ねらわれた学園 5


「今までで一番目立ってるのって、サクラちゃんだよねぇ」

無神経なナルトの一言に、サスケが後ろから蹴りを入れる。
的を射た意見だったが、今、口にすることではなかった。
7班のたまり場となっている保健室。
その片隅でサクラがしょんぼりと肩を落としていたからだ。

「私だって、目立たないようにって2,3問間違えて解答用紙を提出しようと思ったのよ。なのに、眠くて意識朦朧としてたから何書いたのか覚えてないし。それがまさか全問正解で主席になるなんて」
ついには、サクラはぼろぼろと涙をこぼす。
「どうしてこう、全部裏目に・・・」
うなだれるサクラに、どう声をかけたものかとナルトもサスケも顔を見合わせる。

 

「はいはい。注目―」
下忍達に背を向けて何やら書類に目を通していたカカシが、パンと手を叩いた。
「お前達に隠密行動なんて無理だってことは分かってたんだよ。本当は」
「どういうこと?」
首を傾げるナルトに、カカシは詳しい事情を説明する。

「あのな、そもそもの発端の生徒達の自殺事件。彼らの共通点は、全員学園で人目を引く存在だったってことなんだ。一人目は超美形で姉妹校の女子校にファンクラブまであったA君。二人目はそれほど容姿に秀でていなかったけれどカリマンタン学園始まって以来の神童と言われたB君。最後はスポーツ万能でクラスでもひょうきん者と人気だったC君」
「ふむふむ」
「つまり、お前達が目立つ行動をすればするほど、犯人から何らかのリアクションがあるはずなんだ。自殺事件が、彼らの人気を妬む人間による人為的なものならな」
「へー」
相槌を打ち話に聞き入っていたナルトは、はたと気付く。
「じゃあ、何でカカシ先生、最初は目立たないようにしろって言ったの」
「普通にしていても目立つのに、派手にやれなんて言ったら、お前ら何するか分からないだろ」
カカシがナルトの頭を小突きながら言う。
「そっかー」
素直に感心するナルトに、カカシは苦笑した。

 

頬を緩めたまま、カカシがふと顔をあげると、先ほどまで隅の椅子に腰掛けていたサクラの姿がない。
「あれ、サクラは?」
「青い顔したまま出ていったぞ」
サスケは開けっ放しになっている扉を指差しながら言う。
よほど気落ちしていたのか、サクラは自室に引っ込んでしまったらしい。
この調子では、カカシの話を最後まで聞けていたのかも定かではない。

「大丈夫かなぁ。一人で」
「何が?」
「俺、さっき言ったじゃん。今、一番目立ってるのサクラちゃんだって。だとしたら、犯人の次のターゲットはサクラちゃんじゃないの」
身体を斜めにして座るナルトの椅子がギシギシと音を出す。
顔を上げたナルトは、カカシとサスケに向かって邪気の無い笑みを浮かべた。
「ね」
軋んだ椅子の音は静かな保健室に不気味な余韻を残して響いていた。

 

 

「春野君」
暗い顔で寮へと続く廊下を歩いていたサクラは、その呼び声に立ち止まった。
「凄いよ。君、あんなに早く教室を出ていったのに、満点だなんて」
走り寄ってきたのは、サクラのクラスメートの少年だ。
ちなみに、保健室でサクラとカカシが睦み合っている現場を目撃した人間でもある。

「雁金だよ」
名前を思い出すことの出来ないサクラに先んじて、彼が自己紹介をする。
分厚い眼鏡をかけ、ひょろりと痩せた体型の彼はサクラよりも幾分背が低かった。
彼が授業中に発言することは滅多になく、クラスでの印象は限りなく薄い。
「ああ、雁金くん。何か用?」
サクラは冷たい声音で問い掛ける。

はっきり言って、サクラは彼をうっとおしく感じていた。
サクラが秀才と知り、近づいてくる人間は彼だけではなかった。
自分にとって有益と見れば、彼らもほうっておけないのだろう。
さらに、サクラは雁金にいい印象はない。
彼の口が軽くなければ、一日にしてサクラとカカシのよからぬ噂が全校生徒の知るところとなるはずがないのだから。

近づいてくる雁金を煙たがりながら、それでも歩き進んでいたサクラの足は唐突に止まった。
否、進むことが出来なくなった。

いつの間にか、サクラの眼前には、彼女を取り囲むようにして上級生の壁が出来ていた。
どう見ても、優等生とはいえない面構えの、体格のいい上級生が、7、8人。
気後れした雁金はサクラをおいて、早々に退散してしまっている。

 

「何か用ですか?」
片眉を上げたサクラは、いかつい体格の上級生を相手にひるむことなく訊ねる。
「おお。ちょっとそこまで来てもらおうか」
「嫌です」
驚くほどあっさりと、サクラは返事をする。
即答だ。
風邪ひきでまだ身体が本調子ではないサクラは、一刻も早く自室につきたいと思っていた。
それを雁金に邪魔をされたばかりか、さらにどこかに連れて行かれたのではたまったものではない。

「・・・威勢のいい奴だな」
脅せばすぐに言うとおりにすると思っていた上級生達は、少なからず驚いたようだ。
だが、その驚きもすぐに冷笑に変わる。
「うちの番格のメジロさんがお呼びなんだよ。とにかく来い」
無理にサクラの腕を引こうとした上級生に、サクラは乱暴に手を振り払う。
「用があるなら、そっちが来ればいいでしょう!とにかく、今日は無理です」

啖呵を切り、サクラはそのまま歩きだそうとした。
だが、サクラの反抗的な態度にいよいよ上級生達も機嫌を悪くしたようだ。
「どうしても分かってもらえないようだな」
リーダー格と思われる上級生が顎をしゃくる。
すると、一瞬にしてサクラを取り囲むようにして円陣がくまれた。

「・・・あの、私、今日ちょっと体調悪いんです」
「それがどうした!」
「手加減はしねーぜ」
「いえ、そうではなくて」
いきり立つ上級生達に、サクラは淡々と語りかける。
「手加減できないんです。正当防衛ということで全力でいきますけど、いいですか?」

サクラの物言いに、上級生達はぽかんとした顔で大きく口を開けた。
見るからに華奢で弱々しいサクラに、そのような口をきかれるとは思っても見なかったのだろう。
そして、サクラのその言葉が、上級生達の怒りをピークに持っていったと言っていい。
「なめやがって!やっちまえ」
突進してくる上級生を前に、サクラは深々とため息をつく。

「忠告したのに・・・」

 

からんできた上級生を病院送りにしたサクラの武勇伝は、一部始終を物陰から見ていた雁金により、再び全校生徒を賑わすこととなった。


あとがき??
何か、私この話に出てくるナルト、好きかもしれない・・・。もともと好きなキャラだけど。
無邪気さの中に暗さが潜んでいる性格。
うちのナルトはね。(原作は別)

サクラちゃんも一応忍びですから、術を使えば強いという設定。一般の人が相手の場合のみ。
ところで、裏番って今でもいるんですかね。(笑)番長!懐かしい響き!!
そもそも、裏番って何だ。

終わりの見えたきたこの話。完結するのはいつだろう??
当初予定していたホモは入らなくなりました。ちょっと残念な。
男子生徒に言い寄られるカカシ先生、見たいですか?(笑)


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