12. どうして躊躇うのだろう(声)

 

「ざりざりする」
うたた寝するナルトの頬を引っ張ったサクラは、驚いてすぐに手を離した。
「え、何・・・・」
「これ、もしかして髭?!」
「・・・もしかしなくても、そうです」
寝ぼけ眼だったナルトは、サクラと目が合うと微笑みを浮かべる。
ナルトがソファーから身を起こした後も、サクラはしつこく彼の顎のあたりを触っていた。

「今までそんなのなかったじゃない」
「目立たなかっただけだよ。俺、全体的に体毛薄いし、色もこれだから」
袖を捲ってみせたナルトの腕は、確かにツルツルだった。
さらに金は肌色にほぼとけ込んでしまう。
「髭だなんて・・・、何だか男の人みたい」
「そうだよー」
顔をしかめているサクラの両手首をつかまえると、ナルトはその瞳を間近で覗き込む。
「ほら、こうするとサクラちゃんの力じゃもう振り解けない」

 

少し、からかおうと思っただけなのだ。

 

「サクラちゃんがうちに泊まってくれなくなった」
「へぇ・・・」
「抱きついても、前みたいに小突かないで顔を真っ赤にして逃げるし」
一楽で恩師のイルカと肩を並べながら、ナルトは悲しげに訴えた。
「先生ー、どうしたらいいと思う?」
「良い兆候じゃないか。お前を男として意識しだしたってことだろ」
「そうかもしれないけど・・・・」
ナルトは大好きなラーメンものどを通らない様子でため息を付く。
「寂しいなぁ」