2.この遊びを恋と笑って

 

冬のボーナスとして、火影から下忍達へ武器が支給された。
手裏剣やクナイの他に、鎖鎌や刀もあるが、どれでも好きな物を選んで良いという。
武器庫の前に並べられた品々を前にして、下忍達は真剣に物を検分している。
火影に献上された物らしく、どれもが一級品だ。

サクラが刀の一振りを手にしたのを見たナルトは、興味深げに彼女に近寄ってきた。
「サクラちゃん、そんなの使えるの?」
「・・・何だか気になったの。かなりの業物よ、これ」
鞘を取り払うと、名工の鍛えた鋭い刃が鈍い光をはなっていた。
刀身はやや短いが、女のサクラには丁度良い。
使い慣れない者が大きな刀を持っても、動きが鈍くなるだけだ。

サクラの目が細まったと思った刹那、瞬きをするほどの間に、刃はナルトの喉元へ当てられていた。
あと、1ミリでも動けば傷つけるという距離。
とっさに身構える暇もなかった。
「逃げないの?」
自分をひたと見据えて問うサクラに、ナルトはいつも通り明るく返す。
「何で逃げないといけないのさ」

 

この先腕を上げて、火影になれたとしても、彼女には一生かなわない。
彼女が自分の死を望むのならば、それも受け入れることだろう。
今までもこれからも、世界の中心にあるのは彼女の存在だ。
それがなくなったら生きていけない。

 

「・・・つまらないの」
刀を二、三度振って見せたサクラは、抜いたときと同様、素早い動作でそれを鞘へと戻した。
結局、斬れたのはナルトの首ではなく、彼の髪の毛が数本。
試し斬りにもならない。
半分本気だったのだが、最初から最後まで、ナルトは少しも動く気配はなかった。

「あれにしないの?」
刀をもとの場所へと置き、クナイを物色し始めたサクラに、ナルトは不思議そうに訊ねる。
「ナルトが私のことを嫌いになったらもらうわよ」