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7.腐色ロマンス

 

「好きな子が出来たんだけどさ・・・」
「ええ!!?」
カカシの突然の告白に、任務報告を書いていたアスマは銜えていた煙草を取り落とした。
「何だよ」
「いや・・・・、お前がそういった話をするのは珍しいと思って」
動揺を隠せず、アスマは震える手で煙草を拾う。
カカシは名の通った上忍で、火影の信頼も厚く、見てくれも悪くない。
となれば女にもてないはずがなく、自分が行動を起こさずとも向こうから勝手に寄ってきた。
週末になれば女の家を泊まり歩き、特定の恋人を作らないというイメージが強かっただけに、アスマも大袈裟に驚いてしまったのだ。

「どっかの女優か、それとも大臣の姫か?」
「サクラ」
「・・・・生徒のくの一と同じ名前なのか?」
「何でそう、遠回しに考えるの」
不思議そうに訊ねるカカシに、アスマは腕を組んで考え込んだ。
女に不自由しない者が選ぶからには相当の美人か金持ちだと思った。
サクラはどちらにも当てはまっておらず、二人の年齢差もかなり開いている。

「今日はエイプリルフールじゃないよな」
「・・・いいよ、もう。人が真面目に話しているのに」
憤慨したカカシが席を立とうとすると、アスマは慌ててその腕を掴む。
「分かった、分かった。悪かったよ」

 

きっかけはとくになかった。
ただ、サクラが笑ったり、くっついてきたりすると、無性に抱きしめたくなる。
自然と彼女の行動を目で追いかけていることに気付き、これは好きという感情ではないかと思い至ったという。

「お前な、今までみたいにいきなりホテル連れ込んだり押し倒したり、するんじゃないぞ」
「もうした」
「したのかよ!」
あっさりと言うカカシに、アスマは思わず声を荒げていた。
「うん。気持ちを告白して両思いになって、段々関係を親密にして家に呼んで、その辺いろいろ前置きが面倒じゃない。だから、まずはやることやってから好きだって言おうと思って」
「・・・・・」
「それで、サクラをうちに呼んでジュースだって騙して酒飲ませて、倒れたところで服脱がしたの」

 

カカシの考え方は、世間一般の人間と大きくずれている気がした。
今までは分別のある大人が相手だったからまだ良い。
だが、サクラはまだ十代で、子供で、生徒だ。
火影に報告すべきかと悩むアスマだったが、カカシの話にはまだ続きがあった。

「でもさ、結局何もしないで家に帰しちゃったんだよね」
「・・・・え」
「サクラ、泣くだろうなぁとか、嫌いだって言われたらどうしようとか、頭をぐるぐる回って手が出せなかった」
目を丸くしているアスマを見て、カカシは大きくため息を付く。
「サクラとなら面倒な手順踏んでもいいかと思ったんだ。どうしちゃたんだろう、俺」

 

 

カカシがいなくなった後も、アスマは上忍控え室でぼんやりと座っていた。
後ろを通った紅は、その異変にいち早く気付いたようだ。
「何かあったの?呆けちゃって」
「・・・・カカシが恋をしてる」
振り向いたアスマの呟きに、紅は怪訝そうに眉を寄せる。
「つまんないわよ、その冗談」