野巫
「やっと見付けたー!!」
カカシは木の根本に並んで腰掛けているサスケトナルトを見付け、嬉しげに言った。
忽然と登場したカカシに、二人は目を点にしている。
喜んだナルトがカカシに飛び付いたのは、ワンテンポ遅れてだ。「カカシ先生―!何か、凄い久しぶりな感じだってばよ!」
「おい、やめろ。くっつくな」
ひしと抱きつくナルトを、カカシは懸命に引きはがす。
喜んでいるナルトとは対照的に、サスケは訝しげな表情でカカシを睨め付けていた。「・・・本物、か?」
「やだなぁ。担任の顔、忘れちゃったの?」
「じゃあ、何故お前がここにいるんだ。答えろ」
サスケは厳しい眼差しと共に詰問する。
右手には、いつでも攻撃できるよう、クナイが握られていた。「そんなの決まってるじゃん。サク、お前達が心配だったからだよ」
「・・・・・」
絶対に嘘だとサスケは思った。
おそらく、カカシが心配だったのは、自分達というより、ただ一人のこと。
カカシが言いかけた名前の人物だ。
何にせよ、彼がカカシだということは間違いないとみていい。
「・・・サクラはあっちだ」
「あっち?」
指差された方角を振り返り、カカシは首を傾げた。
木々に囲まれた森の中では、絶えず何らかの動物の鳴き声がしている。
死の森には危険な猛獣、虫が生息しているうえに、今は中忍選抜試験の真っ最中。
一人で行動することは、非常に危険だ。「ちょっと、何で別行動してるのさ」
「大丈夫だってばよ。カブトさんと一緒だから」
「カブト!?」
「何かねぇ、サクラちゃんほっぺたを毒虫にさされちゃったみたいで、カブトさんが毒が全身に回る前に医療術で治療してくれてるの」
「治療!!?」
「そういえば、術に集中したいからって向こうに行ったまま、1時間は経つな・・・・」
いちいち驚愕の表情で反応するカカシに、サスケの顔にも少しだけ不安がよぎる。
カカシの顔は不安を通り越し、すでに真っ青になっていた。
「・・・あの、服も脱がなきゃ駄目なんですか」
「うん、その上のだけでいいから。手かざしでチャクラを体に伝えるときに、邪魔なんだ」
善良そのものの笑顔で言われ、サクラは少しでも疑ってしまったことを恥ずかしく思った。
医療術には詳しくないサクラだが、きっと自分には分からない何らかの理由があるのだと解釈する。「・・・あっ」
傷のある方の頬を丁寧に嘗められ、サクラの背筋に震えが走る。
「まず毒を吸い出さないとね」
「で、でも、そこに傷は・・・・」
喉元を這う舌に、サクラの顔が赤く染まっていく。
「傷口はね、周りも嘗めないと効果がないんだよ。知らなかった?」唇を奪われたサクラからは、もう何の返答も聞かれない。
体のいたるところをまさぐられ、カブトが触れる箇所が熱く感じられるのは、放出されるチャクラのせいか、それとも別に理由があるのか。
朦朧とした意識のサクラにはもう分からなくなっていた。
「ってなことになっているに、違いない!!!」
「・・・・考えすぎだろう」
「え、何、どういうこと??」
カカシの妄想に、お子さまのナルトは全くついてこれていない。
「今助けに行くぞ、サクラー!!!」
血走った目で叫んだカカシだったが、それが悪かった。「侵入者、発見!!」
声と共に、どこからか現れたのは試験官のアンコと暗部の面々。
「外部から何者かが演習場に入り込んだ形跡があったから、ずっと探していたのよ」
「ちょ、ちょっと、待て!せめて、サクラの顔を一目・・・・」
「問答無用」
「あああーーー!!!」
暗部達に腕を掴まれたカカシは、強制的に連れて行かれる。「サクラァァーーー・・・・・」
と、声はみるみるうちに小さくなっていった。
「騒がせて悪かったわね。じゃあね!」
最後にアンコがサスケとナルトに謝罪をし、そして森には再び静寂が訪れる。
残された二人は、狐につままれたような表情で佇んでいた。「・・・何だったんだ、一体」
「さぁ」
暫く時間が経過したのち、立ちつくす二人の背後で、がさがさと背の高い草が揺れる音がした。
「騒がしかったけど、何かあったの?」
「あ、カブトさん!!」
ナルトはすぐさまカブトに駆け寄った。
「サクラちゃんは?」
「ああ、怪我は治ったよ。毒も残らず体から出したから」カブトは背にサクラを負ぶさっていた。
サクラはぐったりとしていて意識がなく、ナルトは心配そうにサクラの顔を覗き込んでいる。「・・・どうしたの」
「ちょっと予防注射を打っただけだよ」
「注射?」
「ここには毒を持った生物が沢山いるしね。用心のために」
「そっかー」
ナルトは脳天気な笑顔と共に、頼もしげにカブトを見上げる。
幸いなことに、続くカブトの呟きはナルトには聞こえていなかった。「これからもライバルが増えそうだから、用心しないと・・・」
カブトの隣りではしゃぐナルトをよそに、サスケは注意深くサクラを観察する。
サクラの胸元がはだけているのと、手裏剣ホルスターが左右逆についているのは、衣服を脱いだ証拠。
人当たりのよい笑顔を浮かべるカブトを眺めつつ、カカシの妄想話を思い出し、何となく嫌な気分になったサスケだった。
あとがき??
カカシ先生、大当たり。ごめん。
カブトさんは安っぽいピンク映画みたいな台詞言ってるし。(汗)
サクラ、何回注射されたんだか。
TVで死の森あたりをやっていたから、ちょっと書きたくなりました。
カブサクは・・・、真面目にもう一つくらい書きたいかなぁ。どうだろう。
カカシ先生はカブトさんの顔を知っていたことにしてください。要注意人物として。タイトルはヤブと読んでね。意味は辞書に載ってますがあまり内容と関係ないです。藪医者とかけてるのか??
これ、会社の休み時間に書いてた。まずかったか・・・。