3.しあわせシーソーゲーム
「お見合い!!?サクラが?」
「そう」
素っ頓狂な声をあげた同僚に、ナルトは頷いて答える。
「え、お前ら、付き合ってたんじゃないの」
「だよねー、そう思うよねー。俺もそう思っていたんだけどさ」
頬杖を付くナルトは深々とため息を付いた。
班が解散した後も何かと交流を持ち、サクラは押しかけ女房さながらナルトの家に居座っている。
半同棲の生活をして、てっきり彼女は自分の恋人なのだとナルトも思っていた。そんなある日、唐突に言われたのだ。
親に勧められて、見合いをするのだと。
なかなか男前の相手の写真をナルトにも見せ、サクラはかなり乗り気なようだった。「大体さ、サクラちゃん、うちを休憩所か何かと勘違いしてるんだよ。泊まりに来ても手も握らせてくれないし、デートしても当然全部俺のおごりだし、何なの、俺の存在って」
しくしくと涙するナルトに、同僚はかける言葉もない。
取り敢えず、サクラだけが女ではないのだと励ましておいた。
その見合い相手と上手くいけば、もうナルトの家に来ることもないだろう。
そうすれば、ナルトは気持ちも新たに可愛い恋人を探せるというものだ。
「よし、サクラちゃんのことは忘れて、頑張るぞー!」
自分自身に気合いを入れたあと、階段を上り玄関の扉を開いたナルトはそのまま脱力して座り込んだ。
「あ、おかえりー」
勝手にあがりこんだサクラが、TVを見ながら茶をすすっている。
見合いの帰りなのか、綺麗なドレスを着ていた。「何、やってるのさ・・・」
「今日のお見合い、すっぽかしちゃった」
アハハッと笑って言うサクラをナルトは唖然と見つめる。
「え、何で!!?」
「よく分からないけど、急に行きたくなくなったの。それでナルトの顔が見たくなって、いつの間にかここに来てた」
悪びれもせず言うと、サクラは無断で持ち出した合い鍵をナルトに見せる。
「本当、何でなのかしらね」
「・・・・」
サクラを忘れようと思った直後のことで、ナルトはどう言って良いか分からない。
「サクラちゃん・・・・、本当は悪魔なんじゃないよね」
「はぁ?」
怪訝な顔をしているサクラだったが、ナルトには相変わらず抱きしめたいくらい可愛く見える。
サクラの言動一つで、天国から地獄へ、そしてまた天国へ。
浮き沈みが激しすぎるのだ。
精神的負担がこれ以上大きくなる前に、彼女の気持ちをはっきり確かめようと心に誓うナルトだった。