだけに、これだけ装いが代わると、カカシではないようだ。

「・・・別の人みたいだってばよ」
「何言ってるんだよ」
不安げな声を出したナルトの頭をカカシは苦笑しながら撫でる。
いつもの、乱暴な動作で。
「お前らは、制服、似合ってるぞ。特に」
カカシは親指で一点を示す。
「サクラ」

 

名指しされたサクラは複雑な表情をしてカカシを見た。

下忍三人が着ているのは、この学園の指定された制服だ。
名のあるデザイナーに注文したという、洒落た雰囲気のブレザー。
これ一着で、一般市民には目玉の飛び出るような金額だ。
ナルトが汚したり、破ったりしないかと、サクラは常にひやひやとしている。
他人の心配などしている場合ではないというのに。

男子校であるこの場所は、教師以外、女人禁制の地だ。
性別を偽って入学したサクラだが、特別に変装をしているわけでない。
名前も同じものを使っているし、言葉使いを直す程度。
普段を違うのは、桃色の髪を後ろで一つに束ねていることくらいだ。
冬ということもあり、厚手の上着を羽織っているし、体育の授業でもジャージ着用。
着替えはさすがに人のいない場所を選ぶが、彼女が女だとばれる可能性は低い。

私って、そんなに女の子らしくない体型かしら。
サクラは心の中で、そう呟く。
密かな悩みを指摘されているようで、この制服が似合うと言われても、サクラは素直に喜ぶことができない。

「それで、これからの計画は?」
「まぁ、まず目立たないようにすることかな」
サスケの問い掛けに、カカシは真面目な口調で答えた。
「おまえ達は状況に早く慣れて友達を作れ。そうしたら、自然に情報が入ってくるだろ。くれぐれも、忍術は使うなよ」
念を押すカカシに、ナルト達は神妙な面持ちで頷く。

 

 

7班のこの度の任務内容。

『鋼の里、名門男子校内で相次いで起こった、生徒の自殺の原因を探れ』

依頼はこの学園の理事長から。
新学期以降、三ヶ月という短い期間で3人の生徒が自殺事件を起こした。
学園の不名誉な事件と思っているからか、極力隠密行動を取るように指示されている。
カカシやナルト達が忍であることは、ごく一部の教師を除き、誰にも秘密だ。

念のいったことに、7班担当の上忍は下忍達が鋼の里に入る1ヶ月前に、この学園に潜入した。
保健医という偽りの身分で入り込み、ナルト達の転入の手筈を整える。
理事長が味方だということもあり、その辺りの情報操作は簡単に済ますことができた。
あとは、下忍の彼らが生徒間の微妙な力関係、噂等を探って事件の真相を掴むだけだ。

 

「長期戦になるかもしれないけど、ま、そう気負わずに頑張ろうなー」

緊張を解くためなのか、カカシは急にのんびりとした口調で下忍達の肩を叩く。
ナルト達は微妙な表情で互いの顔を見合わせた。


あとがき??
全然書きたかった場面を書いてないよ!!うおー!(怒!!(逆ギレ))
状況説明だけで終わってしまったー。
次こそ、次こそは、あのシーンを書くぞーーー!!
・・・サスケに、GWで有名な某台詞を言わせてみたい。(密かな野望)
目立つな、と言われたら、アレでしょう。

次はあの人とこの人を登場させて、さらに事件が起こって、サクラがピンチで。
ああ、クラスメートの名前とか、全然考えてない!
・・・・これ、長い話になるのでは。今気付いたよ。

カカシ先生は保健医なのは、私の趣味。ハレグゥの保険医、クライヴ先生ラブだから。(笑)
カカシ先生に白衣、合うじゃん!
女の子が男子校に潜入とかいうと、花とゆめの『花ざかりの君たちへ』みたいですねぇ。
元ネタは『パタリロ』のアスタロト侯爵とパタリロ6世、猫娘の旅物語のエピソードなんですけど。
しかし、あれは舞台が女子高だった。(笑)
カリマンタン学園、豪華さがCLAMP学園みたいですね。

何でいきなり男子校なのか。一度やってみたかったんだです。ホモちっくな話。
次はいきなりヤバイ展開かもしれない。(笑)校内でいろいろと。男子校だし・・・。
まぁ、あくまで主役はサクラなので。(←ここ、重要!)

少女が男装して潜入捜査ってだけでもえるのは私だけなのだろうか・・・。(悩)
最初は表用だったのだけれど、書き進むうちに移動が決定したいわく付き作品。


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