OB


「おはよーー」
「キャアアァァーーーー!!!!」
朝の挨拶と同時に背後から抱きつかれ、サクラは絶叫した。
しかも、その腕はサクラの両脇の下を通り、思い切り彼女の胸を掴んでいる。
白昼堂々、アカデミー内の廊下での痴漢行為。
本来ならば当然罰せられるべきだが、相手がサクラと同じ女性で、しかも位が高いとなればまた対応も変わってくる。

「ほ、火影様ですか?」
「ピンポーンv」
振り返りながらおずおずと訊ねるサクラに対し、綱手は笑顔で答える。
周囲の視線が集まる中、サクラの傍らにいたカカシは心底困った顔で言った。

「綱手様―、うちの可愛いサクラにちょっかい出すのやめてくださいよぉ。俺の許可なく乳もみも厳禁です」
「何だよ。この胸はあんたのものだとでも言いたいの」
「そうです」
当然のように肯定したカカシに、サクラは目を吊り上げた。
「いつカカシ先生のものになったのよ!!!火影様も早く放してください!」
金切り声をあげると、サクラは綱手の手を振り払って歩き出す。
肩を怒らせて立ち去るサクラを見ていたカカシは綱手へと視線を移した。

「で、何なんですか。最近、サクラのこといろいろ調べてるでしょう。追いかける相手が違うんじゃないですか」
「まぁね」
綱手の本命を知った上で問うカカシに、彼女は忍び笑いをもらした。
「将を射んとすればまず馬から、っていうし」
話を続けながらメモ帳を取り出した綱手は、そこに何かを書き綴っている。

「何ですか、それ」
「春野サクラの丸秘プライベート記録。胸の触り心地を忘れないように書いてるの。ちなみに、彼女の家族構成、スリーサイズ、趣味、特技、好きな食べ物、よく行く店、交友関係、来月までのスケジュールなんかが全部ここにある。で、これは彼女の入浴中に隠し撮りした写真」
「おお!!!」
カカシが思わず身を乗り出すと、綱手はすばやく手を引っ込める。
「ちょ、ちょっとくらい見せてくださいよ!」
「駄目―」
必死な様子のカカシに、綱手は舌を出して意地の悪い笑みを浮かべた。
「私が使い終わったら高値で売ってあげるよ。ちょっと待ってな」

 

 

 

 

綱手が饅頭の入った袋を片手にやってきた、とある家。
その前で、彼女は立ち往生していた。
中忍のスケジュール帳はすべて調べ、彼が休みで自宅にいることは知っている。
それなのに、玄関のチャイムの音に彼はまるで反応しない。

「いるのは分かってるんだよ。ドア壊されたいの?」
少々どすの利いた声で言うと、扉の向こう側で息を潜めていたらしい住人はようやく鍵を開ける。
そして、開いた扉の隙間からちらりと綱手の顔をのぞき見た。
「・・・・休みのときくらい、そっとしておいてよ」
「何言ってるんだよ。私はただ旅先で買った温泉饅頭を土産に持ってきてやっただけだよ。だから、中に入れておくれ」
「いいけど、前みたいに突然襲い掛かってきたりしないでよね」
「うんv」
警戒しつつ訊ねるナルトに、綱手はにっこりと微笑んだ。

 

 

「嘘つきーーー!!!!」
綱手を家に入れるなり押し倒されたナルトは、すでに上半身の衣服を剥ぎ取られている。
こうして貞操の危機に陥ったのは、2度目だ。
綱手の眼差しは真剣で、前回のように都合よく新聞の勧誘が来て難を逃れるということは期待できない。

「こ、これって強姦じゃないの!犯罪だよ、犯罪」
「男が被害者ってのは、あんまり聞かないねぇ。それに、私の方があんたに襲われたって言うから別にいいよ」
「俺が火影の力にかなうわけないだろー!」
「そのとおり。だからいい加減観念しな」
キスをしようと顔を近づけた綱手を避け、ナルトは必死に体をよじる。
往生際の悪いナルトを見下ろした綱手は、不満げに眉を寄せた。

