10. I am GOD'S CHILD(月光)

 

いつもの迷い犬探し。
初めて足を踏み入れる森だったが、連絡用のトランシーバーと方位磁石があれば、迷っても平気なはずだった。
そう、サクラと行動を共にしていたナルトが、それらを無くさなければ。

 

「・・・・最悪」
月明かりの下、歩き疲れたサクラは草むらに座り込んでいる。
荷物の確認をした、というナルトの言葉を信じた自分が馬鹿だったのだ。
「本当にごめん」
うなだれたナルトは、この日何度目になるか分からない謝罪を繰り返す。
まさかこのまま野垂れ死ぬことはないだろうが、夜行性の獣の気配を感じながら不安はつのるばかりだ。
サクラの隣りに腰掛けると、ナルトは明るい満月の空を見上げた。

「サクラちゃんだけでも、助かればいいんだけど・・・」
「何でよ」
「だって、サクラちゃんには家族がいるでしょう。サクラちゃんに何かあったらみんな泣いちゃうよ。でも俺は一人だから・・・・」
「馬鹿!!!」
言い終える前に、サクラの右ストレートがナルトの頬に命中する。
何度も何度もサクラに殴られてきたナルトだが、今までで一番強烈なパンチだ。
そして、不思議だった。
ナルトを殴ったサクラの方が、痛々しく泣いていたのだから。
両手で顔を覆って泣くサクラに、ナルトはどう声をかけたらいいか分からない。
赤く腫れた頬よりも、胸の方が痛い。
タイミングよくパックンを連れたカカシが現れなければ、居心地の悪さから駆け出していたかもしれなかった。

「サクラに・・・・何かしたの?」
二人を発見して安堵したカカシだが、彼らの間の微妙な空気にすぐ気づく。
訝りながら自分を見ているカカシに、ナルトは頬を押さえたまま呟いた。
「・・・したかも」

 

それから三日間、サクラは口をきいてくれなかった。
何とか取り繕うとしても、涙の滲む目で見据えて、顔を背ける。
寂しくて悲しくて。
少しだけ幸せな、三日間。