ねらわれた学園 2
「あれ?」
廊下の角を曲がった先は、行き止まりだった。
サクラは手に大きな籠を抱えたまま立ち往生する。
「おかしいなぁ」
不審げに呟きながらも、いつまでも突っ立っているわけにいかない。
サクラはふらつく足取りでUターンした。
籠を持っているせいで、前方の視界はすこぶる悪い。
前から来る人間からは、籠の下に伸びる足から、籠が歩いているように見えるかもしれない。「全く。洗濯くらい、自分でやって欲しいわよ」
ぶつぶつと文句を言いながら、サクラは乱暴に足を踏み鳴らす。
籠の中身。
そこには、3人分の洗濯物が入っている。7班の下忍にあてがわれた寮の部屋は、ちょうど3人部屋だった。
トイレと風呂も大きなスペースで完備されている。
各自の机やベッドのある場所はついたてで仕切られており、個々の部屋があるのと変わらない。
それはいいのだが、問題は、個人の性質だ。生来綺麗好きで片付け魔であるサクラは、ついたての向こうとはいえ、ナルトが部屋を散らかし放題にしているのが気になって仕方が無い。
つい、脱ぎ散らかした服、散らばった書物類を直したりするのだが、その際ついでにと洗濯も済ませてしまった。
ナルトの分だけ、というのも何なので、サスケの分も。
最初にそういうことをしたのがまずかった。
一度洗濯をしただけで、いつのまにやらサクラが洗濯係、のような雰囲気になってしまった。そして、サクラも律儀に皆の洗濯を引き受けているわけだが、その洗濯機の置いてある部屋までが、また距離がある。
方向音痴ではないサクラも、寮内の複雑な作りには頭を痛めていた。
一度や二度行っただけでは、絶対に覚えられない道筋だ。
流石に寮から校舎への道は覚えたものの、それ以外の場所はまだ通りかがリの生徒に聞かなければ、とてもではないがたどり着けない。
しかも、生徒の中には制服から下着まで、洗濯物を全てクリーニングに出す者も多く、利用者の少ない洗濯機は寮の隅の隅という場所に設置されていた。
サクラ達忍者には、そこまでの予算は支給されていない。
「広ければいいってもんじゃないわよ!!」
段々と怒りが込み上げ、サクラは不平を声に出す。
次の瞬間。
大きな衝撃がサクラを襲った。
「きゃあ!!」
思わず籠を放り投げて尻餅をついたサクラだが、無意識に出た短い悲鳴に慌てて口を押さえる。
サクラと同じように床に倒れているのは、サクラと同じ寮の上級生。
たぶん、廊下を歩いていたサクラは、ちょうど部屋から出ようと扉を開けた彼と接触してしまったのだ。「ご、ごめんなさい」
サクラは座り込んだまま、頭を下げて謝った。
すっかり縮こまっているサクラに、彼は僅かに頬を緩ませる。
「いや、こっちも突然扉をあけたから。すまなかったね」
すぐに立ち上がると、サクラに向かって手を差し出した。
「立てる?」
さわやかな笑顔で言う上級生に、サクラは顔を真っ赤にしながら何度も顔を縦に動かした。
「大変だね。三人分の洗濯物、一人でやってるの」
「は、はい」
上級生の問い掛けに、サクラは上ずった声で答える。
右手と右足が同時に出そうな勢いだ。
サクラと、先ほどぶつかってしまった上級生は並んで洗濯機のある部屋への廊下を歩いていた。
そして、彼の手には、サクラが持っていた籠。「あの、やっぱり私が持ちますよ」
「何言ってるの。またさっきみたいに誰かにぶつかっちゃうよ」
遠慮がちに言うサクラに、彼は笑いながら答える。
「大丈夫だよ。もうすぐだし」
危なっかしい足取りのサクラを見かねて、その籠を肩代わりしたうえに、洗濯機のある場所まで案内してくれているのだ。
確かに、小柄なサクラが持っていたときよりも、上級生で上背のある彼が持っていた方が籠も随分と小さく見える。
この寮の寮長をしている彼は、なかなか面倒見のいい性格のようだ。
寮に入る前に一度挨拶をしただけだが、サクラは一目でかなりの好印象を抱いていた。「あの、寮長さん」
「ツグミでいいよ」
「・・・ツグミさん、どこかに行く途中だったんじゃないですか?」
サクラは申し訳なさそうに声を出す。
部屋から出てきた以上、どこか行く場所があったのだ。
「うん。バスケ部の練習にちょっとね」
「やっぱり・・・」肩を落としたサクラに、ツグミは慌てて話題を変えた。
「でもさ、今度の大会はなかなかいいところまでいけそうだよ。優秀な新入部員が入ったし」
「新入部員?」
「君のお兄さんと弟さん。あとで練習観に来たらいいよ」兄と弟。
サクラは思わず吹き出しそうになったが、何とかこらえた。
サクラは一人っ子だ。
彼は言っているのは、たぶん、サスケとナルトのこと。「でも君達、似てないねぇ」
ツグミは三人の顔を思い浮かべたのか、しみじみと言う。
何気なく呟かれた言葉に、サクラは冷や汗をかきながら、何とか言い訳を考える。
不自然な時期、同時に3人の転入生ということでとっさに兄弟、ということにしたのだが、やはり無理があったらしい。「は、母親が違うんです!」
「ああ、名字が違うのはお母さん達の姓なの?」
「そうなんです!!」
サクラは都合よく解釈するツグミに、念を押して答える。
上流階級では、第二夫人、第三夫人がいることなど当たり前だ。
そのあたりは上手く勘違いしてくれたらしい。
「あ、ついたよ。ここ」
そうこうするうちに、二人は目的の場所までたどり着く。
サクラは籠を受け取りながら、深く頭を下げた。
「本当にありがとうございました」
「いいよ。でもさ、君、どうしてあんなところ歩いてたの?この場所と正反対だったけど」
「それが」
サクラも首をかしげて不思議そうな顔をした。「通りかかった茶髪の人に聞いたら、あのあたりだって言われたから・・・・」
サクラの言葉に、顎に手を当て考えるような動作をしたツグミは、ふと、ある人物の風体を口に出す。
「そいつって、黒い瞳で耳にピアスしてた?」
耳に手を当てて訊ねる。
「はい!」
その通りの外見に、サクラは大きく頷いた。
金持ちの集まる進学校では珍しいピアス。
それはサクラに強い印象を与えていた。サクラの顔を見詰め、ツグミは眉をひそめる。
「彼にはあんまり近づかない方がいいよ。メジロって名前なんだけど、この学園ではかなり浮いた奴だから。不良っていうか」
人の良さそうな寮長が、そのように他人を悪く言うとは思わなかったサクラは、軽く目を見張った。
しかし、サクラに対する嫌がらせをみるかぎり、たぶんその通りなのだろう。
「はい。分かりました」
素直に答えるサクラに、ツグミは和やかな笑顔を返した。
何とか洗濯を終えたサクラは、ツグミに言われたとおり、バスケ部の練習場までやってきた。
彼は、気になる言葉を言っていた。
優秀な新入部員が入ったとか。
非常に嫌な予感がする。そしてサクラのその予感は図らずも的中することになった。
あとがき??
・・・また書けなかったー。あの場面、この場面―!!
というか、事件が全然見えてこないんですけど。死んだ生徒のこととか。あああー。
ナルトとサスケも出てこないしーー!!!
次こそは、カカシ先生出すぞーー!!
んで、ちょっとエロめな感じにするぞー!!男子校―!!