「・・・あんたねぇ、何が不満なのよ。こんな美人でスタイルのいい女に言い寄られて、筆おろしの手伝いまでしてあげるって言ってるのに。うちの里で私より乳の大きい女はいないだろ」
「そのあたりは重要かもしれないけど、絶対駄目だっての!大体、綱手のばーちゃんが相手じゃ立つものも立たないって」
「生意気なことばっかり言うんだから」
子供っぽく頬を膨らませた綱手は、ナルトの見ている前ですばやく印を組む。
それはアカデミーに入学してすぐ教えられる、基本中の基本の術。
ナルトが『変化の術』だと思った瞬間に、綱手の姿は一回り小さい、少女の姿なっていた。

 

「これなら、どう」
薄紅色の髪、緑の瞳の少女はナルトに向かって片目をつぶってみせた。
その正体が綱手だと分かっていても、ナルトは条件反射で顔を赤らめる。
「さ、サクラちゃん・・・・」
「完璧でしょ。声も体のサイズも匂いも、全部本人と一緒。昨日、彼女と温泉に入ったときにじっくり観察したから、細かいところも間違いないよ」
言いながら服の胸元をはだけさせる綱手に、ナルトは唾を飲み込む。
それを脈ありと見たのか、綱手は畳み掛けるように上着を脱ぎ、ナルトの片手を掴んだ。

「今日なんて実際にサクラの胸に触って確かめてきたんだから。ほら、触り心地も同じだよ」
「ギャー!!」
綱手が下着の下にナルトの手を差し込むと、じかに伝わる人肌の感触にナルトは悲鳴を上げた。
小振りだが、しっかりとした膨らみを持つそれにナルトは眩暈を覚える。

残った衣服を乱暴に脱ぎ捨て、下着姿になった綱手は再度ナルトににじり寄った。
「これなら、できるだろ」
「ちょ、本当にまずいから。近寄らないで・・・・」
ナルトの声には明らかに先ほどまでと違う焦りが出てきている。
耳まで高潮させ恥らうように顔を背けたナルトを見て、綱手はにやりと笑った。

 

 

 

 

「ナルト、温泉土産にお饅頭買ってきたわよー!」

綱手がナルトに圧し掛かった矢先、唐突に開かれた扉と第三者の声に、二人は目を丸くして振り返る。
「鍵、開けっ放しじゃ無用心・・・・・」
満面の笑みを浮かべていたサクラの声は、徐々に小さくなっていった。
サクラの視線の先にいるのは、あられもない格好で絡み合う男女。
それが半裸のナルトと自分に変化した綱手なのだから、サクラが絶句するのもしょうがない。

「さ、さ、サクラちゃん、これは誤解・・・」
「最低!!!!」
サクラは持っていた饅頭の包みを、思い切りナルトにぶつけた。
その瞳には、うっすらと涙が滲んでいる。
「ナルトなんて死んじゃえ!!馬鹿!!!!」
暴言を吐いたサクラは、そのまま荒々しく扉を閉めて駆け出していった。
静まり返った部屋の中、高揚していた綱手の気持ちもすっかり覚めている。

「あ、あはは、ごめん。鍵、かけ忘れたみたいで」
さすがにナルトに悪いと思ったのか、サクラの姿の綱手は頭をかきつつ謝罪した。
「うう、サクラちゃん・・・・・」
ひしゃげた饅頭の箱を押し抱いて泣き出したナルトに、綱手はもう声をかけられなかった。


あとがき??
タイトルの意味は
old boy〕:在校生に対してその学校の卒業生をいう語。
out-of-bounds〕:ゴルフで、コースの区域外のこと。また、そこにボールを打ち出してしまうこと。
等々ありますが、どちらかというと後者です。(笑)

表用と浦用の続きがありますが、書くかは未定。エロエロなんで。
たぶんツナ→ナル、サク→ナルの方向で突っ走ると思っています。
好きなんです、ツナデ姫とナルト。
何気にカカサクを入れた私は、やはりカカサク好きー。
でも、この話のサクラはナルトを好きみたいです。


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