2. だから私は逃げ出さなかった(嵐ヶ丘)
「いいのかなぁ・・・」
口付けのあとにそのような言葉を聞くと、とたんに気分が萎えてしまう。
カカシの腕の中にいるサクラは、困ったように俯いていた。
「何が?」
「カカシ先生と私は、一応教師と生徒なわけだし。この先何かあって別れたとき、同じ班で行動しずらくない?」
言い終えるなり、サクラは真剣な表情でカカシの顔を見上げる。
サクラの言いたいことは分かるが、それならばどうすればいいというのか。
互いを想い合う気持ちは同じだというのに。「サクラは心配性だね。まだ始まったばかりなのに、終わりを考えてる」
頭をかきながら呟いたカカシは、少し屈んでサクラと目線を合わせる。
「じゃあ、このまま別れましょうか」
傷つく前に遠ざける。
利口な考えだ。
サクラの望みどおりのことを言っただけなのに、唇を噛んだ彼女の瞳には涙が滲んでいる。
「・・・そんな顔しないでよ」
失うことへの恐怖。
それはカカシの中にもあるだが、彼女は気づいていない。
好きという感情を量れるものなら、自分の方が絶対に勝っているとカカシは思う。「こうしていても、まだ不安?」
「・・・・」
小さなサクラの体をカカシは力いっぱい抱きしめる。
サクラの返事がないのは、息苦しいことも理由かもしれない。
「この世界に永遠なんて無いけれど、それに近いものならあるような気がするんだ」
始まりと終わり。
最後がきたときに、また一から始めたいと思えたら、それは永遠と呼ぶに等しい。
だけれど、それは遠く未来に訪れるものだ。
「一緒に確かめてみる気、ある?」
サクラの顔を覗き込むと、彼女は笑みを浮かべていた。
彼女をいとおしいと想う気持ちに終わりがあるだなんて、信じられないけれど。