18. 耳を塞いでも叫び続けるから(We can go)

 

「カカシ先生、大好き!」
「・・・だから、そういうことをあまり大声で言わないように」
腕に絡まるサクラの腕をさりげなく外しながら、カカシはきつい口調で言う。
「えー、何で?」
「俺達は教師と生徒なの。俺はナルトやサスケやサクラを平等に面倒を見ないといけないし、一人の生徒とそういう不純な関係になったら駄目なのよ」
「何よ、この間はキスしてくれたじゃない!!」
瞬間的に、サクラの口を手で塞いだカカシはきょろきょろと周りを見回す。
幸い、往来に彼ら以外の人影はなかった。

 

 

「まいった・・・・」
サクラを振り切って上忍控え室に戻ってきたカカシは、机に突っ伏す。
毎日あの調子でサクラに付きまとわれているのだ。
火影の耳に入れば大目玉を食らうことになる。

「いいじゃない、サクラ、可愛いし付き合ってあげれば」
「サクラは可愛くても生徒なの」
「でも、キスしたんでしょ」
「うちに居座って同棲するなんて言うんだから、しょうがないだろー。キスすれば大人しく帰るって言うから」
紅の声に自然と答えていたカカシは、はたと気付く。
「え、何でお前がそんなこと知ってるの?」
「アスマから聞いたのよ。彼はいのちゃんから聞いたって」
項垂れるカカシは再び机に顔を押しつける。
この分ならば、火影の耳に入るのは時間の問題だ。

「火影様に怒られるのだ怖いだけで、サクラのことは嫌いじゃないんでしょ」
「・・・まあね」
核心を突く紅の言葉に、カカシはくぐもった声で答える。
好きでなければキスなどしない。
器用でないカカシの性格を紅はちゃんと見抜いていたようだ。
「じゃあさ、一度叱られてきたら」
「・・・・え」

 

紅が窓を開くと、すぐにその声が聞こえてくる。
「先生――」
建物の入口付近でサクラが叫んでいた。
なかなか姿を見せないカカシにしびれをきらしたのだろう。
かといって上忍専用の控え室に彼女が足を踏み入れるわけにいかず、強行手段に出たようだ。
「早く一緒に帰ろうーお腹すいたーー」
部屋があると思われる窓をへ目を向けると、紅が顔を出したのが見えた。

「サクラの声って、大きいわねぇ。あ、手、振ってるわよ」
「・・・・」
「みんな見てるし、もう公認って感じねー」
実況中継を終えると、紅はカカシの肩を叩いて去っていく。
観念したカカシがどういった行動を取るかは不明だが、火影の恐ろしさだけはよく知っていた。