6.うそつき狼

 

それは、任務で帰る時間が遅くなったときのこと。

「先生、家まで送ってあげる」
「・・・そう?」
「大丈夫よ。送り狼になったりしないから、安心して」
「・・・・」
サクラはにこにこと笑っていたが、カカシが戸惑った表情で彼女を見下ろしている。
サクラの方が年下で女の子。
暗い夜道、彼女を家まで送り届けるのは、担任であるカカシの役目だ。
一緒に歩くのには変わりがないのだから構わないかと考え、カカシはサクラの手を引いて帰路に就いた。

 

 

「先生、先生」
「んー」
「丁度良い高さだと思わない?」
2つばかり、上の階段にいるサクラが振り返ってカカシを見る。
「何が?」
「キスするのに」
身を乗り出したサクラは、カカシの口元を覆う布を下げて唇を合わせる。
舌まで入れてきた彼女に非常に驚いたカカシだったが、離れるまでじっとしていた。
逆らえば、後が怖い。
紅一点のサクラは7班で一番の権力者なのだ。

「・・・嘘つき」
「えー?」
「狼にならないって、言ったのに」
月をバックに笑うサクラは、いつもより若干大人びて見えた。
「今日、お父さんとお母さん、二人揃って旅行中なの。先生の家に寄ってもいい?」
自分の首筋に抱きついてきたサクラを、カカシはそのまま受け止める。

 

可愛い雌狼のサクラ。
気が変わって他の獲物のところに行ってしまったら、大変だから。